ニュース

マツダ、カーボンニュートラル達成に向けた中間目標とロードマップをCN・資源循環戦略 木下浩志部長が解説

2023年12月14日 発表

サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成するには、商品(自動車)のWell to Wheelだけでなく、自動車を「つくる・はこぶ・つかう・もどす」といったライフサイクル全体でも達成することが必須となる

2050年のサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目指すマツダ

 マツダは12月14日、グローバルでのCO2排出量の約75%を占める国内の自社工場と事業所におけるカーボンニュートラル実現に向けた活動の中間目標として、2030年度にCO2排出量を2013年度比で69%削減することを目指すと発表。その発表に関する補足説明会をオンラインで行ない、CN(カーボンニュートラル)・資源循環戦略 部長 木下浩志氏が詳細を説明した。

 木下氏は、2021年2月にサプライチェーン全体を含めたカーボンニュートラルに挑戦という目標をマツダが掲げていることに触れ、「サプライチェーンでのカーボンニュートラル化は、商品(自動車)と事業の両面での取り組みが必須で、商品についてはマルチソリューションに基づく電動化技術の導入拡大とともに、バイオ燃料などの次世代燃料の活用研究を含めた『Well to Wheel』でのCO2排出量低減を進めます。また、事業領域では材料や部品車両の製造、物流や販売、リサイクルにいたるまでのライフサイクル全体でのカーボンニュートラルを2050年までに達成し、サステナブルな自動車産業を実現したいと考えています」と説明。

マツダが取り組むカーボンニュートラル達成に向けた3本柱「省エネ」「再エネ導入」「カーボンニュートラル燃料導入」

 続けて木下氏は、6月2日に発表した“2035年にグローバル自社工場でのカーボンニュートラルに挑戦する”という目標について、「現在、国内自社工場事業所におけるCO2排出量は、グローバルでのCO2排出量の75%を占める状況にあります。そこでまずマツダ国内自社工場と事業所でこの計画を具体化し、その取り組みをモデルに、マツダグループ、海外工場でのカーボンニュートラルを各地域で最適なアプローチを検討して実施していく考えです」と施策の方向性を説明。

 国内のカーボンニュートラル実現に向けたロードマップとしては、大きく「省エネ」「再エネ導入」「カーボンニュートラル燃料導入など」の3本柱を挙げ、2030年度のマツダ国内でのCO2排出量を2013年度比で69%削減、非化石電気使用率75%を目指すという。

 ちなみにこの数値は、日本が掲げている、2030年度に2013年度比46%削減というCO2排出量削減目標や、経済産業省の示すガイドラインである2030年度の全電力の56%を非化石化するという自動車産業非化石電力導入目標を上まわる水準となっている。

 なお、2022年時点での進捗状況としては、2013年のCO2排出量85万4000tに対し、64万8000tと、CO2排出削減量は24.1%。残り8年で45%ほどさらに削減する必要がある。

現在のグローバルで見たマツダのCO2排出量。国内で全体の75%を占めている
グローバルでの自社工場におけるカーボンニュートラル達成へのロードマップ

「省エネ」「再エネ導入」「カーボンニュートラル燃料導入」を実践

 省エネの取り組みについて木下氏は、「設備投資判断の基準にインターナルカーボンプライシングを導入することで、将来の炭素価格を考慮しつつ、CO2排出量の削減効果が高い省エネ施策への設備投資を加速させます。また、これまで実施している生産およびインフラ領域と間接部門も含めた全社領域での省エネの取り組み、設備の高効率化や技術革新についても引き続き進めます」と説明した。

省エネの取り組み内容

 再生可能エネルギーの導入については、「本社工場の宇品地区にあるMCMエネルギーサービスの発電設備の燃料を、現状の石炭からアンモニアの専焼に転換するとともに、地域の再エネ拡大を見据えて外部からの再エネ電源購入を、各拠点で地域との連携によるPPAや電力会社からの非化石電源由来の電気の購入により進めていきます。現在この発電設備の燃料を石炭からアンモニア専焼に転換を進めるべく、四国電力、太陽石油、大陽日酸、三菱商事、波方ターミナル、三菱商事クリーンエナジー、住友化学、さらに関係する自治体と協議会を設置し、波方ターミナルをアンモニアを取り扱うハブターミナルにすることを想定のうえ、スケジュールや法規制上の課題の整理、効率的なターミナルの活用や需要の拡大策などについて検討を行なっており、瀬戸内でのアンモニアサプライチェーンの構築を目指しております」と説明。

 マツダはこの波方ターミナルから内航船を使って、燃料となるアンモニアをマツダ本社工場まで輸送することを想定して検討を進めているとしている。

再エネ導入のロードマップ
波方ターミナルをアンモニアを取り扱うハブ基地にする想定と言う

 続いて外部からの再エネ電源購入について木下氏は、「今後のマツダの電力需要の変化にも対応できるよう、調達量の柔軟性を考慮し、まずコーポレートPPA(自然エネルギー電力を長期購入する契約)などの長期電力と、電力会社からの非化石電源由来電気の購入などの短期契約をミックスした調達を計画しています」と解説。

 マツダはすでに中国地方では「カーボンニュートラル推進協議会」など、地域連携の取り組みを開始していて、地域の産業との連携を優先しつつ、地域事業者との事業連携も視野に入れながら、国内の各拠点の地域特性に適した再エネ発電への投資を推進。また、再エネとPPAの拡大を進めるためにマツダは、地域での事業者間連携を3つのステップで発展させるとしていて、すでにステップ1として、東洋シート、長州産業、中国電力とオフサイトPPAを締結し、今季より再エネの調達を開始している。

各拠点に適した再エネを選択するとしている
再エネとPPA拡大、地域連携を発展させる想定ステップ

 カーボンニュートラル燃料などの導入については、社内輸送などで使用する車両の燃料を、軽油から次世代バイオ燃料などへの転換を加速。この領域でも地域連携活動を通じて、供給拠点構築などの課題解決を進めるため、今季より新たにカーボンニュートラル推進協議会へ設置された「カーボンニュートラル燃料推進部会」にも参画し、需給拡大に向けた議論を開始したとしている。

 さらに、軽油の使用に伴うCO2排出量を削減する施策としては、すでにマレーシアでバイオ燃料製造事業を計画しているユーグレナの事業をサポートするために、2023年1月にユーグレナが発行する社債の引き受けを実行。軽油の代替となる次世代バイオ燃料の利用促進も図るとした。

カーボンニュートラル燃料推進部会にも参画し、需給拡大へ向け議論を開始
次世代バイオ燃料の利用について

 最後に木下氏は、「都市ガスやLPガス、燃料油種など事業で使うエネルギーの中にはCO2削減が困難な熱源もある」と言い、燃料転換が困難とされるエネルギー源については、「2030年~35年時点での技術開発などの進捗を見ながら、そのトランジションとして、中国地域をはじめとする地域のCO2吸収を促進するクレジットを活用している」と報告した。

 さらに「マツダの目指す姿は、地域で生まれた環境価値を地域の企業が取得し、その資金がさらに新たな森林保全や再造林などへ再投資されることで、この地域内での資金と価値の循環が、拠点を構える中国地域におけるCO2吸収量を増やし、脱炭素化に貢献するとともに、地域の森林資源の保護、育成、産業発展や雇用維持にもつながる」と木下氏は説明。

 クレジットの調達は、まず中国エリア5県を最優先とし、地域内の森林保全、再造林などにより創出される“J-クレジット”の調達を進めるとしていて、今回その取り組み事例の第1弾として、三井物産と「おかやまの森整備公社 森林管理プロジェクト」が創出する「J-クレジット」の売買契約を締結したと紹介し、説明会を締めくくった。

中国エリア5県での「資金」と「価値」の循環を目指す