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野間智の「ニュルブルクリンク24時間レース2023」レポート 新型「WRX S4」で完走したSTIの辰己総監督に感想を聞いた

2023年5月18日~21日(現地時間) 開催

ニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したSUBARU TECNICA INTERNATIONALの114号車「WRX S4」(カルロ・ヴァンダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人組)

フェラーリが初の総合優勝を達成

 5月18日~21日(現地時間)に、「第51回 ADACトタルエナジーズ 24時間レース」(通称:ニュルブルクリンク24時間)の決勝レースが行なわれ、131台が参加し、88台が完走を果たした。開催期間のニュルブルクリンクは、週末を通して日中の最高気温は20℃前後で、晴れたり曇ったりしながらのドライコンディションであった。

 総合優勝は、SP9プロクラス 30号車 アール・バンバー/ニック・キャッツバーグ/ピタード・デビッド/フェルナンデス・レーザー・フェリペ組のフェラーリ296 GT3(Frikadelli Racing Team)で、パンクやコースアウトなどに見舞われながらも、これまでの最多周回数記録を3周上まわる162周の新記録を樹立して、フェラーリとして初のニュル24時間総合優勝を飾った。これは2002年ザクスピードの「クライスラー バイパーGTS-R」以来、21年ぶりにドイツ車以外が総合優勝を果たした。

総合優勝は、Frikadelli Racing Teamの30号車 フェラーリ296 GT3(アール・バンバー/ニック・キャッツバーグ/ピタード・デビッド/フェルナンデス・レーザー・フェリペ組)

 総合2位は、SP9プロクラス 98号車 BMW M4 GT3(ROWE RACING)、3位はSP9プロクラス 4号車 メルセデス-AMG GT3 (Mercedes-AMG Team Bilstein)。また、SP9プロアマクラスの、20号車 フェラーリ296 GT3(WTM by Rinaldi Racing)が総合7位でクラス優勝を飾り、マシンの高いポテンシャルが証明された。

 2022年までのSP3Tクラスではなく、SP4Tクラスに新型「WRX S4」で参戦するSUBARU TECNICA INTERNATIONAL。114号車のカルロ・ヴァンダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人組は予選Q1、予選Q2ともエンジンの水まわりのトラブルが出たために予選Q3の前にエンジンを載せ換えて決勝に臨んだ。

予選Q2でトラブルが出たためQ3前にエンジンを乗せ換えた新型「WRX S4」

 決勝では、レース序盤にオルタネータが焼き付くトラブルが発生するが、その後は順調に走行し朝を迎えた。しかし日曜日の朝6時過ぎにノルドシュライフェ(北コース)のストレート手前の最終コーナーでカルロ・ヴァンダム選手がリアをスライドさせてウォールにヒット。

 自走でピットに戻りエンジン交換やハンドルまわり、ダンパー交換など大掛かりな修復に4時間半を費やすも、11時過ぎに総合101位でコースに復帰。

エンジン交換を行なうメカニックたち

 その後は順調に走行し、SP4Tクラスで優勝したSmyrlis Racingの718号車「ポルシェ718 Cayman(Type 982)」に対して2周差近くまで詰め寄る速さを見せ、総合77位、クラス2位で完走を果たした。

STI総監督 辰己英治氏のコメント

 パーツが外れたことと、エキゾーストが壊れて排気側のターボが効かなくなってしまった。新しいボディ、エンジン、トランスミッションなどの本機が壊れたのではなく、それらの「付加物的」なもののトラブルでしたが、コースに復帰したラップにヴァンダム選手がグランプリコースだけ走って「大丈夫だ」と判断したので、最後の5時間をゴールまで走りきれたのはチームとしてよかった。

 昨年は壊れた原因がはっきりしなかったので、ドライバーに「走ってくれ」と言えなかったのですが、今年は問題の原因がほぼ明らかに分かっていたので「大丈夫だ」と判断できた。

STI総監督 辰己英治氏

 4月に参戦したNLSレース(NLSニュルブルクリンク耐久シリーズ第3戦)の結果がよかったので、それから今回の24時間耐久に向けて、いろいろなものを新品にしたのですが、それらの私の最終的なチェックミスだった。

 4時間半ロスしたので力が抜けた部分もあったのですが、昨年もリタイアしているので、全国のスバル販売店から選抜されて来ているメカニックたちに、なんとかしてゴールの感動を味わってほしかった。作業する彼らに「休もう」と声をかけたのですが、作業を止めなかった姿を見て「絶対にリタイアできないな。何としても完走しないと」という気が湧きましたね。

 エンジン交換だけなら2時間くらいと意外に早く交換できたけれど、シャシーの問題があったので、結果4時間以上かかってしまった。できれば上位で完走して帰るのが大きな目標だったけれど、メカニックに大変な経験をさせてしまい申し訳なかったという気持ち。

 しかし、メカニックたち自ら4時間半を積極的に動きまわる、彼らにとっては「レースやっている感」はあったのではないかとも思っています。

メカニックたちとゴールの感動を分かち合う辰己英治総監督