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JEITA、カーナビやドライブレコーダーなど2028年までの市場予測公表
2024年3月4日 17:21
- 2024年2月29日 発行
JEITA(電子情報技術産業協会) のAVC(Audio Visual & Communication)部会は2月29日、「AV&IT 機器世界需要動向 ~2028年までの世界需要展望~」を発行。2028年までのカーナビゲーションシステムやドライブレコーダーなどの市場動向について予測した。
同調査レポートは1991年に初版を発行してから今年で34回目となり、表紙が黒いことから業界内では「黒本」の愛称で呼ばれている。外部機関が策定した2028年までの需要予測をベースに、同協会AVC部会傘下の関係事業委員会やカーエレクトロニクス事業委員会などの参加会社を対象にしたアンケート調査およびヒアリング調査を実施。富士キメラ総研が調査協力をしており、同社による自動車産業の需要予測なども反映している。
カーナビゲーションシステム全体で2028年まで年平均成長率6.0%増で推移。4759万台に拡大と予想
調査によると、IVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)システムや、PND(Portable Navigation Device)を含むカーナビゲーションシステムは、2023年の世界出荷台数は前年比6.1%増の3560万台となり、2028年までは年平均成長率は6.0%増で推移し、4759万台にまで拡大。日本では2023年には前年比10.9%減の392万台と前年割れとなったが、2028年には435万台にまで拡大すると予測している。
加えて「カーナビゲーションシステム市場は、自動車販売台数の推移と密接に関連している。自動車市場の回復に伴い、市場は堅調に拡大している。2023年は自動車販売台数が伸長したことや、長らく続いてきた半導体不足が解消に向かったことで需要が増加した」という。
ナビゲーション機能や、LTEおよび5Gなどの通信機能を有するカーナビゲーションシステムであるIVIシステムは、全世界における2023年の出荷台数が前年比26.0%増の1417万台となり、2028年には2905万台と、倍増すると予測した。日本においては、2023年には前年比0.9%増の217万台となり、2028年は250万台と成長率は海外ほど高くない。
2023年は、自動車販売台数の回復やテレマティクスサービスの普及拡大、自動運転を見据えたADAS搭載車の増加、電動自動車の普及拡大が需要を下支えしたほか、今後も自動車メーカーが提供するコネクテッドサービスの拡大を中心にして需要は堅調に増加していくと見込んでいる。日本においては、IVIシステムの低価格化が進み、すでに中級車種まで普及していることから、他地域と比較すると普及率が高く、成長率は鈍化している。また、日本ではディスプレイオーディオとスマートフォンを接続して、ナビゲーション機能を利用するケースが若年層を中心に増加していることから、世界と比較して緩やかな伸びとなると予測している。
「IVIシステムは、自動運転と連動した開発が進んでおり、従来の接触操作に加えて、音声や視線による非接触操作が採用され、操作の効率性や簡便性が向上するとみられる。これらの機能向上には通信対応が必須となり、車室内外との通信が高速化する。そのため、5Gニーズが高まるだろう」とした。
カーオーディオは2028年まで年平均成長率2.4%減で推移と予想
カーオーディオは、2023年の世界出荷台数が、前年比3.9%減の6408万台となり、2028年までは年平均成長率は2.4%減で推移。2028年には5686万台に縮小する。日本でも縮小傾向は同様で、2023年の出荷台数は前年比12.0%減の132万台であり、2028年には84万台にまで縮小する。
自動車販売台数が回復基調で推移することはプラスの影響を与えるが、ADAS機能搭載車や電動自動車の比率が上昇することで、 IVI システムの採用が増加。この反動で、カーオーディオは中長期的には微減で推移すると予測した。
だが、ディスプレイ付きカーオーディオは、車室内におけるモニターニーズの拡大に伴って比率が上昇。2023年まではディスプレイなしが半数以上を占めていたが、2024年にはこれが逆転。2028年には、7割強をディスプレイ付きが占めると見ている。
「ディスプレイ付きカーオーディオは、車室内に安価にモニター機能を付与する手段として使われており、スマホと接続しながら利用するケースが多い。OTA(Over The Air)による機能拡張などを容易に行えるようになっており、ユーザーの利便性が向上している」とした。
カーオーディオ本体の車内の通信機能では、Wi-FiやBluetoothが中心になると予測している。
ドライブレコーダーは2028年まで年平均成長率5.6%増で伸長し、2028年出荷台数は3751万台に拡大すると予測
ドライブレコーダーは、2023年における世界の出荷台数は前年比3.5%増の2855万台となったが、2028年までは年平均成長率は5.6%増で伸長し、2028年の出荷台数は3751万台に拡大すると予測した。日本でも2023年が前年比21.9%減の351万台であったものが、2028年には385万台に増加すると予測した。
2023年は、先進国を中心に新規需要に対する飽和感があり、伸長率は低下したが、半導体不足が解消に向かい、自動車販売台数も回復基調であることから需要は増加。今後もセキュリティニーズの高まりなどから堅調な増加が続くと見込んでいる。
「ドライブレコーダーは、アフターマーケットが中心となっていたが、徐々に純正での装着が増えている。あおり運転が社会問題として取り上げられたり、車上荒らし防止や車両の盗難防止につなげたりといった観点からも需要があり、ドライバーのセーフティ、セキュリティに対するニーズが、需要を増大させている」と分析した。
また、「事故や危険運転などの証拠保全、運転手保護などの抑止力としてのニーズや、ドライブレコーダーに対応した保険商品の拡充などがプラス効果にあげられる」としたほか、「今後は、搭載されるカメラの数が増加し、前後方の撮影が標準になると見込まれるほか、AIを用いてドライバーの状態と周囲の状況を分析し、適切な注意喚起を行うといった用途、ドライバーの視線やまばたきなどの状態を捉えて、わき見や居眠りを検知するといった使い方が進むことになる」と予見している。
さらに、「商用車向けの安全運転管理やテレマティクス保険など、ドライブレコーダーと通信機能を組み合わせたサービスが増加し、スマート化が進むことになる」とも指摘した。
その一方で、「ドライブレコーダーは、車室内だけでなく、車室外を撮影、録画するため、プライバシーの問題が発生し、利用に規制がかかる国や地域も出てくるだろう」とも述べている。
全世界の自動車販売台数は2028年まで年平均成長率2.7%増で伸長、2028年には1億300万台の販売台数に達すると予測
なお、富士キメラ総研によると、2023年の全世界の自動車販売台数は9005万台に達しているとみており、前年実績を上まわったという。また、2028年までは年平均成長率は2.7%増で伸長。2028年には1億300万台の販売台数に達すると予測している。
富士キメラ総研第一部主任の小林秀幸氏は、「2023 年の自動車販売台数は、世界の各地域ともにプラスとなった。半導体不足による生産への影響がだいぶ緩和され、受注残として残っていた需要を消化して堅調に回復した。この動きは2024年も継続しており、2026年にかけて、COVID-19感染拡大前の水準まで自動車需要は回復する」と予測した。
また、電動車の市場が堅調に拡大していることや、通信対応車が拡大していることにも言及。とくに、5G通信に対応した自動車が増加しており、自動運転時代に向けた準備が進んでいることを指摘した。だが、「接続性やサービスに必要な通信速度を考えると、5G通信に対応している必要はない。また、通信モジュールのコストが高いという点でも、5G搭載率の拡大スピードは緩やかである」とも述べた。