ニュース

エアレースXの開催まであとわずか! 室屋義秀選手がその魅力と意気込みを語る

エアレースXに挑む室屋義秀選手

エアレースXに挑む室屋義秀選手

 エアレースという競技に熱中し、その楽しさと素晴らしさに取りつかれたエアレースパイロットである室屋義秀選手。彼が中心となり、雌伏の期間を経て、間もなく予選10月8日~13日、決勝トーナメント10月15日の日程で開催されるのが“AIR RACE X(エアレースX)”である。

 今回、新しいレースへの参戦を控えた室屋選手にインタビュー。エアレースXの魅力やLEXUS PATHFINDER AIR RACING TEAMのコンディション、大会への意気込みを聞いた。

室屋選手はLEXUS PATHFINDER AIR RACING TEAMとしてエアレースXへ挑戦。写真はWEC FUJI6Hで室屋選手のデモフライトを見つめるトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 佐藤恒治氏

レクサス技術陣とともに機体を開発と室屋選手

──改めて、エアレースX の魅力を教えてください。

室屋義秀選手:エアレースXは、2019年まで開催されていたRedBull AIR RACEを再開しようという想いで模索を始め、構想を練る中で変化をしてきた新時代のエアレースです。レースそのものの内容や競技に使用するエアレーサー(航空機)はほぼ同じものですが、大きく変わったのは、参加選手とエアレーサーが1か所に集まって開催するのではないという点ですね。参加選手が世界各地でフライトを行い、そのフライトデータでタイムを競います。最終的にはそのデータを統合して、AR(拡張現実)を用いて渋谷の街の中をエアレーサーが駆け巡って競い合い、それを皆さんに楽しんでもらおうというものです。

 従来のエアレースの場合、世界の1か所に集まるということが参加チームのスケジュールや資金の面で最大の問題となっていましたが、エアレースX ではその負担を輸送やロジスティクスも含めて大きく軽減できます。いわばサステナブルな、持続可能なエアレースと言えますね。ただ、それだけでは観客の皆さんは見ていても面白くありません。そこで従来と同じような動画コンテンツとして仕上げるのに加え、ARを導入するわけです。今までより観戦スタイルが増えますし、ARではエアレースの臨場感も楽しんでいただけます。このようなリアルとデジタルの融合は、モータースポーツの世界ではまだ存在しません。それをわれわれが、世界に先駆けてチャレンジします。

──渋谷での観戦にはARグラスが必要なのですか?

室屋義秀選手:ARグラスがベストですが、お手持ちのスマホでもOKです。専用アプリを起ち上げてスマホを渋谷の街にかざすと、そこに飛行機が飛んでいるように見えます。YouTubeでの無料配信も行います。渋谷に来られない方はYouTubeで、また渋谷ではパブリックビューイング会場で観戦しつつ、目の前に飛行機が来るタイミングでスマホをかざしていただくと臨場感と迫力のあるレースシーンを見ていただけます。あと2~3年して、ARグラスなどのデバイスの機能が追い付いてきたときには、爆発的にこういう楽しみ方が増えてくるのではないかと思っています。

 また、飛行機は世界各地で飛びますので、世界のより多くのファンの方にエアレーサーの実機を見ていただけますし、反対に渋谷に来ているエアレースになじみのない人たちにもレースシーンを見てもらえます。このように今までとは違う新しい形で展開できるのが面白いですね。でも、飛行機のレースとして非常にシビアなのはこれまでと変わりませんし、最終的にわれわれが追い求めるのはやはりレースでの勝利にあります。

──レクサスの技術力は機体にどう反映されていますか?

室屋義秀選手:レクサスとわれわれパスファインダーは、LEXUS PATHFINDER AIR RACING TEAMとしてパートナーシップを結んでいます。これは単純なスポンサー契約ではなく、技術や運営も含む強力な関係です。特にレクサスの技術部門とは深く結びついていて、エンジニアリングのさまざまな面で技術協力をしています。

 例えば、空力ですね。レクサスの空力専門のエンジニアが専属で取り組んでいて、分かりやすいところで言えばウィングレット(翼端にある整流用のフィン)の開発や改修なども手掛けています。また、コクピットの設計も人間工学に基づいたもの。僕は生身でエアレーサーに乗り込んでいるわけですが、どうすれば操縦技術や腕の筋力が最大限に引き出せるのかという研究を行っています。乗機のシートやスティック(操縦桿)などもこの成果を反映し作ってもらったもので、ほかにも現在進行形で新しい開発に取り組んでいます。

 自動車ブランドとしてのレクサスとの関係性が深いところで言えば、エンジン関係が挙げられます。エンジンそのものはレギュレーションによりあまりいじってはいけないのですが、細部のセッティングには手を入れる余地があり、そのためにはどこまでリアルタイムでエンジンの状態を計測できるかが重要になってきます。これなどはレクサスの技術力の面目躍如といったところでしょう。

 こうした要素技術や、カーボンファイバーなどの素材技術など、かなりの分野でレクサスの技術力が投入されていて、関わる人員も80人~100人くらいに及びます。もしかしたら(既存機の改修ではなく)イチから飛行機を作れるんじゃないかというくらいの勢いと陣容です(笑)。クルマとエアレーサーでは、スピードレンジや空気抵抗の値が大きく離れてはいますが、基本的なセオリーや計算式は同じ。また、一方的にクルマの技術を受けるだけでなく、エアレーサーで新たに得られたデータや知見は今後のクルマにも生かされますので、技術が行ったり来たりしているわけです。

──最後に、エアレースX への意気込みを教えてください。

室屋義秀選手:本番まであと2週間ちょっとしかありませんが、AIR RACE に臨むパイロットとしての体調づくりを進めています。また、機体づくりも仕上げの段階に入っていますので、残り2週間はレースモードでギュッと集中してコンディションを仕上げていきたいと思います。4年ぶりのレースですので、力まず、適切に……そして勝ちに行こうと思います。

 ファンのみなさんには、久しぶりの、そして新しい AIR RACE を楽しんでいただきたいと思います。また、今回はクラウドファンディングという形で、私たちと AIR RACE の新しい価値を創造する仲間も募集しています。これは、AIR RACE をもう一歩前に進めるためのチャレンジ。私たちとともに、ワクワクする AIR RACE の未来を創造していきましょう!