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トヨタ、マイナス253℃の液体水素を用いて走る「液体水素カローラ」を世界初公開 圧縮気体水素燃焼カローラの進化形で航続距離は2倍に

2022年6月3日 実施

液体水素カローラ世界初公開

世界初公開された液体水素供給ユニットと液体水素カローラ

 6月3日、トヨタ自動車は24時間レースを開催中の富士スピードウェイで液体水素を搭載する液体水素カローラを世界初公開した。これまでの水素燃焼カローラは、70MPaの圧縮気体水素を用いるものだったが、この液体水素カローラは、文字どおりマイナス253℃の液体水素を用いるものになる。そもそも気体水素を燃やして走るクルマ自体が世界的にも珍しく、その発展形として液体水素を用いるということになる。

 ガソリンエンジン以上のパワーを発揮するほどに進化した水素カローラの弱点として指摘されてきたのが、70MPaの高圧水素タンク4本を用いても航続距離が短いことだ。富士スピードウェイを10周程度で給水素しなければならず、そこにも時間がかかっていた。

車載用液体水素システム
液体水素ユニット。ここに液体水素をため込み、気化してエンジンへと送り込む。燃焼過程はこれまでの水素カローラと同様になる
液体水素ユニットを後部から。不要な圧力が入った際のポップオフバルブなどが備えられている
液体水素ユニットを横から
真空2重槽と書かれているので、超高級な魔法瓶というところだろうか
給水素の状態。液体水素を充填というと、ロケットの発射準備などで見るシーンと仕組みは同じ

 また、70MPaの高圧タンクが4本リアシートをふさぐことによる容積のマイナス面もある。気体水素を燃焼させる、70MPaの高圧タンクで貯蔵するといった世界最先端の技術を用いてもなかなか解決していなかった部分だ。逆に言えば、CO2を排出するとはいえ、ガソリンという燃料がそれだけ優れている部分でもある、

 トヨタはこの容積などのマイナス面を解決する手段として、液体水素タンクを水素カローラに搭載した液体水素カローラを開発した。燃焼面においてはこれまでのノウハウを活かして、気化した水素を噴射。1タンクのみの搭載で、液体水素を液体水素貯蔵設備から直接送り込む。

 気になる航続距離は、「これまでのカローラの約2倍」とのことで単純計算で富士を20周走ることができる計算になる。もちろんこれはタンクの大きさでどうにでもなる数字なので、まずはその辺りをターゲットにしているということだろう。

液体水素の給水素サイクルも構築へ

2本のホースで液体水素カローラへ

 同時に展示されていたのが、岩谷産業の液体水素給水設備や、川崎重工業の液体水素運搬用のタンクなど。液体水素を手の内に入れているメーカーは少なく、トヨタによればこの液体水素カローラを公開することで、一緒に開発していく仲間を募っていきたいとのこと。

 現実には、まだ液体水素カローラは走行できる状態にはなく技術展示のみ。スーパー耐久の後半戦で走ることができればといった状態とのことだ。

 液体水素を普段使いする乗り物などは、宇宙用ロケットなどごく特殊なもののみ。液体水素を用いるエンジンとして、日本ではJAXAと三菱重工業、IHIが共同開発したLE-9などがよく知られているが、要するにそのレベルの技術をサーキットで走らせようという野心的なプロジェクトになる。

液体水素の供給モデル