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メルセデス・ベンツ新型「EQE SUV」発表会 14年ぶりに来日したオラ・ケレニウス取締役会長が今後の戦略と展望を語る

2023年8月25日 実施

新型「EQE SUV」の日本発表に合わせて14年ぶりに来日したメルセデス・ベンツグループ 取締役会長 オラ・ケレニウス氏

 メルセデス・ベンツ日本は8月25日、バッテリEV(電気自動車)を展開するメルセデスEQシリーズから、EV専用プラットフォームを用いたラグジュアリーSUVモデル「EQE SUV」の発表会を実施した。日本には2モデルが導入され、「EQE 350 4MATIC SUV ローンチエディション」は価格1369万7000円、「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV ローンチエディション」は価格1707万円。

 発表会ではメルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏が、2019年7月に初のBEV(バッテリ電気自動車)の「EQC」を導入してから丸4年の月日がたったのと同時に、「電気自動車に関するニュースを見ない日はありませんでした」とあいさつ。

メルセデス・ベンツ日本株式会社 代表取締役社長兼CEO 上野金太郎氏

 続けて、都市型SUVの「EQA」、多様なライフスタイルにフィットにする「EQB」、オールマイティな「EQC」、ビジネスセダン「EQE」、フラグシップモデルの「EQS」、7人乗りのラグジュアリーSUV「EQS SUV」と、6車種のBEVモデルを立て続けに導入し、さらに昨年12月には横浜にメルセデス・ベンツとして世界初のEV専売店をオープンしたほか、ここ数年でユーザーのEVに対する認識も大きく変化したと実感していると紹介。

 また、メルセデス・ベンツは「持続可能なクルマ社会の実現」という一貫した思いを持ち、この思いをEVという回答で実現すると説明。そして今回の「EQE SUV」の日本発表に合わせて、14年ぶりにドイツ本社から取締役会長のオラ・ケレニウス氏が来日し、直接メルセデス・ベンツの今後の戦略について説明する場を設けたとあいさつを締めくくった。

「EQE 350 4MATIC SUV ローンチエディション」

日本市場にとって重要なモデルという「EQE SUV」

メルセデス・ベンツグループ 取締役会長 オラ・ケレニウス氏

 ケレニウス会長は「EQE SUVがいかに日本の市場にとって、そして私たちにとって重要かということを強く強調したいと思っています。また、上野社長をはじめとしたチーム全員が長年にわたって日本に強力な基盤を作ってくれました。メルセデス・ベンツでは6つの柱がありますが、2~3年前に戦略を少し変更しました。自動車業界の変革を遂げるために“ゼロエミッションドライビング”という1つのピースからスタートし、BEVは今でも成長し続けていて、今後10年間でさらに成長すると見込んでいます。同時に搭載できるソフトウエアの容量やAIなど車両のデジタル化も加速すると理解しています」。

「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV ローンチエディション」

 続けて「またテクノロジーの創始者としてテクノロジーやR&Dなどに高額投資を行なっていて、企業として将来に向けて進化しています。これからの10年間はより脱炭素に向けて動くということが私たちのビジネスの中心になっていきます。長期的に考えたときに、これが一番ベストな事業的意思決定になるわけです。さらに2050年に向け、バリューチェーン全体のカーボンニュートラルを10年前倒しして2039年までに実現したいと思っています」と、カーボンニュートラル実現に向けた大きな目標を語った。

メルセデス・ベンツの戦略
カーボンニュートラルに向けた道のり

 そのほかにも、「SUVは過去25年~30年で強力なセグメントになりましたが、われわれはセダンとSUVを融合させた魅力的な形で提供しています。私も最近EQE SUVを運転しましたが、とても美しいパッケージで、電費も非常にいいです。また、販売では最初に日本で実践したことをグローバルに展開することが多くなっています。特にEQシリーズに関してはすでに世界初のEV専売店がありますし、2030年にはほとんどがEVになっていると思います。同時に充電インフラにも投資を行ない、日本や世界のお客さま向けに対してユーザーが欲しがっている利便性を提供したいと思っています。さらに今後はエネルギーマネジメントが重要になってきます。EVのバッテリは蓄電池としても利用できるので、このEQE SUVは日本でのV2H(Vehicle to Home)を可能とします。そしてBEVが普及すれば、エネルギー源はさまざまです。太陽や風といった恵みのエネルギー源が増え、現状の石油のような中央集権的な状態も分散することになるでしょう。」

充電インフラ構築の目標値
世界に先駆けて日本にV2HとV2L(Vehicle to Load)が導入される

 さらにケレニウス会長は「よくニッケルやマンガンなどを使用しているバッテリが古くなったらどうするのか?という質問を受けますが、バッテリの材料はとても貴重なうえ、環境的にもコスト的にも、いかにリサイクルするのかが重要になります。今後はさまざまなテクノロジーを使い、100%リサイクルを目指しますが、まずは2023年末にドイツのクッペンハイムにリサイクル目標96%というリチウムイオンバッテリ工場が完成する予定です」とサステナブルに関する活動も積極的に行なっていることを紹介した。

 最後に「自動車業界で約30年働いているが、これほど開発の領域が広く、変化のスピードが速かった時期はありません。すべてがすごいスピードで進んでいます。約2週間後にドイツのミュンヘンでIAA MOBILITY 2023が行なわれますが(9月5日~10日)、そこでメルセデス・ベンツは、注力している次世代に関する発表をしますので、ぜひ注目していただきたい」と締めくくった。

2023年末に完成予定のドイツの新しいリチウムイオンバッテリ工場

メルセデス・ベンツとしては乗用車はBEVが最適というのが現状の考え

記者の質問に答えるメルセデス・ベンツグループ取締役会長 オラ・ケレニウス氏

 質疑応答の中で、日本は充電施設の設置が遅れている、不足しているのでは? という質問に対してケレニウス会長は、「自分は遅れているとは思っていません。まだスタート地点というだけで、大事なのはここから加速させられるかどうか。そのためにはメルセデス・ベンツとしては投資も行なうが、課題は政策意思決定者がいかに決断するかです。東京や北京などでも政策意思決定者に会って話をしていくことになります。カーボンニュートラル実現、ゼロエミッションに向かうということだけはブレないです」と回答した。

 さらに、2025年に電動車比率50%という目標を少し後ろ倒しした理由や現状の課題については、「常に状況は変化するので確定事項としては言えないが、電動化比率50%というのはBEVだけでなくPHEVも含まれる。今後100km以上EV走行できるようなPHEVも追加していき、2025年~2026年あたりには電動車の販売比率50%を達成したいと考えているのは変わっていないです。時期は若干ズレることはありますが、戦略的な方向性は変わらないし、実現するためにはいろいろなことをしていきます」と述べた。またPHEVの追加については「あくまで100%BEV化に向けたマイルストーンであり、最終的には100%BEVにする」と補足した。

 そのほかにも、トヨタ自動車のようにカーボンニュートラル実現に向けて、水素やeフューエルなど、さまざまな手法を同時に推進している自動車メーカーがいる中で、自動車業界をリードするメルセデス・ベンツとしてはBEVだけに集約するのはなぜか? と聞かれたケレニウス会長は、「メルセデス・ベンツとしては、乗用車セグメントに限っては、現状はBEVが最適解であるととらえていて、グループのダイムラーは水素を使う燃料電池トラックの開発を推進しているように決してEV1本化で動いているわけではないです」と説明。

 最後に、躍進している中国の自動車メーカーについて脅威を感じているかを聞かれたケレニウス会長は、「もちろん注視はしているが、既存のライバルメーカーもいる。また、他メーカーが何をするかよりも、重要なのはメルセデス・ベンツというブランドが何をするかであり、自分たちのお客さまが何を望んでいるかを知ることが重要だと考えています。中国市場がBEV激戦区だとは理解していますが、メルセデス・ベンツから価格戦争をしかけることはないですし、これまで培ってきた歴史とブランドのあるプレミアムセグメントで今後もリードしていくだけです」と回答した。