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ル・マンで欧州初公開となった新型ミライ スポーツコンセプト ACOフィヨン会長も興味を示す

新型ミライ スポーツコンセプトとともに記念写真。右から、ACO ピエール・フィヨン会長、TOYOTA GAZOO Racing モータースポーツ技術室室長 加地雅哉氏、FIA耐久委員会 委員長 リシャール・ミル氏

富士24時間で世界初公開されたクルマが、すぐにル・マンへ

 スーパー耐久の富士24時間で世界初公開されたクラウン セダンに負けない人気を集めていたのが、同じく世界初公開されたFCEV(燃料電池車)新型ミライ スポーツコンセプト。スポーツコンセプトは新型ミライをスポーツ方向にチューニングしたもので、市場の反響を見つつ市販化への可能性を探っているクルマになる。

 マットブラックのボディカラーや各種のスポーツパーツの装着に、多くの人が、「かっこいい」SNSでポジティブコメント。そのコメントが関係者に届いたのか、世界初公開となった新型ミライ スポーツコンセプトは、水素車両の集まるル・マン24時間のHYDROGEN VILLAGE(以下、水素村)へ向かうことになった。

TGR 加地雅哉氏が、ACO フィヨン会長やFIA ミル氏を迎える
トヨタのミステリーカーの前で記念写真。ACO会見後の9日にアンベールされる予定

 トヨタ関係者によると、本格的に新型ミライ スポーツコンセプトの移動が決まったのが富士24時間のゴール日となった日曜日。そこから空輸を手配し、いろいろあって無事にフランスに到着し、欧州初公開車としてル・マンでお披露目されることになった。

 この水素村は6月7日16時(現地時間)に正式オープンとなり、ル・マン24時間レースを主催するACO(Automobile Club de l'Ouest、フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長、FIA耐久委員会 委員長 リシャール・ミル氏らが訪れた。フィヨン会長は、富士24時間で2026年からの水素クラスの創設を発表するなど、水素によるレーシング活動に積極的で、この水素村もその一環となる。水素村を訪れたフィヨン会長らは、FCEVレーシングカーを用意した水素自動車メーカー関係者と記念写真を撮っていた。

新型ミライ スポーツコンセプトは、新型クラウン セダンがFCEVでデビューすることになり、思い切りスポーツ方向に振れるようになったという
特別なエアロなどを装備する

フィヨン会長も強く興味を示した新型ミライ スポーツコンセプト

新型ミライ スポーツコンセプトをのぞき込むフィヨン会長

 中央のレーシングカーエリアでの撮影を終えたフィヨン会長は、新型ミライ スポーツコンセプトが展示してあるトヨタの水素ブースへ真っ先へと移動。実はフィヨン会長は、新型ミライを個人的に所有しており、新型ミライ スポーツコンセプトがあれこれ気になる様子。

 新型ミライ スポーツコンセプトを案内するTOYOTA GAZOO Racing モータースポーツ技術室室長 加地雅哉氏に、積極的に質問を投げかけていた。

 そのほかフィヨン会長が気にしていたのが、トヨタが展示していた水電解装置。これはFCEVに用いられているFC(燃料電池)スタックが、水素から発電を行なうのに対して、水から水素を作る装置。トヨタはFCスタックを自社で量産するメーカーだが、FCスタックと同じモジュールの触媒を白金触媒からイリジウム触媒に変更することで水電解モジュールを作り上げた。つまり、FCスタックとほとんど同じ部品で、水電解モジュールを作っており、FCスタック、水電解スタックのコストダウンに貢献することになる。

トヨタの水素関連施設を説明する加地氏
水電解システムについて質問するフィヨン会長

 FCスタックと水電解スタックがあることで、水から電気を使って水素へ、水素から電気を取り出して水へということが容易にできるようになる。つまり、軽い水素を電池代わりに使えるようになるわけだ。もちろんその前提として電気が豊富にあることが必要だが、バッテリに化学的にためるよりは、変換ロスの小さい、劣化の小さい環境を作れる。

 そのような基礎技術に興味を持ちつつ、フィヨン会長は水素村のほかの展示を見学に回って行った。

トヨタが欧州に初展示した水電解スタック。左がFC、右が水電解
こちらがFCモジュールの1枚
こちらが水電解。ほとんど同じモジュールであることが分かる