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ソニー・ホンダの新型EVブランド「アフィーラ」はクアルコムと協業し、Snapdragon Digital Chassis採用

ソニー・ホンダの新型EVブランド「アフィーラ」が採用するSnapdragon Digital Chassisについて語るクアルコム CEO クリスチアーノ・アーモン氏(右)

800TOPSのECUでコントロールされるアフィーラの新型EV

 1月4日(現地時間)、ソニーは世界最大の技術見本市「CES2023」においてプレスカンファレンスを実施。かねてから公開を予告していたソニー・ホンダモビリティの新型EVを世界初公開した。

 この世界初公開された新型EVは、ソニー・ホンダモビリティの新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプ車という位置付け。ブランドの発表とともに登場し、プロトタイプ車の愛称などは公開されなかった。2025年前半に先行受注を開始し、2026年春に北米からデリバリーを開始するため、継続的に情報のアップデートが行なわれていくものと思われる。

クアルコムの採用を発表するソニー・ホンダモビリティ株式会社 代表取締役会長 兼 CEO 水野泰秀氏

 ただ、クルマの骨格などは2026年春にデリバリーを開始するのであれば、しっかり決めていく必要がある。今回のプレスカンファレンスでは、安心安全の実現に向けプロトタイプ車には車内外に計45個のカメラ、センサーなどとともに、最大800TOPSの演算性能を持つECUを搭載することが、代表取締役会長 兼 CEOの水野泰秀氏より語られた。

 この45個のカメラやセンサーは、市販車としては圧倒的に多い数でプロトタイプ車ゆえの設定であると思われる。実走行テストを通じて、どのセンサーが必要で、どのセンサーが過剰なのかを確認していくのだろう。

 一方、これらのセンサーの情報や、アフィーラでウリになると思われるコクピットや動的機能などをつかさどるECU(Electronic Control Unit)では、800TOPSという圧倒的な演算能力を持つものであるとし、2026年段階でデリバリーするクルマには、そのような力が必要であると規定したことになる。

 この800TOPSは相当高い数字で、Trillion Operations Per Second、つまり1秒間に800兆回の計算をこなせることになる。以前は、整数演算回数であるMIPSや、浮動小数点演算回数であるFLOPSが用いられたが、AI演算ではInt(整数)やFloat(浮動小数点)などがさまざまに用いられるため、TOPS表記が利用されている。ちなみにTrillionは日本語の兆と乗数が一致しているため、10TOPSは10兆回と換算が簡単になっている。

 現時点で市販されているテスラ車のECUが144TOPS、AI半導体で知られるNVIDIAのロボティクス用市販AIキットであるJetson Orinが275TOPS(NVIDIAは2022年9月に2000TOPSの「DRIVE Thor」を2024年に投入と発表している)ので、800TOPSが極めて高いレベルの見積もりになっていることが分かる。

 この800TOPSまでは、2022年10月13日の「ソニー・ホンダモビリティ株式会社 設立発表会」における、代表取締役社長 兼 COO 川西泉氏のプレゼンテーションでも明らかにされていた。

アフィーラはクアルコムの「Snapdragon Digital Chassis」採用

クアルコムとの協業について語る、ソニーグループ株式会社 代表執行役 会長兼社長 CEO 吉田憲一郎氏

 800TOPSという値、そして投入時期、ホンダがクルマ作りのパートナーになっていることから、Qualcomm(クアルコム)の「Snapdragon」ではないかと予測されていた。11月後半に行なったインタビューにおいても川西氏にぶつけてみたが、ご想像におまかせします状態だった。

 それが、この段階で明らかにされたばかりか、Qualcomm 社長 兼 CEOのクリスチアーノ・アーモン氏もCES2023のプレスカンファレンスに登壇したのには驚かされた。ソニー・ホンダモビリティ 水野会長のプレゼン後、ソニー 代表執行役 会長兼社長 CEOの吉田憲一郎氏がモバイルのXperia、ロボティクスのaibo、エアモビリティのAirpeakについて触れ、クリスチアーノ・アーモン氏を迎え入れた。

Xperiaを紹介
aiboを紹介
Airpeakを紹介
クアルコム CEO クリスチアーノ・アーモン氏を紹介
がっちり握手

 クリスチアーノ・アーモン氏は、同社が手がけるSnapdragonを中心としたクルマ作りのデジタルプラットフォーム「Snapdragon Digital Chassis」を紹介。Snapdragon Digital Chassisのよさとして、コクピット環境を作り上げるSnapdragon Digital Cockpitであればクラウド上にデジタルツインでコクピット環境を作り上げられることなどを語った。このような環境があればコクピットのUI/UXの開発が容易になる。開発が容易になれば、それだけ高品質なものを短期間に作り上げることができる可能性が高まり、他社(他車?)に比べてのアドバンテージにもなるだろう。

クアルコム CEO クリスチアーノ・アーモン氏
クアルコムの取り組み

 また、アフィーラブランドとしての世界観を持った開発も可能になり、これまでクルマでは多く行なわれてきた、ハードウェアにおけるアセンブリ単位の開発、ソフトウェアにおけるモジュール単位の開発とは異なる世界を見せてくれるかもしれない。

 ソニーから見た場合ソニー・ホンダの新型EVブランド「アフィーラ」は、Xperia、aibo、Airpeakに連なる製品であり、モバイル向けSoCから進化したSnapdragon Digital Chassisの採用は必然ともいえる決定ということになる。

プレスカンファレンスのクロージング映像。ソニーの提供するコンテンツやIPが、アフィーラのプロトタイプ車に映り込む
アルファ
同じプレスカンファレンスで発表になったPSVR2
アフィーラ