東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】ホイールにこだわるモーターショー。レイズとコンセプトカーを楽しむ
新技術「REFAB」と「ハイブリッドマシニング」
2017年10月29日 08:40
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
10月25日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「第45回東京モーターショー2017」が開幕した。27日はプレビューデー、28日~11月5日は一般公開日となる。本稿では今回の東京モーターショーで見かけたホイール関連、および足まわり関連の話題を集めてお届けする。
東京モーターショーは東京オートサロンとはイベント主旨が異なることもあり、アフターパーツ系の企業のブース出展は少なめだ。自動車向けのアフターパーツの定番中の定番とも言えるホイールについても、ブース出展していた企業はレイズ(西3ホール W3502)のみで、ホイールを製造開発しているタイヤメーカーのブリヂストン、横浜ゴムなどはブース出展こそ行なっているものの、タイヤに関わる新技術の展示が主体で新作ホイールの出展はなし。
そんなわけで、今回はレイズブースのレポートをお届けするとともに、各自動車メーカーの新作コンセプトカーが履いているユニークなホイールの数々を紹介していく。
新技術「REFAB」と「ハイブリッドマシニング」を採用した新作ホイール
レイズブースに出展された新作ホイールでは、市販化を前提にしたプロトタイプの2種類が展示されていた。
それは「REFAB MODEL」と名付けられたモデルで、1つめは「VOLK RACING(ORIGINAL)」シリーズの「G25」、2つめは「WALTZ FORGED」シリーズの「S7」になる。ともに欧州メーカーの高級セダンやSUV、あるいは国産ハイスペックスポーツモデルへの装着を想定した大径鍛造モデルの定番シリーズであるが、それらに特別な鏡面加工を施したモデルが「REFAB」という特別仕様製品になるという。なお、REFABはレイズ独自の造語で、「RAYS ENGINEERING AND BRIGHTENING TECHNOLOGY」の略から来ている。
REFABモデルの最大の特徴は、リム中心付近、およびそこから伸びるスポークまでの表面全てに、周囲を綺麗に映り込ませるほどの鏡面処理がなされているところ。派手にドレスアップされたボディに負けないほどの異彩を放つことが可能な商品というわけである。
鏡面加工は、文字どおり「鏡」として機能するほどに平坦に磨く上げる必要があり、それを複雑な曲面で構成されるスポークにまで施す技術難度はかなり高いものになる。従って、標準モデルに対して価格の上乗せは避けられないことになるが、あまり価格が違ってしまうと商品としての訴求力が低下してしまうため、価格設定については現在精査中とのこと。ブースでは意見を募集しているとのことなので、「いくらぐらいだったら購入したい」といった意見を伝えるのもいいかもしれない。
また、今回の出展ではREFABモデルとしてG25とS7を展示していたが、REFAB技術はこの製品に限定したものではないため、「別のモデルのREFAB版が欲しい」といった意見も募集しているとのことだ。
今夏に発売されたばかりの「gram LIGHTS」シリーズの「AZURE 57 ANA」モデルと「STRATAGIA」シリーズの「Avventura」ハイブリッドマシニングモデル、「VOLK RACING(ORIGINAL)」シリーズの「ZE40 TIME ATTACK EDITION」も展示されていた。
ハイブリッドマシニングモデルとは、マシニング加工とダイアモンドカットの両方を組み合わせた加工手法で、レイズオリジナルのホイール表面の加工技術になる。平面的なキレのよさと有機的な立体曲面が組み合わされた豊かなデザインが実現できるだけでなく、音楽CD表面に現れる干渉縞のようなダイアモンドカット特有の美しい光沢が特徴となる。
まだ出たばかりなので実物を見たことがない人も多いはず。ぜひとも自分の目でその質感をチェックしていただきたい。
「ZE40 TIME ATTACK EDITION」は、スポーツ車両から競技車両までを想定した硬派モデルとして発売された「ZE40」の特別仕様モデルになる。スペック等はカタログモデルの「ZE40」と同等だが、リム外殻部に深紅のカラーラインを施してあるのが特徴。一般的にこうしたカラーラインはデカールなどで装飾するのが一般的だが、本モデルはマシニング加工のあとに本体カラーリングと同等の塗装処理を施し、耐候性が極めて高いのが特徴。長期にわたって差し色の鮮烈な赤ラインを主張できるわけである。期間限定の販売となっているので、欲しい人は急ぎたい。
レイズが手がけた最新モデルの純正ホイールを単体でじっくり見られる
新作以外でチェックしたいのは、各自動車メーカーのコンセプトカーやこれから発売される新型車の純正ホイールの展示だ。レイズは各自動車メーカーの純正ホイールも共同開発しており、レイズブースではそのホイール単体をじっくり見られる貴重な機会を得られるのである。
まずはトヨタ車向けから見ていこう。今回の東京モーターショーのトヨタブースで出展している、2つの新作スポーツカーの純正ホイールがレイズ製なのだ。1つはTOYOTA GAZOO Racingが発売を予定しているトヨタ「86」ベースの特別バージョン「86 GR」の純正ホイールだ。標準モデルには設定されない特別デザインのホイールなので、大きな差別化ポイントとなるわけである。
2つめは、トヨタが次世代のハイブリッド仕様のスポーツカーをイメージしたコンセプトカー「GR HV SPORTS concept」が履くホイールだ。スタッフによると、開発期間が短かったこともあり、デザイン/製造の難易度が高かったとのこと。「なんとか間に合ってよかった」とは担当者の弁。また、開発期間が短かったこともあり、現状は軽量化のための肉抜き処理が不十分だそうで、同サイズの同社の製品と比較するとやや重めなのだとか。そのあたりのトリビアを踏まえて、コンセプトカーの実車を観察すると感慨深いものがあるかも知れない。
展示されていた日産車向けの純正ホイール製品は主に販売中の量産車がメインだったが、それでも日ごろ街なかでなかなかお目にかかれないレアな車種ばかりで見応えはある。
レア度として高いのは、日本未導入となっているインフィニティの高級SUV「QX80」の純正ホイールだ。14本ものマルチスポークデザインにもかかわらず、悠々とした見た目なのは20インチの大径サイズだからこそ。シンプルながらも見どころのあるひと品である。
続いてレア度が高いものとしては「GT-R NISMO」の純正ホイールが挙げられるだろう。先ほどの「QX80」のものとは違い、20インチの大径ホイールにもかかわらず、スポーク数はわずか6本。普通の車種では足下がスカスカな見映えとなってしまうはずが、GT-Rの場合は巨大なブレーキキャリパーと大径ブレーキローターが隙間から見えるため「間の持つ」見た目となるのだ。そしてこのサイズなのに超軽量なのもポイントだ。ブースでは展示パネルから外すことはできないが、両手で若干持ち上げることはできるので、その軽量ぶりを味わえる。
各社ブースのコンセプトカーのホイールをチェック!
ここからは、各自動車メーカーブースに出展された注目のコンセプトカーが履くユニークなホイールを見ていくことにしよう。まずは前出のレイズブースで単品展示されていたホイールを履くコンセプトカーから紹介する。
TOYOTA GAZOO Racingが発売を予定している「86」ベースの特別バージョン「86 GR」が履くホイールは、このモデルのための特別版だ。10本スポークの奥に見える大径ドリルドブレーキローターとGRロゴが眩しい赤いブレーキキャリパーがレーシーな雰囲気を醸しだしている。
トヨタの次世代のハイブリッド仕様のスポーツカーをイメージしたコンセプトカー「GR HV SPORTS concept」は、基本的には「86」をモディファイして作られていることもあり、フロントセクション以外は86に酷似している。顔立ちがかなり先進的で「コンセプトカー然」としているのとは対照的に、ホイールはややレトロイメージでデザインされているように見える。ホイール単品を見ていただけでは気付かなかったが、そうしたコントラストにも留意して観察するといいだろう。
日産の完全自動運転を目指したEV(電気自動車)のコンセプトカー「IMx」は、車体自体のデザインが相当に未来的だが、実はそのホイールデザインもかなりユニークである。
一見すると4本スポークに見えるが、そのスポークのあいだを自転車のホイールに使われているような細いスポークが無数に張り巡らされているのだ。目を凝らすと、うっすらと奥にブレーキシステムが鎮座しているのが分かるだろう。
レクサスブースのコンセプトカー「LS+ Concept」はレクサスの最上位セダン「LS」の未来を思い描いたコンセプトカーとのことだが、そのホイールもエレガントかつモダンなデザインで面白い。
まるでサーキュレーターのフィンのような20本スポークのあいだに、青いカーボンプレートをあしらった「隠しスポーク」とでも言うべきようなものが覗いている。トータルでは40本スポークのホイールにも見えるこのデザインは、もはや芸術の域に達していると言っていいかもしれない。
ダイハツ工業が出展していた「DN COMPAGNO」は、1960年代にリリースされていた「コンパーノ」を現代の文法で再デザインして甦らせたコンセプトカーになる。
最近のクルマは側面のドアまわりにもキャラクターラインを走らせる傾向があるが、1960年代はプレス技術的にそうしたデザインが困難であった。「DN COMPAGNO」では、そうしたキャラクターラインを側面においては上側に押しやり、サイドビューはシンプルな面構成としている。そのままでは場が持たないということで、ホイールにはやや派手目なデザインを採用したそうである。
ごく普通の6本スポークデザインのホイールかと思いきや、実は非対称の立体的なV字モチーフを隣接させて円弧状に並べた構図になっているのだ。なので、スポークに見える各支柱の中央は、ブレーキローターのある奥側が完全に素通しで見えるユニークなデザインとなっているのである。
メルセデスAMGが出展している「Project ONE」は、F1用相当のエンジンに2モーターをセットし、さらにフロントの2輪はトルクベクタリング用として左右に1モーターずつ搭載した新鋭の4WDハイブリッドスポーツカーだ。価格は未定ながら市販予定だというから凄い。
そのホイールも独特で、10本スポークデザインのリムエッジが2段デザインとなっており、最外周と内周の隙間にはカーボン製のエアガイドのようなものがあしらわれて凄みを感じさせる。回転時に発生する負圧でホイール内の熱を放出する機構の一部だと思われるが、ブース内スタッフに「この機構」について聞いても「分かりません」と口を揃えるばかりであった。
マツダが展示している4ドアクーペスタイルのコンセプトカーは、近年マツダが全車両に展開し、今ではコーポレートデザインに昇華されている「魂動」デザインのさらなる発展形を表現したものだと言う。「VISION COUPE」と名付けられたこのクルマが履くホイールは、普通の綺麗なマルチスポークデザインに見えるが、実は「10本スポーク+5本スポーク」ともいえるような不思議なデザインなのであった。
基本デザインは10本スポークとなっていて、そのスポーク2本おきに、アクセントとして細いスポークをあいだに挟ませているのだ。その結果、トータルでは15本という奇数のスポークを円周内に走らせているのだ。
ヤマハ発動機は、前回の東京モーターショーで市販を前提に開発を進めているという4輪スポーツカーのコンセプトモデル「Sports Ride Concept」を出展して話題を呼んだが、今回は新たにSUVタイプの新型コンセプトカー「CROSS HUB CONCEPT」を展示していた。
このコンセプトカーのホイールはファルケン(住友ゴム工業)と共同開発した完全オリジナルだそうで、担当者によれば注目ポイントは2つあるという。
1つは「タイヤのトレッドパターンと一体化したデザイン」だ。トレッドパターンは、いかにもという感じで彫りの深いオフロード走行をイメージさせる溝が刻まれているが、このトレッドからホイールのリムパターンになだらかにつながるようなデザインになっているのだ。言うなれば「トレッドパターンとホイールデザインを一体化した」というイメージだろうか。
2つめは「低扁平に見紛うようなだまし絵風のプロテクター」。ホイールにしか見えないリム最外殻の鏡面部分は、実は樹脂製のプロテクター。ホイールではなく、タイヤの一部なのであった。タイヤ自体はリム径17インチ、断面幅235mm、扁平率75%であり、まったく低扁平ではないのである。
よく観察すると「なるほど」という感じだが、まさに「だまし絵」的な発想は実にユニークである。「パッと見た感じでは20インチ相当のホイールのように見せたかった」とは担当者の弁。