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アルプスアルパイン、自車位置測位システム「ViewPose」発表 クアルコム「Snapdragon」と「VEPP」でより正確な自車位置を

2024年の生産車搭載に向けて開発中

2021年1月26日(現地時間) 発表

アルプスアルパインが提供する「ViewPose」

 半導体メーカーのクアルコム(Qualcomm)は、ティアワンサプライヤーのアルプスアルパインが、同社のSnapdragonシリーズを利用してGNSS(Global Navigation Satellite System)が利用できない場合でもレーンを維持して走行できる「レーン・レベル・ポジショニング」を可能にする位置測位システム「ViewPose」(ビューポーズ)を開発したと明らかにした。

 これは、同社が現在開催しているオンライン・テクノロジ・イベント「Automotive Redefined: Technology Showcase」の中で明らかにされたもので、クアルコムが提供する車載用5GモデムのSnapdragon 5G Platform、デジタルコクピット用SoC(System on a Chip)となる第3世代Snapdragon Automotive Cockpit Platform、Qualcomm Vision Enhanced Precise Positioning (VEPP)ソフトウェアから構成され、カメラを利用して高精度な位置を特定するレーン・レベル・ナビゲーションを活用して、トンネルや駐車場の中などGNSSが受信困難な環境でも正確な車両位置を特定することができる。


アルプスアルパイン、自車位置測位システム「ViewPose」デモ映像

アルプス電気とアルパインが合併したアルプスアルパインが提供する「ViewPose」

クアルコムが提供するVEPPソフトウェアのための開発環境

 アルプスアルパインは、オーディオやカーナビで知られる「アルパイン」と、電子部品を製造・販売する「アルプス電気」が2018年12月に経営統合してスタートしたティアワンサプライヤーだ。アルプス電気は電子部品メーカーとしてよく知られており、例えばノートPCのタッチパッドやキーボード、スマートフォンやカーナビのタッチパネルなど幅広い部材を扱っている。知らず知らずのうちに同社の部品を使っている最終製品(スマートフォンやPC、ゲームコンソールなど)を使っているというほど実は身近な部品メーカーでもある。

 アルプスアルパインは、アルパイン時代と同様カーナビの延長線上にあるIVIの開発ももちろんのこと、自動運転時代を見据えた次世代のシステム開発や、いわゆるHMI(Human Machine Interface)で知られるデジタルコクピットの開発など行なっている。

 今回そのアルプスアルパインが発表したのが位置測位システム「ViewPose」。自動運転時代に重要になるのは、高精度な3次元地図(3D HD Maps)であることはよく知られているが、それに勝るとも劣らず重要になるのが自車位置の正しい測定だ。

 現在のカーナビの自車位置測定には、GPSや準天頂衛星「みちびき」などGNSS(Global Navigation Satellite System)やQZSS(Quasi Zenith Satellite System)が利用されている。いずれも衛星が発する電波を受信し、複数の衛星が発射した電波を端末が受信するまでの時間を計測し自車位置を推定している。しかし、その誤差は数メートルあることは知られており、その誤差を修正するためにジャイロセンサーや車速センサーなどからのデータを組み合わせて活用することで、補正して概ね正しい位置を推定しながら走っている。

クアルコムが開発したVEPPソフトウェアとSnapdragonを組み合わせることで普及価格帯の車両でより正確な自車位置測位を実現

VEPPを利用して建物内の駐車場を走行したデータ。赤いGPSだけは大きく異なった方向を示しているが、VEPPは正しく走行できている

 自動運転ではこの誤差をより小さく、例えば数センチ程度にする必要があり、GNSSだけでなくさまざまな測位方法が検討されている。その1つにクアルコムが提唱する「VEPP(Vision Enhanced Precise Positioning)」がある。VEPPはGNSS、車速センサーやジャイロセンサーの発展系となるIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)などの手法に加えフロントカメラを利用したレーン・レベル・ポジショニングという手法が活用される。

 レーン・レベル・ポジショニングとはフロントカメラがレーンや標識などを認識し、そのデータを高精度3次元地図(HDマップ)と照らし合わせながら自動運転を行なう手法で、GNSSが利用できない環境(例えばトンネルの中や建物の中の駐車場や地下の駐車場)などでも、自車位置を正確に把握することができる。そうした仕組みを、クアルコムのSoCと組み合わせて実現するVEPPで提供することで、低価格で高度な自車位置測位システムの実現を可能にしている。

 今回アルプスアルパインが発表したViewPoseはそうしたクアルコムのVEPPソフトウェアと、車載用5GモデムのSnapdragon 5G Platform、デジタルコクピット用SoC(System on a Chip)となる第3世代Snapdragon Automotive Cockpit Platformを組み合わせて実現されている。

 クアルコムの発表によれば、ViewPoseはそうしたVEPPとフロントカメラを組み合わせたシステムとしては世界初のシステムになり、レーン・レベル・ポジショニングを利用することで、GNSSが使えないような環境でも自車位置を正確に把握しながら走行が可能になる。また、同時に電子ミラー、クラウドを利用した高精度3次元地図、セルラーV2X、ADASなどほかのセンサーの利用も可能になっており、低コストで高精度な位置測位が可能になるということだ。

  Qualcomm 上席副社長 兼 自動車事業本部 事業本部長 ナクル・ドゥガル氏は「LiDARデータを利用した地図のように、位置や高度をどのような環境でも正確に測定できる代替手段を確保することは、コストの観点からもクラウドベースの地図がカバーできていない場所を走るときなどにも重要になる。我々はアルプスアルパインと協業し、すでに車載センサーとして利用されているものを活用しながら低コストで実現できるソリューションを提供していきたい」(原文は英語、筆者訳)とアルプスアルパインが同社のVEPPを採用したことを歓迎するコメントを残した。

 アルプスアルパイン 執行役員 兼 デバイス事業担当 兼 技術本部副本部長 泉英男氏は「クアルコムと協業し、どんな環境でも正確なレーン・レベル・ポジショニングのメリットを享受できるシステムを普及価格帯の車両向けに提供できるようになることを歓迎している。MF-GNSSをサポートするSnapdragon Automotive 5G Modem、Snapdragon camera-based sensor platformとVEPPソフトウェアの組み合わせにより、より安全で利便性の高いアプリケーションをエンドユーザーに提供することが可能になる」(原文は英語、筆者訳)と、協業で低コストのシステムを自動車メーカーに提供できるだろうとした。

 クアルコムによれば、アルプスアルパインは2024年に生産される自動車に搭載されることを目標としてViewPoseの開発を行なっているとのことだ。