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Qualcomm、ホンダやボルボ、ルノーと提携 デジタルプラットフォーム「Snapdragon Digital Chassis」の普及を目指す

2022年1月4日(現地時間) 発表

ホンダとの提携を発表する、Qualcomm 社長 兼 CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 半導体メーカーのQualcomm(クアルコム)は1月4日(現地時間)、米国ラスベガスで開催されている「CES 2022」において記者会見を開催した。この中でQualcomm社長兼CEOのクリスチアーノ・アーモン氏は、2021年に提唱した自動車向けのデジタルプラットフォーム「Snapdragon Digital Chassis」の普及に向けて新製品の投入や自動車メーカー、ティア1の部品メーカーとの協業を進めていくと説明した。

 そのパートナーとしてアーモン氏は、日本の自動車メーカーである本田技研工業、そして同じく日本のティア1部品メーカーであるアルプス・アルパインなどを挙げたほか、スウェーデンのボルボ・カーズ、フランスのルノー・グループなどと提携し、同社が提供するモバイル向けのSoCをベースにした「Snapdragon」ブランド製品の自動車産業への浸透を目指すと語った。

デジタル機能をプラットフォーム化して自動車メーカーに提供するQualcomm

Qualcomm 社長 兼 CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くQualcommは、元々は携帯電話やスマートフォン向けのモデムチップやSoCを提供するメーカーとして成長してきた半導体メーカーだ。同社が提供するスマートフォン向けSoCのSnapdragonは、スマートフォン市場でトップシェアを誇る製品で、日本で通信キャリアから販売されているAndroidスマートフォンのほとんどはSnapdragonを搭載している。

 そうしたQualcommは近年、スマートフォン向けのSoCの技術をIoT(Internet of Things)や自動車といったさまざまな製品へ横展開しており、自動車向けを有望な市場であると考えている。

 Qualcommの戦略はシンプルで、競争力のあるSoCをモバイル向けに開発し、開発した技術を元にIoT向け、自動車向け……と展開していくことで、開発した技術をさまざまなジャンルの製品に応用していくというものだ。実際、自動車向けのSnapdragonも、元々はスマートフォン向けとして開発されたSnapdragonをベースにしてカスタマイズしたモノになっている。

 Qualcommの強みは携帯電話回線を使って通信するためのモデムで、他社を大きく引き離す特許と技術を持っている。どんどんコネクテッド(常時接続)になりIT化が進んでいく自動車向けの半導体として、多くの自動車メーカーに注目されている。

自動車のデジタル化を実現するためのSnapdragon Digital Chassis構想
Snapdragon Digital Chassisはクラウド化、自動運転、デジタルコクピット、通信などのモジュールから構成されている

 そうしたQualcommは、2021年に「Snapdragon Digital Chassis」という構想を明らかにした。この「Snapdragon Digital Chassis」は、自動車をコネクテッドにしてIT化を進めるにあたって必要な技術を、プラットフォームとして自動車メーカーやティア1の部品メーカーに提供するものだ。

 Qualcomm社長兼CEOのクリスチアーノ・アーモン氏は、「元々自動車産業はプラットフォームを作り、それを伸縮して乗用車からトラックまで作ることにたけた産業だ。デジタルでも同じようにしない理由はどこにもなく、Qualcommはそうした自動車産業の強みを伸ばせるようなデジタルプラットフォームを作り、自動車産業に対して提供していきたい」と、その狙いを説明する。

 現在の自動車ならティア1の部品メーカーが、ラジエータやエンジン、トランスミッションといった各部を作り、それを自動車メーカーがプラットフォームと呼ばれるシャシーに組み込んで自動車を設計していく。1つのプラットフォームをベースにして、複数の車種に派生していくという設計、開発の手法が一般的だ。

 QualcommのいうSnapdragon Digital Chassisもそれと同じ考え方で、例えばクラウドへ接続する機能、自動運転機能、デジタルコクピット、携帯電話回線を利用してインターネットへ常時接続する機能などをセットにして、自動車メーカーやティア1の部品メーカーなどに必要な部分を提供していく、そういう考え方だと言える。

 そこには同社が提供する自動車向けの「Snapdragon」や、自動運転などの機能を実現するのに必要なソフトウエアを開発する開発キットなどが含まれており、それらを利用することで自動車メーカーは短期間で自社のプラットフォームにデジタルの機能を統合することが可能になるのだ。

ボルボ・カーズ、ホンダ、アルプス・アルパイン、ルノーなどが相次いで採用を表明、最新機能を持つSoCも発表

ホンダとの提携を発表

 Snapdragon Digital Chassisを採用することを決定した自動車メーカーがより増えてきたことをアーモン氏は発表している。最初に発表されたのはスウェーデンのボルボ・カーズで、ボルボが2022年に発売を計画しているポールスターの新型バッテリEVにおいてSnapdragon Digital Chassisのデジタルコクピット技術を、Android Automotiveベースの車載情報システムに採用すると明らかにした。

ボルボ・カーズとの提携
ボルボ・カーズ CPO(最高製品責任者) ヘンリク・グリーン氏

 次に紹介されたのは日本のホンダで、第3世代Snapdragon Cockpit PlatformをAndroidベースの車載情報システムに採用し、米国で2022年後半に販売を開始し、グローバルには2023年に展開すると明らかにした。

 また、日本のティア1部品メーカーであるアルプス・アルパインは、次世代のHMIやデジタルコクピットの実現に第3世代Snapdragon Cockpit Platformを採用するという。すでにアルプス・アルパインは、その試作機を2020年に公開しており、2024年に提供される車両に採用されるべく開発を続けている。

アルプス・アルパインとの提携

 さらに、フランスのルノー・グループもSnapdragon Digital Chassisの採用を明らかにした。V2Xを含む自動車のネットワークまわり、レベル1とレベル2+のADAS機能の開発、クラウドへの接続機能などSnapdragon Digital Chassisを次世代車両の開発に採用すると、ルノー・グループ CEOのルカ・デ・メオ氏がビデオで登場して説明した。

ルノーとの提携
ルノー CEO ルカ・デ・メオ氏

 アーモン氏はそうした自動車メーカーやティア1の部品メーカーとの提携だけでなく、Snapdragon Ride Vision SoCというSnapdragon Digital Chassisの自動運転機能を実現する新しいSoCを発表した。4nmという最先端の製造技術で製造されるSnapdragon Ride Vision SoCは、同社が2021年12月に発表したばかりの「Snapdragon 8 Gen 1」というスマートフォン向けのSoCがベースになっていると考えられ、2024年に販売される自動車に採用される計画だという。

Snapdragon Ride Vision