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新型「クラウンスポーツ」発表会 「硬いだけがスポーツじゃない」と開発陣らが想いを語る

2023年10月6日 開催

新型「クラウンスポーツ」発表会

16代目は4種類のスタイルが投入される「クラウン」

 トヨタ自動車は10月6日、新型「クラウンスポーツ」の発表会を東京 六本木ヒルズで開催した。

 登壇したのは、FCEV(燃料電池車)のMIRAI(ミライ)や16代目クラウンの開発主査を務め、2023年10月からクラウン、センチュリー、ミライのチーフエンジニアに就任したばかりの清水竜太郎氏。2020年からクラウンのプロジェクトチーフデザイナー(PCD)として4種類のクラウンの企画、カラー、内外デザインを担当している宮崎満則氏、クラウンスポーツとクラウンエステート開発担当の本間裕二氏、クラウン4種類だけでなくさまざまなカラーデザイン企画を担当するカラーデザイナーの宍戸恵子氏の4人。

クラウンチーフエンジニア 清水竜太郎氏

 清水氏は「ライフスタイルやクルマを使った生活、クルマに求めてるものがいろいろ多様化してきて、そういったお客さま1人ひとりの価値観に何とか応えたいと思っていました。また、クラウンはクルマの形だったり駆動方式みたいな決まりは特になく、とにかくお客さまに求められているものを、常に革新と挑戦というキーワードとスピリットを基に開発してきました」とあいさつ。

新型クラウンスポーツ

 また、「クルマはやっぱり“カッコイイ”と思ってもらえることが大事だと思っていて、欲しいと思ってもらえるデザインやワクワクする走りを目指して開発してきました。ただし、クラウンの根底にあるフィロソフィー(哲学)である乗り心地や静粛性、安心して運転できるといった部分はすごく大事にしています。クロスオーバーはかなりチャレンジングな形でしたが、先代モデルよりも20代のユーザー数が2.5倍も増え、われわれとして手ごたえを実感しています」と続けた。

クラウンチーフデザイナー 宮崎満則氏

 クロスオーバーのデザインについて宮崎氏は「歴代クラウンは品格のあるたたずまいと日本人独特の美意識を大切にしてきました。また、革新と挑戦ということでは、4代目とゼロクラウンはかなりチャレンジしたモデルだと思います。実はこれまで世界に出しても通用するクラウンをずっと考えていましたが、クーペキャビンなのに乗り降りしやすい室内、しかも運転しやすいクルマって、実は今までなかったと思うんですよね。その新ジャンルのクルマをクラウンで一番最初に出せたと思っています」とコメント。

 クラウンクロスオーバーの発売から約1年2か月。今回のクラウンスポーツの発売を皮切りに、11月に「セダン」、年内に「エステート」と次々に投入されることもアナウンスされた。同時にトヨタ初の車種ブランド専門店「THE CROWN」が横浜都筑と福岡天神にオープンすることも発表された。

THE CROWNの模型

 新たな旗艦店「THE CROWN」に関して清水氏は「多様なライフスタイルに寄り添うブランド拠点として展開します。神奈川、福岡に続いて今後は、愛知、東京、千葉にも展開しようと思っています。この店舗の特徴はクラウンしか取り扱わないことと、単にクルマを売るだけでなくオーナー同士の交流や新たな体験のできるコミュニケーションの場にしていきたい」と語った。

 店舗のデザインも宮崎氏が監修していて、「日本人の心と現代的な新しい感覚を取り入れた“格子”と“軒”をキーワードとしているのですが、実は4種類のクラウンのフロントグリルにも格子と軒をさりげなく取り入れているので、ぜひ確認してみてください」と説明した。

クラウンスポーツ・エステート開発担当 本間裕二氏

 クラウンスポーツの開発に従事した本間氏は、「圧倒的なワイドスタンス感と、全長と全高を抑えた新しいボディサイズとともに、感性に響くエモーショナルなSUVを提供したいという思いを込めて開発しました。こだわったのは、美しいデザインと本当に楽しいと思える走りです。おそらく運転すれば分かっていただけると思いますが、ハンドルを切るとクルマがスッと向きを変えるような俊敏かつ軽快な動き、それでいながらタイヤが地面をしっかりとつかんでいる接地感と安心感。さらに路面からの入力をしっかりいなしながら走る上質な乗り心地にこだわりながらの作り込みました。『硬いだけがスポーツじゃない』と思っていただけるとうれしいです」と開発に込めた思いを述べた。

若い世代のデザイナーやエンジニアが奮起して完成させたというリアフェンダー

 クラウンスポーツのデザインについて宮崎氏は「今までにない変化をすることで、美しさを表現できると思い、建物や木々がクラウンスポーツにどう映ってどう変化するのか? その変化を思い描きながらデザインしたのですが、これを実現できたのは、実はクラウンに対してあまり先入観のない20代の若いデザイナーに任せたことなんです。これが今回の大きなチャレンジの結果だと思います。リアフェンダーに関しても生産技術の若いメンバーがどうしてもこのデザインを形にしたいと、上司にたてついてもやりたいという情熱があって実現しました」と開発秘話を紹介した。

クラウンカラーデザイナー 宍戸恵子氏

 今までにはないアシンメトリーの意匠を使ったというインテリアについて宍戸氏は、「助手席側と運転席側で配色を変えることで、コックピットの包まれ感、運転するわくわくやドキドキを感じてもらいたい。またボディカラーは、エモーショナルレッド、アッシュ、マスタードなど、他のクラウンシリーズにはない色で構成していて、面の映り込みや木々の映り込みの美しさを狙っています」と説明した。

日本の伝統と誇りであるクラウンが世界で羽ばたく秘訣とは?

第2部では4人のゲストが登壇してトークショーが繰り広げられた

 発表会の第2部は、モデルの秋元梢さん、俳優の大谷亮平さん、作家の川上未映子さん、京都西陣織の12代目である細尾真孝さんと、これから世界市場へと販売の場を広げるクラウンよりも先にグローバルで活躍している4名がゲストとして登壇。

モデルの秋元梢さん

 世界に出て日本人だと改めて感じるところを聞かれた秋元さんは、「黒髪だったり、白い肌は日本にいたら当たり前で気がつきにくいけれど、世界に出るとハッと気づかされることが多いですね。あとは日本人は時間に正確。海外の人は平気で何十分も遅れてくることが多い」と回答。また、ソウルに12年住んでいた経験を持つ大谷さんも、そこには賛同して「遅れてくるけれど、絶対に謝らないよね」と会場の笑いを誘った。また「基本的に日本人は真面目で細かいですね。でもそこはちゃんと評価されるし、信頼も得られると思います」ともコメントした。

俳優の大谷亮平さん

 また、多くの作品が翻訳され海外で読まれている作家の川上さんは、「創作では、固有名詞も文化も大事なことは掘り下げれば必ず伝わるという信念があるのですが、出版レベルだとやはり日本語はマイナー言語で英語が強い。で、20年ぐらい前までは翻訳してもらうスタンスが強かったんですが、今は海外の出版社にもちゃんと意見を伝えて自分が思っている作品にしてもらっています。だから読者からみんなが知りたい日本や東京じゃなくって、なんかリアルなものにタッチする瞬間があったっていう感想をたくさんもらったのがすごくうれしかったです」と自身の経験値から世界と日本の関係を語ってくれた。

作家の川上未映子さん

 それを聞いた宮崎氏は「自分が日本人っていうことも大事なんですけど、こういうのがウケるだろうとか、こうするとみんなが共感してくれるだろうとかではなく、自分の感性とか自分がこういうものを作りたいという思いのほうが大事で、要はそれを見る人がいればいいんじゃないかなと思います。クラウンも内外装まで、もう本当に細かいところまでしっかりと日本人が作り込んでいるので、その部分は世界中で分かっていただけるのかなと思っています」と揺るがない自信をのぞかせた。

トークショーで共感していた宮崎氏

 続いて元禄元年(1688年)より続く京都西陣織の老舗で、今も高い技術力が認められシャネルやディオールの店舗にも採用されている細尾12代目の細尾さんは、「やはり代をつなぐことって毎回チャレンジの連続だと思うんですね。同じことを変わらずにやってるように思えるかもしれませんが、実は常に既存の枠組みにとらわれず挑戦と革新を続けている。今回クラウンを見て、とても未来的で先にどんどん進もうとしている意思を感じました」と伝統をつなぐ難しさを語ってくれた。

細尾12代目細尾真孝さん

 その話を聞いた宮崎氏は「特に老舗だから革新していかなきゃいけないという部分はクラウンにもあって、守りに入ってしまうとどんどんお客さまが離れていくんじゃないかなと思います。ただそれって相当勇気が必要で、本当に自信がないとできないですよね」と老舗だからこその難しさで共感していた。

トークショーの様子