ル・マン24時間100周年、突如トヨタに加わったBoPの37kg増を文書で確認する

WEC COMMITTEE WEC_2023_D0049_Hypercar_BOP

https://www.fia.com/sites/default/files/wec_2023_d0049_hypercar_bop_31052023.pdf

　このドキュメントを読めば分かるが、最低車両重要がトヨタは1043kgから1080kgへ37kg増加。一部36kgという報道もあったが、文書どおり37kgが正しい値になる、

　ただ、やはり文書を読めば分かるが、フェラーリも1040kgから24kg増加して1064kgへとBoPが行なわれている。キャディラックは1035kgから11kg増となり1046kgへ。プジョーはまったく増えず1042kgで、ポルシェは3kg増の1048kg。そのため、このBoPは当初ポルシェに有利ではと言われた経緯がある。

　このBoPがどのようなことによって算出されたかというと、これまでのレース結果になるのだろう。ル・マンが終わるまでは変更しないというルールに沿って、一所懸命クルマの性能を向上させたら、直前でルールそのものがひっくり返ったことになる。

　計算では、1.2秒程度遅くなるとFIA WEC COMMITTEEは算出したが、結果的にトヨタはフェラーリに予選で1.9秒程度の差があることになり、FIAの性能調整能力にも疑問符が付くことになった。

　また、設計時に想定していない重量がクルマに加われば、クルマにどんなことが起こるか分からない。タイヤには余分な負荷が加わり、クルマが壊れるリスクが増大する。24時間のレースを通して考えると、1周1.2秒以上のダメージがあるのは間違いない。

　100周年という特別な年であるため、ル・マンイベントは6月1日から始まったが、その前日に出されたため、各チームは対応に追われたことになる。

　もちろんTOYOTA GAZOO Racingチームはこの処置に申し入れを行なったものの、レースまでに当初のルールどおりに戻ることはなかった。トヨタはそんな厳しい状況の中、決勝レースを戦っている。

　さらにこの突然のBoP変更の問題点は、トヨタ以外のチームについても、あまりよい影響がないことだ。今回のBoPで増えたチーム、ちょこっと増えたチーム、変わらなかったチームとあるが、そのチームのル・マンへ向けての努力がよく分からなくなり、100周年のル・マンの意味も「BoPがあったル・マン」という印象になってしまう。勝ったチームも負けたチームも、残念な気持ちが残ってしまう。それは、ル・マンにとっても、望ましくないことだろう。

　正直フェラーリチームの速さは、彼らが努力したことが分かるものだ。BoP以前にル・マン24時間をターゲットに開発してきたことが分かる。そのような努力が実質的に分からなくなるBoPは、本当に必要だったのだろうか。各チームに加わったBoPの数値を確認して、ル・マン24時間の観戦や応援をしていただきたい。