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トヨタ、液体水素GRカローラのために水素レスキュー車を開発 水素を風で吹き飛ばす

トヨタが水素GRカローラの安全運用のために開発した水素レスキュー車両。巨大な風車が目立つ

 TOYOTA GAZOO Racingは2月22日、スーパー耐久公式テストにマイナス253℃の液体燃料を内燃機関で燃やして走る32号車 GR Corolla H2 concept(液体水素GRカローラ)を持ち込んだ。

 この液体水素GRカローラは、これまでの70MPa圧縮水素ではなく常圧の液体水素を用いるため、異なった安全対策が必要になる。その一つが、気体ではなく液体の水素を用いるため、万が一の際に水素漏れが起きた場合、水素が滞留しやすいこと。そのため、液体水素GRカローラは水素カローラとは異なり、後席上部にベンチレータを設置。車体右側部にエアインレットを装備し、液体水素燃料タンク付近設置された熱交換器へ導き、車体後部から排出。マイナス253℃の水素を気化するための熱を得ているほか、水素が車内に滞留しないような工夫がされている。

 さらにトヨタは水素レスキュー車両を開発。これはコース内で液体水素GRカローラにトラブルが発生するなど、万が一のことがあった際に使用するもので、水素が漏れ出した場合に使用する。

 よく知られているように水素は爆発する能力がある(だから燃料に使える)のだが、濃度が低くなり拡散してしまえば基本的に問題もない。世界でもっともありふれた物質とされている。

 ただ、今回はマイナス253℃の液体水素で運用するため、液体水素として漏れ出した場合、無風の場合など完全蒸発するまで濃度の高い部分ができてしまう可能性がある。水素レスキュー車はその際に使用するもので、トラブルがあった現場に駆けつけ、巨大な風車を回すことで強力な風を起こし、水素を拡散していく。

 液体水素GRカローラの牽引車としても使えるように設計されており、液体水素GRカローラに風を当て、水素を拡散していく能力が持たせてあるとのことだ。

 巨大な風車を後部に搭載するものというと、ホバークラフトなどが思い浮かぶが、4輪の自動車となるとなかなかない形。遠く記憶の彼方にあるブロロロローと走るマッハロッド号くらいだろうか。

 いずれにしろ、トヨタはさすがクルマ屋だけにこのようなクルマまで作り出して液体水素による安全なレース体制を確立しようとしている。

前から見たところ。屋根の上に警告灯も搭載されているのが分かる
巨大すぎる風車。横のスペックを見ると7barの風を送り出すことができるようだ