イベントレポート CES 2020

Qualcomm社長 クリスチアーノ・アーモン氏、自動運転向け半導体ビジネス参入を発表。「Qualcomm Snapdragon Ride」が2023年発売車に採用

2020年1月6日(現地時間) 発表

Qualcomm Snapdragon Rideの開発キットを手に持つQualcomm社長 クリスチアーノ・アーモン氏

 米国ネバダ州ラスベガスで行なわれる世界最大の技術見本市「CES 2020」のプレスカンファレンス日となる1月6日(現地時間)、半導体メーカーのQualcomm(クアルコム)は、自動運転向けの半導体ビジネスに参入することを明らかにした。

 Qualcomm社長のクリスチアーノ・アーモン氏は「これまでQualcommはセルラー回線によるインターネット常時接続や車載情報端末向けという2つの柱で展開してきたが、これからは新たに自動運転向けやクラウドソリューションを提供していく」と述べた。アーモン氏によれば、Qualcommは「Qualcomm Snapdragon Ride」という同社のスマートフォン向けSoC「Snapdragon」をベースにした製品を投入し、最上位の製品は700TOPSの処理能力を持ちレベル1~レベル4の自動運転に対応し、2023年に公道を走れる車両に採用される計画だ。

AI自動運転向け半導体市場に参入、2023に発売される車両に採用

 Qualcomm社長のクリスチアーノ・アーモン氏は「Qualcommにとって自動車向けのビジネスは比較的新しいビジネスではあるが、2002年からGMとのビジネスを開始して以来徐々に発展させてきた。これまでは車載情報端末向けやデジタルコックピット向けのソリューションを充実させてきた」と述べ、19の自動車メーカーに採用され、70億ドル分のデザインウイン(採用例)を獲得していることを述べ、順調に成長していると強調した。

 その上で、「ジャガーランドローバー(Jaguar Land Rover Automotive)」のコネクテッドカー/将来技術担当部長 ピーター・ヴィーク氏を壇上に呼び、Qualcommの車載情報端末向け製品となるSnapdragon 820Aを採用した「DEFENDER」に関する説明が行なわれた。

Qualcommの自動車向けビジネスの歴史
Qualcommの自動車向けビジネスの現状
自動車向けビジネスの4つの柱
ジャガーランドローバー(Jaguar Land Rover Automotive) コネクテッドカー/将来技術担当部長 ピーター・ヴィーク氏
ヴィーク氏のスライド

 その後アーモン氏は「Qualcommはこれまで車載情報システムやデジタルコクピット、セルラー回線を利用したインターネット常時接続向けのソリューションに注力してきた。しかし、これからは自動運転向けやクラウドソリューションなども新しい柱としていきたい」と述べ、同社が今後は自動運転向けの半導体ソリューションを自動車メーカーやティアワンの部品メーカーに提供していくと述べた。

自動運転の進化
QualcommのQualcomm Snapdragon Ride

 アーモン氏によれば、Qualcommが提供するのは「Qualcomm Snapdragon Ride」で、スケーラブルな製品構成になっており最上位モデルでは最大700TOPSのAI推論性能を持っており、レベル4の自動運転に対応することができる。複数の製品が用意されており、ローエンドの製品ではレベル1/2に、ミッドレンジの製品ではレベル2+やレベル3などに対応することが可能になる。

 アーモン氏によれば「電力効率に優れており、競合他社の最新製品に比べて2倍の電力効率を持つ」と述べ、スマートフォン向けの省電力技術などを応用して、高い電力効率を持っていることを自動車メーカーなどにアピールすると述べた。なお、提供されるのは半導体だけでなく、ソフトウェア開発キットなども含まれており、業界のパートナー企業と協力して自動車メーカーやティアワンの部品メーカーなどにトータルソリューションとして売り込んでいく。

開発キットとなる「Qualcomm Snapdragon Ride Platform」

 アーモン氏はQualcomm Snapdragon Rideの開発キットとして「Qualcomm Snapdragon Ride Platform」も発表し、コンピュータボックスの形で、自動車メーカーや部品メーカーなどに提供することも明らかにし、今年の前半中に出荷を開始すると述べた。また、アーモン氏によれば、Qualcomm Snapdragon Ride は2023年に公道を走ることができる車両に採用される予定ということで、どこの自動車メーカーかは明らかにされなかったが、すでに何らかのデザインウインを獲得していることを示唆した。

 こうしたAIを利用した自動運転向けの半導体は、Intelの子会社のMobileye、NVIDIA、ルネサス・エレクトロニクス、Xilinxなどの半導体メーカーが覇を競っており、今回の発表によってQualcommもその列に並ぶことになる。これにより、自動運転向け半導体の競争はより激化することが予想され、採用を検討する自動車メーカーやティアワンの部品メーカーにとっては選択肢の幅が広がることになるため、歓迎されるだろう。

GMとはテレマティックスに加えてADASの領域でも協業していくと発表、自動車メーカー向けのクラウド基盤を提供

GMとの提携を拡張

 また、アーモン氏は同社とGMのパートナーシップが拡大されたことに言及し、すでに発表されているテレマティックスやデジタルコックピットに加えて、今後はADAS、つまり自動運転でも協業していくことに言及した。

Qualcomm Car-to-Cloud Servicesを発表

 また、今後自動車メーカーやティア1の部品メーカーに対して「Qualcomm Car-to-Cloud Services」と呼ばれるクラウドサービスを提供していくと発表した。これはテレマティックスやクラウド経由の各種サービスを自動車メーカーが提供していくときに、自社でデータセンターなどを用意しなくても、よくなる仕組みで、自動車メーカーは車載情報システムのユーザーインターフェースという競争領域に集中出来る仕組みとなる。OTA(インターネット経由で機能をアップグレードする仕組みのこと)など各種の仕組みが用意されているとアーモン氏は説明した。

笠原一輝