東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】デンソー、「電動化」と「自動運転」の2分野へ投資を増やし技術革新を加速
プレスカンファレンスに有馬社長が登壇
2017年10月26日 17:45
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
10月25日に東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開幕した「第45回東京モーターショー2017」においてデンソーは10月26日、同社ブースにおいてプレスカンファレンスを開催。
デンソー 取締役社長の有馬浩二氏が登壇し、現在同社が取り組んでいる最新技術について説明した。
プレスカンファレンスの冒頭、有馬氏は「世界の自動車産業は、電動化、自動運転の実現スピードがますます加速しています。デンソーの使命は、すべての人に喜ばれる、人が中心の新しいモビリティ社会の実現に貢献することです。
デンソーは、あらゆる分野の技術基盤を持つシステムサプライヤーとして、基幹部品の革新に取り組んでいます」と述べ、「エコドライビング」と「自動運転」に関する最新のデンソーの取り組みについて説明。
まず、エコドライビング分野については、「エネルギーを『使う』『作る』『たくわえる』という、あらゆるプロセスでの効率化、最適化が欠かせない」としつつ、最新のエネルギーマネジメント技術を紹介した。
まず1つ目として紹介したのが、「SiCインバーター」について。電気を直流から交流に変換するインバーターは、変換時に熱を発生し、その熱がエネルギー損失となるが、デンソーでは、発熱の少ない「シリコンカーバイト(SiC)」を素材に採用したパワー素子を開発。
これにより、インバーターのエネルギー損失を従来の3分の1に低減できるとのことで、今後は車両で使用するために必要となる高品質SiC結晶生成を実現するための特殊な生成技術を確立するとともに、2020年ごろまでにSiCパワー素子を組み込んだインバーターの量産を開始するとした。
次に、熱マネジメントシステム。EVなど熱源となるエンジンのないクルマでは、暖房の消費電力が課題と指摘しつつ、デンソーでは運転中に発生し、捨てられていた熱を回収し、暖房のエネルギーとして有効活用する熱マネジメントシステムを開発していると説明。また、ヒートポンプを利用することで暖房の消費電力を最小化するシステムを提供するとした。
そして3つ目としてバッテリーの放充電を制御する「電池ECU」。有馬氏は、「(バッテリに)電力を効率的にたくわえるには、電池の性能向上だけではなく、放充電の制御が課題」と指摘しつつ、デンソー独自の回路とIC技術によって、バッテリの発熱や充電状態を正確に監視することで、放充電の最適化を実現してきたと説明。
そして、今後も「エネルギーを『使う』『作る』『たくわえる』というあらゆるプロセスについて、車両システム視点でさらなるエコドライビングを追求していく」と宣言。合わせて、常に社会と市場のニーズに応えるために、ガソリンやディーゼルなどの内燃機関の技術開発も継続すると述べた。
続いて自動運転分野について。デンソーでは、「人を中心に考える」を自動運転のコンセプトに、「認知」「判断」「操作」の3要素について重要と考えて開発に取り組んでいると説明。そのうえで、「認知」と「判断」に関する最新技術を紹介した。
自動運転の認知に関する技術としては、「クルマから360度を認知するための『車両の目』となるセンサーの品揃えと認知の高度化が課題」と指摘しつつ、デンソーではミリ波レーダーや画像センサー、レーザーレーダー、ソナーなどの多様なセンサーを開発し提供してきたと、これまでの実績を説明。そして認知の高度化として、これまで困難だった夜間の認知や、フリースペースの検知が可能な最新型ミリ波レーダーと画像センサーを開発し、レクサスの新型LSに採用されたと紹介した。
さらに今後は、ディープラーニング(深層学習)を適用したAI技術を用いることにより、空間の認知だけでなく、時間軸を取り込んで歩行者やクルマの動き、道路やインフラの状態を先読みする技術によって、さらなる認知の高度化を実現していくとした。
また、自動運転の判断に関する技術としては、「人の反射動作のようなデータ処理での、処理の高速化と消費電力低減が課題」と指摘。そして、デンソーが独自に開発を行なっている「DFP(データフロープロセッサー)」によって、情報を瞬時に分析、判断できるだけでなく、短時間での処理を実現しつつ、発熱を抑え、消費電力を10分の1に低減できると説明。
そして、今後は処理を行なうプロセッサーとしてCPUやGPUに加えてDFPという選択肢を加えるとともに、それらを最適に使い分けながら安心な自動運転を実現するとした。
このほか、サイバー攻撃への備えも安心な自動運転には不可欠とし、ECUや車内ネットワークなどにセキュリティー対策を施し、さらにそれらの網を重ねるという多重防御技術を採用するなど、万全を尽くすと説明した。
そして今後は、開発をスピードアップさせるとともに各国、各地域のニーズに適応させ、新しいビジネスモデルを構築するために、国内外の企業や大学、政府、研究機関と積極的に連携すると表明。その具体例として、2017年7月にフィンランドの企業「MaaS Globa」への出資を決定したと述べた。
加えて、「人が中心の、新しいモビリティ社会の実現には、人の生活や習慣の研究、交通ルールの制定、道路の整備など、広く、社会インフラの整備も必要です」とし、積極的に貢献していくとした。そのうえで、今後2020年までの3年間で、電動化と自動運転の2分野に約5000億円の投資を計画し、技術革新を加速させると表明するとともに、ファクトリーIoTによってモノづくりの力を進化させつつ、改善と革新をグローバルに加速させると述べ、プレスカンファレンスを締めくくった。
なお、デンソーブースでは、これらプレスカンファレンスで説明された基幹技術について紹介するとともに、最新のセンサー製品なども展示している。