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日産、新型「スカイライン NISMO」発表会 NISMO 片桐社長や星野一義氏が魅力を語る
2023年8月8日 15:56
- 2023年8月8日 開催
日産自動車は8月8日、NISMOブランドの新型「スカイライン NISMO」発表会を神奈川県横浜市にある日産グローバル本社 NISSANホールで開催した。
スカイライン NISMOは「リーフ NISMO」「ノートオーラ NISMO」「GT-R NISMO」「フェアレディZ NISMO」に続くNISMOブランドモデル。価格は9月上旬に1000台限定で発売するスカイライン NISMOが788万400円~847万円、2024年夏に100台限定で発売予定の「スカイライン NISMO Limited」が947万9800円。車両の詳細については関連記事を参照していただきたい。
「スカイライン NISMOはほかに類を見ないグランドツーリングの集大成」と内田社長
発表会は日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏によるビデオスピーチによるあいさつでスタート。
内田氏は「日産のモータースポーツ活動を象徴するNISMOは、われわれがお届けするエキサイトメントの象徴です。そして、そのエンブレムをまとうNISMOロードカーシリーズは、数々のレースシーンで磨き上げられた究極のパフォーマンスを皆さんにご提供します。そして、日本を代表するスポーツセダンと言えば、やはりスカイラインだと思います。スカイラインが一気に伝説になったのは、1964年に行なわれた『第二回日本グランプリ』です。当時、世界を代表する最新鋭のレーシングカーであるポルシェに対し、『スカイライン GT』が互角に競い合い、そして抜き去った瞬間、観衆は総立ちになりました。このレースをきっかけに、スカイラインは『羊の皮を被った狼』と呼ばれるようになり、多くの人の心を魅了したのです」。
「モータースポーツ由来の究極のエキサイトメントを、日産を代表するスポーツモデルに導入してほしい。そういった熱烈なファンの皆さまの声を多く頂戴するなか、今年発表したGT-R NISMO、フェアレディZ NISMOに続き、本日、スカイライン NISMOを発表できることを大変うれしく思います。スカイライン GTの伝説を復活させ、爽快なパフォーマンスと洗練された快適さを兼ね備えた、ほかに類を見ないグランドツーリングの集大成、それがスカイライン NISMOです。日産はこれからも、究極のエキサイトメントをお届けすべく、挑戦を続けてまいります。待望の新作をどうぞお楽しみください」とコメントした。
開発コンセプトは「ザ スカイライン GT」
続いて日産モータースポーツ&カスタマイズ 代表取締役社長兼最高経営責任者 片桐隆夫氏が車両概要について説明。
片桐氏はNMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)誕生までの歴史や経緯、現在はロードカーシリーズでNISMOと「AUTECH」の両ブランドで展開していることなどを解説。新たにデビューさせるスカイライン NISMOは、AUTECHとNISMOのシナジーによる効果を存分に発揮させ、新生NMCの総力を挙げて開発したモデルであり、開発コンセプトは「ザ スカイライン GT」だと紹介した。
NISMOが磨き上げてきたグランドツーリングカーとしてのスカイラインの集大成であることを意味したこのコンセプトに基づく開発ポイントは「デザイン」「ダイナミックパフォーマンス」の2点であると述べ、エクステリアデザインでは空力性能を向上させながら、ひと目でNISMOロードカーだと分かるようなデザインを採用。ダイナミックパフォーマンスでは、GTカーとしてユーザーが気持ちよく、快適に、安心してドライビングが楽しめるよう開発しているという。
最後に片桐氏は「日産が90周年を迎える今年、そして新生NMCが初めて世に送り出すNISMOロードカーとして、今日、スカイライン NISMOをご紹介することができ、私自身も日産ファンとして、そしてスカイラインファンとして本当にうれしく思います。スカイライン NISMOに込められた伝統と情熱を、どうぞご体感ください」とコメントして締めくくった。
星野一義氏がスカイライン NISMOアンバサダーに就任
発表会の後半には、スカイライン NISMOの魅力について語るトークセッションを実施。ゲストとしてスカイライン NISMOの開発を担当した日産モータースポーツ&カスタマイズ チーフ・ビークル・エンジニア 長谷川聡氏と、スカイラインのレースマシンでも数多くの伝説を残してきた星野一義氏の2人が登壇した。
まず星野氏は、自身とスカイラインの関係について語り、18歳になって普通免許を手に入れてから、すでに羊の皮を被った狼と呼ばれるようになっていたスカイライン GTをカタログを見ることもなく、値引き交渉もせずに手に入れたというエピソードを紹介。「これなしにオレの人生はないと当時思った」と語り、直列6気筒エンジンのサウンドが素晴らしかったと当時をふり返った。
また、スカイラインベースのレースマシンで印象に残っている1台として、星野氏は全日本ツーリングカー選手権に参戦していたR32型スカイライン GT-RをベースとするグループA車両を挙げた。
当時は先輩である長谷見昌弘氏と4WD車であることを「ラリーマシンじゃあるまいし」と少しバカにしたように話題にしていたものの、実際に乗ってみると600馬力近く出ていたというエンジンパワーを4輪で路面に伝えることで「気持ちわるいぐらい速かった」と説明。これが新しい4WDのスカイラインという技術で、日産の技術屋さんはすごい頭をしているなとびっくりしたと語り、とくにウェットレースでタイヤのグリップ力を生かした高い戦闘力を発揮して4WD技術の素晴らしさを見せつけてくれたとアピールした。
また、本題であるスカイライン NISMOに試乗した印象として、星野氏は「この上にはGT-R NISMOもあって、でもこれはGTなんで、大人の乗り心地。例えばサーキットだけじゃなく、公道の環状8号も箱根ターンパイクも走るわけ。路面がわるいところもちゃんと吸収しながら走る大人のセッティングですよね。だから、僕は個人的に一番好きですね」。
「長谷川さんにゴマ擦るわけじゃないけど、GTのレベルとして一番いいあたりを突いている。そのへんの強弱ですごくバランスがとれていて、ステアリングを右に切ったら右に曲がるクルマが一番いいわけですが、右に切ったときに慣性が働いていくところでもリアタイヤが落ち着いているわけですよ。リアがスライドしたのでは普通の人は怖くなっちゃうから、その辺のレベルでもすごくよく考えられたセッティングで、パワーステアリングもただ軽いだけじゃいけない。タイヤのグリップを感じて、これ以上いったら滑るんだよなってステアリングから頭に伝わってくる。そういった慣性の伝わり方がバランスがよく取れているわけです」と語り、「僕はお世辞抜きでこれ(スカイライン NISMO)を薦めますよ」と太鼓判を押した。
長谷川氏はスカイライン NISMOの開発について「スカイラインは元からとてもよくできているクルマなので、これをNISMOでチューニングしていくと、やはりやんちゃなクルマというよりも大人のセダンになっていく結果になりました」と説明。グランドツーリングカーとして、速さや室内の広さ、居住性や快適性の高さといったさまざまな要素を、何も諦めることなくよいクルマに仕上げることを考えたという。
また、開発では昨今で主流となっているシミュレーションを作用する手法ではなく、北海道にある日産の陸別試験場にクルマを持ち込み、テストドライバーに走り込んでもらって評価を聞き、感覚から出た言葉を開発担当が理解して修正を行なう取り組みを実施。これはSUPER GTでのマシン開発と同じ方法で、愚直な作業の繰り返しでセッティングを煮詰めていったという。
このほかトークセッションの最後には、星野氏にスカイライン NISMOのアンバサダーを務めてもらい、このためシリアルナンバー 0001を刻印したスカイライン NISMOをプレゼントすることも発表。片桐氏から星野氏にマスコットキーが贈呈された。
マスコットキーを受け取った星野氏は「昭和45年に日産に入ってもう56、57年ですが、日産一筋で、日産がモータースポーツで僕を作ってくれました。スカイラインとも18年は一緒に来ています。片桐社長からスカイライン NISMOをプレゼントしたいと言われたときは本当に日産にいてよかったと。これからもSUPER GT GT500クラスのGT-Rのレースでもチャンピオンを獲るためにがんばりたいと思いますし、ずっと日産でやっていこうと思っています」。
「ちょっとサーキットで豊田(前)社長と一緒のときに『トヨタの星野です』なんてジョークを言ったら、豊田さんから『顔に日産って書いてある』なんて言われました。それぐらい日産の人間として、これからの人生もスカイラインと、日産とということで、片桐社長の指示も受けながらGT500でチャンピオンを獲るためにがんばっていきたいと思います」。
「本当にありがとうございます。これ(マスコットキー)は僕の宝で、金メダルをもらったような気分です。会社のショールームにでも飾って、また、富士スピードウェイに行くときはスカイライン NISMOの運動性能を味わいながらサーキットに向かって、今年のGT500でチャンピオン目指してがんばりたいと思います」と感想を述べた。