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クアルコム、デジタルコクピットや自動運転/ADAS向けに5nm製造の半導体「Snapdragon」発表 GMやAmazonと提携

2021年1月26日(現地時間) 発表

Qualcomm 上席副社長 兼 自動車事業本部 事業本部長 ナクル・ドゥガル氏。手に持つのは第4世代Qualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform

 米国の半導体メーカー「クアルコム(Qualcomm)」は1月26日(現地時間)、オンライン・テクノロジ・イベント「Automotive Redefined: Technology Showcase」を開催。新しい発表を行なった。

 クアルコムが発表したのは最先端の5nmプロセスルールで製造される新しい車載向け半導体「Snapdragon」(同社のコンピューティング機能を搭載した半導体製品のブランド)で、デジタルコクピット向けの「第4世代Qualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform」、ADASおよびレベル4自動運転までをカバーできる「Qualcomm Snapdragon Ride Platform」の新しい追加製品。

 クアルコムによれば第4世代Qualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platformは2022年に量産出荷が開始される見通しであるほか、新しいQualcomm Snapdragon Ride Platformはすでに提供が開始されており、2022年に生産が開始される自動車に搭載される見込みだ。

5nm製造で電力効率や性能が向上した第4世代Qualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform

 今回クアルコムが発表したのは、いずれも半導体製造の最先端技術となる5nmプロセスルールに基づいて製造されるSoC(System on a Chip)だ。同社はすでに5nmで製造するSoCとしてスマートフォン向けの「Snapdragon 888」を2020年12月に発表しており、自動車向けの2製品はそれに次ぐ5nm製品となる。

 デジタルコクピット向けの「第4世代Qualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform」は、2019年のCESで発表された第3世代Qualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platformの後継製品となる。デジタルパネル(LCD[液晶ディスプレイ]やOLED[有機EL])と組み合わせて、メータークラスターやIVI(In-Vehicle Infotainment)を実現する。

 製造技術が5nmに移行することで電力効率が大きく向上しているとクアルコムは説明している。CPUやGPUなどに関する詳細についての説明はないが、投入時期などから考えてスマートフォン向けに提供を開始しているSnapdragon 888の自動車向けと考えられ、優れた電力効率と高いパフォーマンスを兼ね備えた製品と言える。

 仮想化技術に対応しているため、複数のハイレベルOS、リアルタイムOSを同時に1つのSoC上で実行することができ、複数のECUやドメイン(領域)コントローラを1つにまとめることも可能なほか、1つのソフトウェアコードで、異なるグレードの製品をカバーすることができるため、ソフトウェア開発のコストや期間を短縮できるメリットがある。

 クアルコムによれば、搭載車両は2022年のSOP(Start of Production、生産開始)を想定しており、2021年の第2四半期から開発キットを利用した評価や開発が可能になると説明している。

レベル4自動運転まで対応できるQualcomm Snapdragon Ride Platformにも5nmの新製品を投入

Qualcomm Snapdragon Ride Platformの自動運転テスト車両、リアにシステムが納められている

 もう1つの製品となる「Qualcomm Snapdragon Ride Platform」は2020年のCES 2020で発表された製品の追加グレードとなり、SoC単体と別チップで提供されるアクセラレータから構成され、同じく5nmのプロセスルールで製造される製品。

 レベル1とレベル2の自動運転、つまりADASはSoC1チップで実現し、SoCをサポートするAIアクセラレータを追加することでレベル2+からレベル4の自動運転まで実現する製品となる。また、ASIL-Dの機能安全に対応している。

 5nmプロセスルールを利用して製造することにより、電力効率は従来製品より優れており、5Wの消費電力で10TOPSの性能を可能としている。これにより1チップでフロントウィンドウのカメラを利用してADASのシステムを構築したり、複数のチップを利用することで最大700TOPSを超える性能を実現したりするなどして、レベル4の自動運転まで対応することができる。

リアのトランクルームに格納されたQualcomm Snapdragon Ride Platformによるコンピュータシステム

 今回クアルコムはこのQualcomm Snapdragon Ride Platformのソフトウェア開発環境としてVeoneerのArriver、ValeoのPark4U、Seeing Machines社のe-DMEという3つの外部開発キットの提供が開始されることを明らかにし、自社ですべてのソフトウェアを開発せずとも、そうしたティアワンやティアツーのサプライヤーが提供する開発キットを活用することでソフトウェア開発にかかる時間をさらに短縮できると説明した。

 また、プラットフォームレベルで提供されている仮想化技術を活用することでハイパーバイザー環境を利用したり、セーフティーRTOS(リアルタイムOS)やAUTOSARなどをサポートしたりする。

 クアルコムによればレベル2+からレベル4までに対応するSoCとアクセラレータはすでに提供が開始されており、2022年から生産される自動車に搭載される見通し。ADASからレベル2+までに対応した製品は2024年から生産が開始される自動車向けに提供される予定だ。

GMとはデジタルコクピット事業での協業を拡大、AmazonとはAlexaを車載Snapdragonに標準搭載

 クアルコムはQualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform事業において、GM(General Motors)とAmazonとの協業を強化すると発表した。

 GMは2019年にQualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform事業においてクアルコムとの協業を発表しているが、今後それをより拡大していくと発表した。GMとクアルコムは車載セルラー(携帯電話回線)の実装やセルラーV2X(携帯電話回線を利用した車車間、路車間、車歩間通信のこと)事業などで協業してきたが、今後デジタルコクピット事業でさらにその関係を拡大していく。

 Amazonとの協業ではとQualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platform事業に、Amazonの音声アシスタント機能「Alexa(アレクサ)」を、同社のQualcomm Snapdragon Automotive Cockpit Platformにアウトオブボックス(箱から出した上で使えること、この場合はQualcommから自動車メーカーやティアワンのサプライヤーに提供されるソフトウェア開発キットなどにAlexaのコードなどが組み込まれること)で使えるようにすることが明らかにされた。

 2019年に発表した第3世代と、今回発表された第4世代が対象で、自動車メーカーやティアワンのサプライヤーはより容易にAlexaを自社のデジタルコックピットやIVIに組み込むことができるようになる。