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ホンダ、新たな「自動運転モビリティサービス」記者会見 2026年に展開する自動運転タクシーは東京都心部からスタート

2023年10月19日 発表

記者会見後に握手を交わす本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏(左)とクルーズ創業者 兼 CEO カイル・ヴォクト氏

ホンダ・GM・クルーズと3社の協業プロジェクトが進化

 本田技研工業、GM(ゼネラルモーターズ・カンパニー)、クルーズの3社は10月19日、自動運転モビリティサービスの取り組みに関する記者会見を実施した。

 ホンダは2018年10月に、自動運転技術を活用する無人ライドシェアサービス用車両の開発でGMおよびクルーズとの協業を発表したほか、2020年1月にはステアリングのない自動運転車両「クルーズ・オリジン」を公開。そして2021年9月には自動運転車両「クルーズAV」を日本へ導入し、栃木県のテストコースにて光による検知と測距を利用した3次元の高精度地図を使った技術実証をスタート。2022年9月には栃木県宇都宮市芳賀町にて、公道での技術実証を開始するなど、自動運転モビリティサービスへの準備を着実に進めてきた。

本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏
テストコースを走る「クルーズAV(Autonomous Vehicle)」。ベース車両はGMの「Bolt(ボルト)」

 今回の日本国内における自動運転タクシーサービスを提供する合弁会社設立の発表は、これらの取り組みをさらに1歩前進させるもので、本田技研工業 取締役 代表執行役社長の三部敏宏氏は、「自動運転モビリティによって得られる価値は、私たちホンダがモビリティを通じて提供しようとしている、時間や空間といったさまざまな制約から人を解放することにもつながるものと考えています。また、新会社は2024年前半の設立を目指し、ホンダが過半数の出資を予定しています。自動運転タクシーサービスによる移動は、今までにない新たな選択肢となるはずです。移動をもっと自由に、移動時間そのものをより有意義な時間に変える今までにない移動体験を提供します」と展望を話した。

クルーズ創業者 兼 CEO カイル・ヴォクト氏
アメリカのテストコースを試走行する「クルーズ・オリジン」の日本仕様量産モデル試作車

 また、クルーズ創業者 兼 CEOのカイル・ヴォクト氏は、「すでにクルーズはアメリカのサンフランシスコで稼働していて、約800万マイルの自動運転の走行実績があります。また、ドライバー不足や体の不自由な人の交通手段に応えることは、アメリカでも日本でも同じく重要なことですし、ビジネス面でも人口密度の高い東京は最大潜在市場の1つだと思います。クルーズ・オリジンは2024年にテスト走行を開始して、2026年にはサービス提供を開始する予定ですので、私自身ワクワクしています」と期待を語った。

オンラインで参加したGM会長 兼 CEOのメアリー・バーラ氏

 オンラインで記者会見に参加したGM会長 兼 CEOのメアリー・バーラ氏によると、GMは衝突事故ゼロ、ゼロエミッション、渋滞ゼロの交通世界を作るために、EVや自動運転、最先端のソフトなどへ早い段階から投資を進めているという。また、ホンダとは2013年から、GMとクルーズは2016年から協業関係にあり、さまざまな分野で協力してきたと振り返る。

 さらに自動運転タクシーについては、有人タクシーと比べて衝突事故が54%も少ないデータがあるとメリットを紹介したほか、3社はすでに次の自動運転のフェーズに進むのに必要となる「経験」「スキル」「事業規模」をグローバルで持ち合わせていると説明した。

サービス開始は2026年を予定だが認証などの取得はこれから

クルーズ・オリジン

 記者会見では「クルーズ・オリジン」による自動運転タクシーサービスを日本国内で展開するための合弁会社を、2024年の前半に設立する計画であると発表し、2026年初頭からサービス開始を予定していると説明。3社の主な役割は、GMがリチウムイオン電池を含めたプラットフォームや車両の生産で、ホンダがトップハット(プラットフォームより上)の開発、クルーズが自動運転の領域という。

記者の質疑に回答する本田技研工業株式会社 執行役常務 コーポレート戦略本部長 小沢学氏

 すでにアメリカのサンフランシスコなどで約800万マイルという運行実績を踏まえ、日本でもっとも困難だと思われる東京都内を最初のサービス提供エリアとして設定しているというが、まだ具体的な場所は未定という。さらに「クルーズ・オリジン」は、ステアリングやペダルといった運転席がいっさいない車両のため、認可や認証など法の整備も追い付いていない状況のため、規制緩和なども含めて関係省庁や当局と連携しながら進めていくことになる。

クルーズ・オリジンの特徴

 レベル4の自動運転を実現する「クルーズ・オリジン」は、複数のセンサーやカメラを搭載して、周辺状況を認識しながら自車の行動制御を行なっているが、現状では信号など交通インフラとの協調は考えておらず、あくまで自車のみで制御する方針であるほか、クルーズの自動運転ソフトウェアを、ホンダの乗用車などにも搭載する計画は現状ではまだ考えていないという。

質疑に回答する本田技研工業株式会社 コーポレート戦略本部 コーポレート事業開発統括部 エグゼクティブチーフエンジニア 億康徳氏

 また、2021年時点では「クルーズ・オリジン」を活用した事業展開は、2020年2月に新設した子会社「ホンダモビリティソリューションズ」が担う予定だったが、車両を一緒に手掛けている3社で設立した会社のほうがいいと判断し、今回新たな会社を設立することにしたという。さらに自動運転タクシーの運用についても、新会社が単独で行なうのではなく、既存のタクシー業界とも連携しながら進めていく予定と明かした。また、2024年には、都内の自動運転タクシーサービス提供エリアを選定し、3次元の高精度地図の作成に取り掛かる予定とのことで、もし地図作成車両を見かけたら、そこがサービス提供エリアになる可能性が高いかもしれない。

高精度地図作成車両