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プジョーとラム・トラック、バッテリEVコンセプトカーをCES2023基調講演で公開

2022年1月5日(現地時間) 発表

ステランティスが公開した「プジョー・インセプション・コンセプト」

 プジョー、フィアット、クライスラーなど14のブランドを傘下に持つ自動車メーカー「ステランティス」は、1月5日(現地時間)より米国ネバダ州ラスベガス市で開催されている「CES2023」に出展し、自動車産業が集中しているウエストホールで傘下ブランドの自動車などを展示している。会期初日となった1月5日の午後には、基調講演にステランティス CEO カルロス・タヴァレス氏が登壇し、同社傘下のブランドであるプジョーおよびラム・トラックのBEV(バッテリ電気自動車)コンセプトカーをそれぞれ公開した。

 プジョーが公開したのは「プジョー・インセプション・コンセプト」(Peugeot Inception Concept)と呼ばれる4ドアタイプのBEV、ラム・トラックが公開したのは「ラム 1500 BEV コンセプト(Ram 1500 BEV Concept)」というピックアップ・トラックのBEVとなる。

2026年に市場に投入されるプジョーの次世代BEVにつながるプジョー・インセプション・コンセプト

ステランティス CEO カルロス・タヴァレス氏

 ステランティス CEO カルロス・タヴァレス氏は、同社の自動車開発の戦略について「すでに自動車をハードウエアとして開発する時代は終わった。これからは自動車をアプリケーションであり、プラットホームであると考えて開発していく必要がある。われわれは2030年までにカーボンニュートラルを実現し、2038年にはカーボンネットゼロを実現することを約束しており、そのためにソフトウエアの開発、自動化、そして電動化の3つを柱にして開発していく」と述べ、同社がカーボンニュートラル(CO2の排出と吸収のバランスが取れていること)を2030年までに実現し、さらにカーボンネットゼロ(CO2の排出自体を0にすること)を2038年までに実現するという野心的な目標を実現するために、ソフトウエアによるソフトウエア定義の自動車(SDV)化、自動運転などの実現、さらには電動化の3つの戦略を推し進めていくと説明した。

プジョー CEO リンダ・ジャクソン氏

 タヴァレス氏はそのソフトウエアの進化という戦略の具体例として、プジョーCEOであるリンダ・ジャクソン氏を壇上に呼び、同社のコンセプトカーである「プジョー・インセプション・コンセプト」(Peugeot Inception Concept)を紹介した。

 プジョー・インセプション・コンセプトは4ドアのセダンないしはハッチバックのような形状になっており、ジャクソン氏の説明によればBEVとなっている。コクピットにはプジョーが開発中の新しいユーザーインターフェースである「ハイパースクエア(HYPERSQUARE)」が採用されており、従来のハンドルのような使い方が可能なほか、ジェスチャーなどで操作することができる。このハイパースクエアはL4やL5などでの自動運転時には収納することが可能になっており、ディスプレイで動画などを楽しみながら自動車で移動することが可能になること、車両の両サイドにあるディスプレイに文字を表示させられることなどが説明された。

 ジャクソン氏は「プジョー・インセプション・コンセプトのインセプション(知覚)という言葉には意味がある。単なるコンセプト車というだけでなく、われわれの次世代のBEVにつながるものだ。そうしたわれわれの次世代のBEVは2026年に市場に登場するだろう」と述べ、プジョー・インセプション・コンセプトがプジョーの次世代BEVの試作車的な意味があることを示唆した。

プジョー・インセプション・コンセプト
サイドに埋め込まれているディスプレイに文字を表示させることが可能
ハイパースクエア
ハイパースクエアを収納すると、L5の自動運転車になる

ラム・トラックはBEVのピックアップ・トラック「ラム 1500 BEV コンセプト」を公開、製品版は2024年に販売開始

ステランティス CEO カルロス・タヴァレス氏(左)、ラム・トラック ブランドCEO マイク・コーバル氏(右)

 そして今回のステランティスの基調講演でもう1つ紹介されたコンセプトカーが、ステランティス傘下で米国のピックアップ・トラック・メーカーのラム・トラックのラム 1500 BEV コンセプト(Ram 1500 BEV Concept)だ。

 日本で見かけることが少ないピックアップ・トラックだが、米国では人気のカテゴリーで、多くのピックアップ・トラックが実際に公道を走っているのを見かけることができる。ラム・トラックは元々クライスラーのピックアップ・トラックのブランドだったが、今は独立したブランドとして運営されており、今回はラム・トラック ブランドCEO マイク・コーバル氏がラム 1500 BEV コンセプトを紹介した。

ラム 1500 BEV コンセプト
荷室が延長できる
長い荷物も楽々載せることができる柔軟な内部構造

 前後に2つのドライブトレーンを搭載しており、4WDとして利用することが可能になっている。バッテリは800Vで急速充電することが可能で、10分の充電で100マイル(約160km)の航続距離が実現される。ユニークな機能としては、フロントからリアまでラゲッジ・パススルーの構成にすることが可能で、18フィートの長さのモノを搭載することができるほか、後部のハッチを延長して、一時的に荷台を延長することなども可能になっている。

 同じコンセプトカーであってもプジョー・インセプション・コンセプトが完全な試作車という扱いであるのに対して、ラム 1500 BEV コンセプトはコンセプトという名前はついていても、製品版が2024年に販売される計画があることが明らかにされており、実際にはワールドプレミアに近い発表だと言ってよいだろう。