東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】体験しておきたい“魅惑のVR”2選。デンソーとテーマ展示はお勧め
2017年11月1日 20:27
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
2017年の東京モーターショーの主役は「電気自動車だ」「自動運転だ」といった見解は確かにそのとおりだとは思うが、2年前の開催から明らかに異なった様相となっているのはVR関連の展示が増大していることだ。さまざまな企業ブースでVR-HMDを被らせる体験コーナーを用意しているが、待ち時間が長いわりには体験時間が短いので、なかなかたくさんは体験できないことだろう。
ほかにもメーカー系の実車展示を見る時間も考えれば、1日に体験できるVRコンテンツは2~3個が上限だと思われるので、本稿では選りすぐった2つの“お勧めVRコンテンツ”を紹介する。
この2つは、これまでにさまざまなVRコンテンツを体験してきた筆者も驚かされる内容だったので、11月5日まで行なわれる東京モーターショーに出かけた際には絶対に体験することをお勧めしたい。
オススメVR・その1 デンソーブースでは6人同時体験のワイヤレスVR体験「Future Tech Lab」
まずは、デンソーブース(東6ホール E6203)の「Future Tech Lab」からだ。
デンソーと言えば自動車のさまざまなエレクトロニクスパーツを手がける企業で、ブースの展示テーマは「電気自動車や自動運転を支えるデンソーの新技術を紹介する」というもの。ただし、それらを小難しい技術解説パネルボードを掲げたプレゼンテーションで説明するのではなく、「来場者のみなさんにVR世界で体感してもらう」というユニークな切り口のブース展開としていたのだ。
このコンテンツを手かげたのはABAL。ABALは、ワイヤレスで同時多人数VR体験をテーマにしたVR作品を制作している新興のVRコンテンツスタジオで、今年の夏に「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION 2017」で公開された「ABAL:DINOSAUR」が大人気を博した(VR Watchの関連記事:「『手をつないでVR体験』の新鮮さ。空間移動型VR『ABAL:DINOSAUR』を六本木で体験」)ことで注目を集めている。
ブース内で公開されたVRコンテンツ「Future Tech Lab」は、今回の東京モーターショーのデンソーブース向けに開発された完全オリジナル作品となる。
ABALのVRコンテンツは、前述したようにケーブルレスでVR空間内を同時に多人数で動き回れることをウリにしているのだが、今作「Future Tech Lab」も同様だ。来場者はVR-HMDを装着するだけでなく、両手両足にポジショントラッキング用のデバイスを固定することから始まる。
驚かされるのは、こうしたトラッキングデバイスを付けている控え室からVR体験がすでに始まっており、VR-HMDを被った瞬間から仮想世界にダイブすることになるところ。しかも、現実世界そのものの控え室がCG化されて登場するため、なんともユニークな「仮想的な拡張現実」(?)みたいな感覚に陥ることだろう。
来場者の頭部や両手両足がVRシステム側に把握されているだけでなく、VR体験をしている各来場者が、同時に仮想世界に入り込んだほかの来場者をCG化された姿で見ることができるのも楽しい。CG化されたほかの来場者の手足も見えるので、ほかの来場者とハイタッチや握手をすることもできる。CG化されたアバターはサイボーグのように簡素化された姿になっているのだが、頭部の高さ、手足の動きが正確にトラッキングされて見えるため、身長は再現されるし、女性は女性らしい動きになる。地味ながら、ここもこのVR体験の隠れた面白さのポイントである。
ABALのシステムではヘッドフォンをしないため、VR体験をしながら肉声で話すことができる。なので、体験の際はできるだけ家族や友人と参加して、話したり手を触り合ったりすることをお勧めする。
頭部だけでなく手足の動きまで正確に取れているのは、映画向けCG制作用の業務用モーションキャプチャースタジオで使われているVICONのモーションキャプチャーシステム「VERO」を用いているため。業務用のモーションキャプチャーデバイスを試せる機会はそうはないので、その意味でも体験価値が高いと言える。
さて、コンテンツ本編は、AIマスコットに導かれながらデンソーの最新技術をテストするバーチャルテストコースでライド体験するという内容だ。
しかし、さすがはABAL。もともとコンテンツ制作を担当しているスタッフは、長年ゲーム畑でセンスを磨いてきただけあり、ただのライド体験ではなく、チャレンジングなゲーム要素が盛り込まれているのだ。
自動運転技術を支えるデンソーの障害物センサー技術を体験するシーンでは、来場者自身がセンサーユニットを模したコントローラーを駆使して、隠れた場所から走行コースに飛び出してくる動物たちにセンサービームを照射するアトラクションが始まるのだ。
まるで射撃ゲーム(ガンシューティングゲーム)のようなゲーム性だが、間違えないでほしいのは「動物たちを射撃している」のではなく、「動物たちをセンサーで照射して見つけている」という点だ。照射された動物はむしろ助かっているという解釈なので、残酷ではない。なので、情操教育上の心配もなく、子供の体験もOK。
後半では、デンソーの技術によって電子化された最新のクルマがコンピュータウイルスから攻撃を受けるシーンに突入する。こちらでは先ほどまでとは違い、「盾」のようなコントローラを持ってウイルスからのハッキングビームを跳ね返すという、防戦アトラクションに切り替わる。
動物を見つけるシーン、ウイルスとの攻防シーンとも全方位にさまざまなキャラクターが展開してくるため、とても1人では対処しきれない。より高いスコアを目指すには、ほかの来場者と連携することが必要になってくるので、先ほど解説したようなボディランゲージや肉声による「声かけ」が重要になってくるのだ。
体験の最後には各来場者のスコアランキングも発表されるので、家族や友人と体験すれば終了後に「勝った」「負けた」と盛り上がれることうけあい。デンソーの技術の解説も上手にVR体験に盛り込まれているので、非常に満足度の高いコンテンツである。体験は整理券方式なので、会場に足を運んだらなるはやで整理券をゲットしたい。
オススメVR・その2 主催者テーマ展示「TOKYO CONNECTED LAB 2017」の「THE MAZE」
もう1つのオススメVRは、西4ホールの東京モーターショー2017 主催者テーマ展示「TOKYO CONNECTED LAB 2017」内にある「THE MAZE」だ。
こちらはソニー・インタラクティブエンタテインメントの協力によって制作されたVRコンテンツになる。ハードウェアとしてはプレイステーション4(PS4)と、PS4向けVR-HMDである「PlayStation VR」(PS VR)を用いたものになるが、VRコンテンツとしては完全オリジナルで、恐らくPS VR向けコンテンツとしては最大規模の多人数同時体験VRになる。
というのも、THE MAZEは同一のVR世界に、なんと最大30人の来場者が同時に参加してVR体験できるのだ。広大なブースに放射状に設置された30台のPS VRが青く光る光景はなかなか壮大かつ幻想的である。
THE MAZEはその名のとおり、仮想世界の入り組んだ迷路状の都市道路を自動運転で走り回る、いわゆるドライブゲーム的なVRコンテンツになる。この仮想都市の道路には、来場者30人の各人が乗り込んだ自動運転カーが走っており、都市中央にそびえ立つ赤いタワーに設定されたゴールを目指すことが目的となる。
クルマの運転自体は自動運転で、道を「曲がる」か「進む」かを頭部で操作するカーソルマーカーで指示できるようになっており、運転操作のためにコントローラなどは使わない。
コクピットにはナビゲーション画面のようなものが表示されていて、自分が走行した道筋がマップに描画されていくのだが、競合車両に接近したりすれ違うと、その相手の走行地図を自分の地図上に反映することができる。つまり、競合車両とたくさんすれ違うことで仮想都市内の地図をどんどん充実させていくことができるのだ。裏を返すと「ゴールしていない競合車両の走行軌跡上にゴールはない」と見なすことができるので、地図上にまだ軌跡が引かれていない道路を進むことがいち早くゴールに到達するコツということになる。
こうしたドライブゲームではよくある“アイテム的な存在”も設定されており、道中には走行スピードが向上する施設、遠くまで見渡せる鳥瞰視点にしてくれる施設、走行距離が増えると低速になってしまうマイカーのエネルギーを補充してくれる施設などがあり、このTHE MAZEもかなりゲーム的な仕上がりになっていて面白い。
制限時間は5分間で、これを過ぎるとゲームオーバー。ゴールに到着すると、その都度到着した車両番号が参加者全員のVR-HMDに表示されるので、制限時間が残り少なくなってくると段々と焦りも出てくる。デンソーのVRコンテンツと同様に、こちらもグループで参加したときに友達同士で車両番号を覚えておけば、着順を競い合う楽しみが生まれることだろう。
THE MAZEの体験は、東京モーターショー2017の公式アプリ「TMS Mobile」から予約できる。ただし、位置情報をチェックしていて、会場内にいないと予約はできない。こちらもデンソーのVRコンテンツと同様に、入場したらなるはやで予約することをお勧めする。スマートフォンを利用できない来場者は体験会場に隣接した受付窓口で予約することもできるが、予約待ちで行列ができてしまうので、なるべく公式アプリを利用したいところだ。
このほか、VRではないが、東京モーターショー2017の主催者テーマ展示「TOKYO CONNECTED LAB 2017」の映像系体験コンテンツでは「THE FUTURE」もお勧めだ。巨大なドーム型スクリーンに投影される全天周のCG映像は一見の価値あり。こちらは同時に200人が視聴できるので、ほぼ待ち時間ゼロで体験できる。公式アプリでアンケートに答えると、自分がアプリでカスタマイズした名前入りのCGカーがドームスクリーン内を走り回るので、この作業は事前に済ませておきたい。