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トヨタ、開発中の新型ミライスポーツが富士を走行 サーキットサファリでACOフィヨン会長がドライブ

新型ミライスポーツで富士スピードウェイを走行するACO ピエール・フィヨン会長

 WEC(世界耐久選手権)富士6時間レースが9月8日~10日の3日間にわたって富士スピードウェイで開催されている。9月9日午後には予選が行なわれ、

 それに先立ち、午前中にはSUPER GTなどでおなじみの「サーキットサファリ」がWECでも開催された。サーキットサファリは、観客を乗せた観光バスがコースを走り、その横をレーシングカーが駆け抜けていくという、乗客にとってはドキドキ、ワクワクのアクティビティになる。

WEC富士6時間で実施されたサーキットサファリ

 サーキットサファリのバス隊列の後には、トヨタ自動車が開発中のFCEV「新型ミライスポーツ」がデモ走行し、そのドライバーをル・マン24時間レースやWECのプロモーターであるACOのピエール・フィヨン会長が努めた。

世界戦でも行なわれるようになったサーキットサファリ

観光バスのすぐ横をレーシングカーが駆け抜けていく

 サーキットサファリは、SUPER GTのレースでは恒例のイベントになっているイベント。サファリと呼ばれる理由は、アフリカ大陸などで野生動物の鑑賞や狩猟をすることを英語で「Safari」と言うのだが、それと同様にクルマに乗って、野生動物ならぬレーシングカーを鑑賞するという意味で「サファリ」という名称が採用されている。ちなみに、富士スピードウェイの近くにはクルマに乗って野生動物を見て回る「富士サファリパーク」があるが、直接の関係はなく、あくまでサファリという一般用語が関連しているだけになる。

 元々、サーキットサファリはSUPER GTやスーパー耐久などの国内レースで、ファン向けの人気イベントとして行なわれてきた経緯がある。そうした中で、2012年にWECがシリーズとして復活し、富士6時間レースも毎年行われるようなり、富士スピードウェイがWEC側に提案する形で2017年から富士6時間でもサーキットサファリが開催されることになった。つまり、国内レースイベントのアクティビティが、世界戦に採用されたことになる。

 実際やってみると、来場する日本のファンはもちろんのこと、来日するWECのスタッフやメディアにも好評で、毎年継続して行なわれる人気のアクティビティに成長している。

車内から見ると右側席が絶好のビューポイントとなるため、1周目の終わりに左右の席を入れ替える。SUPER GTのサーキットサファリでは、バスが右側と左側の両方を走って、乗客の座る位置を入れ替えることはないので、やり方がちょっと違う

 今回筆者もメディア用の観光バスに乗り、サーキットサファリに参加してみた。サーキットサファリは、乗客がバスに乗り2周回する。バスは常時左側に寄って走り、そのバスの右側をレーシングカーが駆け抜けていく。つまり、バスの右側に座ると非常にエキサイティングなシーンを体感できる。では左側に座るとハズレなのかというと、そのようなことはなく、1周目の終わりにメインストレートにバスは停車し、乗客の着座位置の左右を入れ替える形になる。

自分の真横をものすごいスピードのハイパーカーなどが駆け抜けていくのは「プライスレス」な体験

 筆者は1周目に右側に座り、レーシングカーが通過するのを体感したが、バスがコースに出てレーシングカーが近づいてくると、何より驚かされるのは音の大きさだ。サーキットで驚かされることの1つは、レーシングカーの排気音だと思う。コースサイドで聞いていてもかなりの大音量なのだから、自分の真横をすり抜けて行く際は、さらに大きな音にびっくりさせられる。

ハイパーカー、LMP2、GTEなど各種車両を見ることができる。バスから見ていると手が届きそうだ

 もう1つはレーシングカーのスピードだ。バスもそれなりのスピードで走っているが、レーシングカーはそれ以上。乗客を乗せたバスが走っている中をレーシングカーが駆け抜けていくので、レーシングカーは通常よりもスピードを落としているのだが、それでも「はやっ」というコメントが自然に漏れてしまう。やんちゃなドライバーだと、バスに近づいてくれるので、スピード感にドキっとさせられるような体験は、ほかではできないと言える。

 なお、このサーキットサファリは、WEC富士6時間レースの場合は土曜日(予選日)の午前中だけで、日曜日はない。そのため次の開催は来年ということになる。2023年のチケット価格は2人で8800円(もちろんそれ以外に入場券などが必要になる)になっており、1人4400円という計算になる。

ACOフィヨン会長がドライブする「新型ミライスポーツ」

サーキットを走る新型ミライスポーツ

 そうしたサーキットサファリのバスの後ろには、見慣れぬ車両が走っていた。それが別記事で紹介している、トヨタ自動車が開発中のFCEV「新型ミライスポーツ」だ。

 新型ミライスポーツは、FCEVであるミライをベースにスポーツバージョンとして開発されている車両になる。現行のミライと比較すると、ブレーキやタイヤサイズなどが強化されている。現行のミライは黒いブレーキキャリパーが採用されているが、このミライスポーツは赤く塗られている。

 タイヤも、245/40 R21のミシュラン パイロットスポーツが装着されており、現行のミライからインチアップされている。ほかにもフロントまわりの形状変更やリアスポイラーの有無など多くの点で現行ミライとは異なっていることが確認できる。

新型ミライスポーツをドライブするACO ピール・フィヨン会長

 そうした新型ミライスポーツをドライブしていたのはACO会長のピエール・フィヨン氏。フィヨン氏はACO自身のFCEVの取り組みであるMissionH24を強力に推進しているなど、水素を利用したレーシングカーの推進者の一人としても知られており、今回来日したことに合わせて、この新型ミライスポーツのドライブが実現した形になる。

車両から降りてきて、TOYOTA GAZOO Racingの関係者と握手するフィヨン氏
トヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company MS製品企画ZS主査 清水竜太郎氏(左)と談笑するフィヨン氏
ACOのアドバイザーであるウォルフガング・ウルリッヒ氏(左)も加わって記念撮影

 サーキットサファリ終了後に新型ミライスポーツをパドックに停車したフィヨン氏は、新型ミライスポーツの開発を担当するトヨタ自動車 Mid-size Vehicle Company MS製品企画ZS主査 清水竜太郎氏としばし談義して、その感想を伝えていた。また、現場には、かつてアウディ・モータースポーツの代表を務めていて、今はACOのアドバイザーであるウォルフガング・ウルリッヒ氏も同席しており、ウルリッヒ氏はタイヤを触って温度を確認するなど、技術面にも関心を抱いている様子だった。

 フィヨン会長に新型ミライスポーツの印象を聞いたところ、「普段ミライをフランスで乗っているが、ずっとパワーもあって軽い。富士スピードウェイではサーキットを走らせて楽しかった」と答えてくれた。新型ミライスポーツでは、いろいろなことが行なわれているのかもしれない。