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ルノー、日産、三菱自動車の3社共同会見 アライアンスの変革に、日産の内田社長「チョイスではなくニーズ」

2023年2月6日 発表

日産自動車社長兼CEOの内田誠氏

 ルノーグループと日産自動車、三菱自動車工業は2月6日、3社共同で記者会見を開催。アライアンス会長のジャン・ドミニク・スナール氏、ルノーグループCEOのルカ・デメオ氏、日産自動車の社長兼CEOの内田誠氏、三菱自動車工業の社長兼CEOの加藤隆雄氏が会見に登壇した。その中で、アライアンスを変革することについて、日産の内田氏は「チョイスではなくニーズ」と、劇的に変化する市場環境に対応するために必要なものであると強調した。

 会見冒頭に登壇した、アライアンス会長のスナール氏からは、新たなアライアンスの枠組み合意について報告された。

アライアンス会長のジャン・ドミニク・スナール氏

 スナール氏からは、2030年に向けたアライアンスのロードマップにおいて、新たにアライアンス各社はラテンアメリカ、インド、欧州において、市場、商品、技術という三分野でプロジェクトを検討していること。また、日産はルノーグループが設立するEV&ソフトウエア子会社「アンペア」に最大15%を出資する意向で、三菱自動車もアンペアへの参画を検討していることなどが明かされた。そして、ルノーグループと日産は、15%の株式を相互に保有するという、株式の相互保有とガバナンスの条件について合意したことが報告された。

 新たな合意については今後15年が当初の継続期間になるとし、スナール氏は「ルノーは、日産株の28.4%を信託に移管し、残りの15%は直接保有を継続します。この移管によるルノーの財務諸表上の減損は発生しません。ルノーは信託している日産株を完全にフレキシブルに、日産との協調的プロセスを経て売却が可能になります。ただし、特定の期間内に売却する義務は負いません」などと説明。

 そして、ルノーグループ、日産、三菱自動車の調整の場としてアライアンス オペレーティング ボード(AOB)は存続するとし、スナール氏は「アライアンス オペレーティング ボードは、これからも調整機能を果たすことを確認いたしました。私は、この重要なガバナンス機関の議長を務めるということに大変光栄に思っています」とコメントした。

アライアンス記者会見 - 2023年2月6日
ルノーグループと日産が15%の株式を相互に保有することで合意

アライアンスの変革は「チョイスでなく、ニーズ」と日産自動車 代表取締役社長兼CEOの内田誠氏

 スナール氏に続いて登壇した、日産の内田氏は「アライアンスが、次のレベルに向けて重要な1歩を踏み出しました。世界情勢は急速に変化しています。ビジネスの在り方を見直すことが重要です」と語り、気候変動、原材料の高騰など新しい現実に合わせ、早急に問題に対処する必要があり、もはや過去の延長線上で事業を進めることはできないことを強調。3社のアライアンスを変革することについては「次のレベルの変革が必要です。これは、チョイスではなく、ニーズです」と強調し、過去数か月間、集中的に議論を重ねてきたことを明かした。

 新たに公表された地域戦略について、内田氏は「急成長市場のラタムや、インドなどの新機種の投入なども行なっていきます。また、工場の効率化も続けます。欧州では、重要な共同プロジェクトを続けていきます。これらのプロジェクトは、われわれの地理的戦略を支える既存の協力関係の継続です」と説明。また、日産が日本、米国、中国をリードし、 ルノーと三菱自動車とは欧州とASEANで協力していくとした。

 電動化領域で検討されるアンペアへの出資について、内田氏は「日産は、アンペアに最大で15%出資する意向であるということをお伝えします。アンペア社は、日産が欧州で新たなビジネスチャンスを生み出し、新たな協業を約束し、価値を生み出すプロジェクトに参加することを可能にする存在です」と説明した。

 そして、ルノーグループと日産が15%の株式を相互に保有することで合意したことに、内田氏は「アライアンスの変革に重要なのは、効率的な組織とガバナンス強化です。アライアンスの次のレベルでは、新しいアプローチが必要です。アライアンスメンバーが対等に、将来の業界の機会に備えることができるようにするためです。対等なパートナーシップは変革を可能にするものです。この新しい体制が相互信頼を深め、各メンバーがその強みを発揮し、モビリティの未来に対するわれわれの共通の野心も加速できると、私は確信しています」と話した。

 続けて、内田氏は「しかし、次のビジネスの変革は、ビジネスに限ったことではありません。変革の実現には、それを支える強固な文化が必要です。信頼、透明性、尊敬の文化です。変革の真の可能性を実現するには、正しいマインドが必要です。このマインドは、日産だけではなく、パートナーシップを成功させるためにも大切なことです。この原則があったからこそ、ルカと私は議論を有意義な結論に導くことができたのです。2人が次のレベルの変革の必要性を信じたこと、そして、スナールさんの強いサポートがあってこその成果です。日産は、今後も大きな前進をしていきます。持続可能な成長と、長期的な野心の実現に向けて、社員、パートナー、そしてお客さま、日産を信じてくださってありがとうございます」と述べた。

三菱自動車工業 代表取締役社長兼CEOの加藤隆雄氏

三菱自動車工業 代表取締役社長兼CEOの加藤隆雄氏

 内田氏に続いて登壇した、三菱自動車の加藤氏は「まず、ルノーと日産の合意おめでとうございます。本日発表された新しい方向性について、非常にポジティブに受け止めています。現在の自動車ビジネスの急速な環境変化に対応しており、全てのアライアンスパートナー、これは三菱自動車も含めて強化するものであると確信しています」との感想を述べるとともに、アライアンスによる実績や、三菱はASEANやオセアニア諸国などの市場に資源を集中し、欧州と北米では、日産とルノーといくつかのプロジェクトが進行中であることが報告された。

 加藤氏は「例えば、北米は有望な協業先であります。日産自動車と協力して、ラインアップを充実させることができます。欧州も、アライアンスによる事業強化の対象地域です。ご承知のように、ルノーからのOEM商品である、ASXとコルトをすでに発表しています。開発が進められており効率よく進んでいます。ディーラーも販売を心待ちにしています」と説明した。

 そして、アンペアへの出資について、加藤氏は「欧州の厳しい排ガス規制を背景に電気自動車の導入を検討せざるを得ません。アンペア社からのOEMは、われわれにとって、非常に魅力的なソリューションの1つになると確信しています。アンペアは、三菱の欧州EV商品戦略の一力を担うべきということで、今後、アンペア社への資本参加について検討してまいります」と述べた。

 新たなアライアンス体制について、加藤氏は「アライアンスは各社がそれぞれの得意分野、そして得意地域でより発展するための機会であると考えています。スナールさん、ルカさん、内田さんもおっしゃったように、アライアンスの新しい1歩です。この新しい枠組みが3社のさらなる成功につながることを確信しております」と述べた。

ルノーグループCEOのルカ・デメオ氏

ルノーグループCEOのルカ・デメオ氏

 最後は、ルノーグループCEOのルカ・デメオ氏が登壇し、これからのアライアンスの展望とその中でルノーの戦略について説明。デメオ氏は「アライアンスというのは、あくまでもビジネスに役に立つものと考えておりまして、ルノーチームの中でアライアンスを活用して、われわれのビジネスチャンスを最大化しなければならない」との考えを示した。

 そして、ルノーグループは日産の株式28.4%をフランスの信託会社に信託することについて、デメオ氏は「信託した株式についても、経済的な利益はわれわれとしてはキープいたします。さらに、われわれのこの移管した株ですが、これをどういう風にしていくのかということについては、われわれとしては今後の将来のアジリティ、機敏性ということを考えながら進めていきます」との考えを述べるとともに、アライアンスに対しては、スケールはキープし、その一方で、ルノーはルノー、日産は日産、三菱自動車は三菱自動車で動いていけるような体制を作っていくとしている。

 また、日産が出資を検討するアンペアについては、デメオ氏は「アンペアという会社は戦略的にも特に欧州で日産、三菱自動車にも資するものになると考えています。車載ソフトが載り、これが最終的に3社でメリットが共有できるものになります。さらに、日産も三菱自動車もわれわれが持っている8社のカスタマーとともにメリットを共有でき、このシナジーを共有できることになります」と説明。そのほかに、2030年に向けたアライアンスのロードマップにおいて、新たにアライアンス各社はラテンアメリカ、インドおよび欧州において、市場、商品、技術という三分野で主要なプロジェクトを検討していることを報告した。

 この発表に至るまで数か月にも及ぶ交渉があったといい、デメオ氏は「交渉の間もいろいろありましたが、しかし、こうした成果を出すことができました。内田さんと、本当にビジネスをできて嬉しく思っております。というのは、ここ数か月の間、お互いこれだけ厳しい交渉をやってきて、お互いの尊重、さらには相互信頼というものが、さらに大きくなりました。われわれの取引はこうした相互信頼がなければできなかったと思います。過去には確かに過ちもあったかもしれませんが、最終的にはそれを克服して、われわれとしては、あくまでもノウハウに乗っ取り、しかもフェアな形でこうした取引ができたことを、内田さんに心からお礼を申し上げたいですし、また加藤さんのチームからもたくさんのサポートをいただきました。本当にありがとうございました」との感想が述べられた。