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SambaNova、手軽に生成AIを始められるエンタープライズ向け「SambaNova Suite」提供開始

2023年3月1日 発表

SambaNova Suiteの説明をSambaNova Systems 製品担当上級副社長 マーシャル・チョイ氏

 米国の半導体ベンチャー「SambaNova Systems」(以下SambaNova)は、2月28日(米国時間、日本時間3月1日)に報道発表を行ない、同社のAI学習、推論向けの半導体RDU(Reconfigurable Dataflow Unit)の上で動作する新しいエンタープライズ向けソフトウエア・スイート「SambaNova Suite」の提供を開始すると明らかにした。

 SambaNova Suiteには、事前に学習され制度の高いAIモデルが搭載されており、最近注目されている生成AI(Generative AI)を企業が活用する基盤になるとSambaNovaは説明している。

GPT-3など複雑なAIモデルを採用して実現する生成AIなどに注目が集まることで、より強力なAIプロセッサのニーズが高まる

企業でも生成AI活用の可能性が高まっている

 SambaNovaはAI学習、推論を従来のCPUやGPUよりも高効率で演算できるRDUを提供している半導体ベンチャー。同社の最新製品であるCardinal SN30は、NVIDIA DGX-A100と比較してGPT 13Bモデルで約6倍高速にするなど、AI/ディープラーニングの学習、推論に特化することで従来型の汎用プロセッサに比べて高速に処理できるのが特徴。

 最近IT業界で大きな話題になっているのが、生成AI(Generative AI)と呼ばれるAIを利用して自然言語処理や、コンテンツそのものを作成するという処理だが、こうした処理には膨大なコンピューティングリソースを消費する。例えば「Chat GPT」など自然言語処理で、より自然な会話を実現するチャットボットは一般のメディアにも取り上げられるぐらい話題になっているが、そのバックエンドでは「GPT-3(Generative Pre-trained Transformer 3)」などと呼ばれるAIエンジンが動作しており、そのAIの学習には膨大なコンピューティングリソースが必要になることがよく知られている。

 今後こうした生成AIは、スタートレックなどのSFでよく見られる「コンピューター、1995年に起きた事件は?」と問いかけるとその年のニュースがピックアップされて紹介され、「コンピューター、おなかがすいたから目玉焼き作って」と言うとクッキングマシンが自動で調理して食事が出てくるような機能を現実にしていくために必要だと考えられている。そうした未来を実現するために生成AIがどんどん高度化していく必要があるのだ。

 しかし、すでに現状のGPTの学習や推論でもかなりの演算性能を必要としており、CPUやGPUでは処理能力が十分ではなくなってくる可能性がある。話題になっているChat GPTがユーザーの利用を時々制限するという背景にはそうしたコンピューティングリソースに制約があるからだ。このように、生成AIがより高度になっていけばなっていくほど、AIが必要とする演算リソースは加速度的に高まっていくと考えられており、企業がCPUやGPUのような汎用プロセッサからRDUのようなAIに特化したプロセッサに乗り換える可能性がより高まってくると考えられている。

学習済みモデルを提供することで生成AIを手軽に始められ、自社モデルの構築も可能になるSambaNova Suite

今回発表されたSambaNova Suiteの特徴

 今回SambaNovaが発表したのは、そうした生成AIを同社のRDUを利用してより手軽に実現するためのソフトウエアソリューションとなる。というのも一言でAIの学習といっても、企業が必要とするレベルの生成AIを実現するには、膨大な量のデータとAIの学習が必要になるからだ。

 SambaNova Systems 製品担当上級副社長 マーシャル・チョイ氏は「企業において生成AIを活用するには、いくつかの課題がある。すでに企業が持つデータをいかに活用するかが重要になる。というのも、企業が保存しているデータのうち80%は非構造化データであり、これを活用するのは簡単ではないからだ。また、一般消費者向けの生成AIを活用する手段もあるが、現時点では正確性に課題があったり、利用しているデータがインターネット一般だったり、さらにはベンダーロックインとなってしまう可能性があり、こちらも課題を残している」と述べ、企業にとって生成AIを使うと言っても、そこには大きな課題があると指摘した。

 そこで、SambaNovaが提供するSambaNova Suiteでは、企業が生成AIを自社のソリューションとして導入することを容易にする。チョイ氏によれば、SambaNova Suiteには「SambaNovaコンタクトセンターインテリジェンス」と呼ばれる生成AIを活用したコンタクトセンターの機能をリアルタイムに実現するアプリケーション、「SambaNovaドキュメントインテリジェンス」と呼ばれる自然言語を活用して企業内のデータベースから必要なドキュメントなどを見つけるアプリケーションが用意されており、それらを従来よりも手軽に実現することが可能になる。

SambaNova Suiteを利用するとエンタープライズが必要する生成AIを比較的手軽に構築できる

 チョイ氏は「これらのシステムは企業内のオンプレミス環境下でも、クラウドベースでも実現でき、自社のポリシーに従ってシステムを構築できる。また、SambaNova Suiteでは企業向けに正確な事前学習済みモデルを提供し、かつ顧客自身のデータを活用して顧客自身のモデルを構築することも可能だ」と述べ、SambaNova Suiteがオンプレでもクラウドでもどちらでも柔軟に利用でき、同時に事前学習済みのモデルを合わせて提供するため、企業側で複雑なデータ処理をしてモデルを構築しなくてもすぐに使い始められ、かつ自社のデータでよりカスタマイズしたモデルを構築したい場合にはそれも可能だと強調した。

 また、ベンダーロックインにならないようにオープンソースモデルを利用しての提供になり、必要になれば他のプラットフォームへの乗り換えも容易だと説明した。

SambaNova Suiteのコンソール画面