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Cato Networks、フォーミュラE・ポルシェチームに提供するSASEプラットフォームの安全性と高い効率を紹介 SASEスループットは10Gbpsを実現
2024年4月1日 07:10
- 2024年3月29日 開催
クラウドサービスのSASE(Secure Access Service Edge=セキュリティとネットワークを統合したもの)プラットフォームを提供しているCato Networksは3月29日、BEV(バッテリ電気自動車)のフォーミュラマシンによる国際レース「フォーミュラE」に参戦する「タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラEチーム」に公式SASEパートナーとして提供しているソリューション「Cato Cloud」(ケイトクラウド)についての説明会をポルシェスタジオ銀座で開催した。
発表会では、2022年12月からスタートしたCato Networksとポルシェチームのパートナーシップで提供しているSASEプラットフォームのサービス概要とSASEスループットを高めた新技術などについて、Cato Networks セキュリティ戦略担当シニアディレクター イタイ・マオル氏が説明を行なった。
マオル氏は、現代では多数の企業や組織にとって、ウイルスやマルウェア、ランサムウェアといった悪意のあるプログラムより、ネットワークが複雑化することの方が現実的な脅威になっていると述べ、2023年にIBMが発表したデータ侵害についてのレポートを例として挙げて、「セキュリティ」と「システム自体の複雑化」がとくに大きな要因になっていることを解説した。
Cato Networksではネットワークとセキュリティを集約するSASEプラットフォームを提供しており、これはコンピュータとカメラ、音楽プレーヤーを1つにまとめたスマートフォンや、コンピュータとストレージを1つのプラットフォームで実現するAWS(アマゾン ウェブ サービス)のように、同社のSASEプラットフォームでネットワークやセキュリティシステムなど多彩で複雑なサービスを提供していると紹介。重要なことは特色あるサービスをたくさん用意することではなく、各サービスを1か所で上手に活用できるようまとめることが実際には求められていると説明した。
この具体的な取り組みとして、同社ではハードウェアのアップグレードを伴わずにSASEスループットを従来の5Gbpsから10Gbpsに高め、新記録を達成したと発表。この技術はクラウド上で実現され、同社の顧客は製品やアプライアンス機器を購入する必要はないという。
最後にマオル氏は、自身が専門に手がけるセキュリティ分野の情報分析の一部について説明。一例としてロシアのランサムウェア開発グループが秘密裏にインターネット上でディスカッションしている情報交換の場に入り込み、犯罪者たちがどのような人材を求めて求人情報をやり取りしているかを調べ、機械学習の専門家やデータサイエンティストを雇用してセキュリティ突破などの悪用に特化したAIツールを作り出そうとしていることなど、脅威を生み出している側も新しいテクノロジを次々と採用しているといった実情に触れて、自分たちの製品のセキュリティ技術向上に利用していることを紹介した。
レース開催ごとに400GBを超えるデータをレース車両が生成
マオル氏のプレゼンテーション後には、ポルシェチームでリザーブドライバーを務めるシモーナ・デ・シルベストゥロ選手にチームでのCato Networksの製品利用などについてマオル氏が質問するインタビューコーナーも用意された。
マオル氏:この週末に初のフォーミュラE Tokyo E-Prixが開催されますが、チームの雰囲気はどうですか?
シルベストゥロ選手:チーム1人ひとりがスーパーエキサイティングな状態です。東京を楽しんでいて、東京の市街地コースはフォーミュラEのレースにフィットしていると感じています。
マオル氏:チームのドライバーとして、データ分析にCatoの技術をどのように活用してパフォーマンス向上を図っていますか?
シルベストゥロ選手:現代のレースでデータは非常に大切です。ドライバー自身でもデータを活用していて、実際の運転で加速したり、ブレーキを踏んだりする判断にも影響を与えています。シミュレータを使って事前に東京レースのシミュレーションをずっと続けてきました。そしてここに来て実際のレースに臨むにあたり、これまで積み重ねてきたシミュレーションには推測の部分も含まれていますので、実際の現場で確認して一致させていく作業がこれから行なわれます。そのようにしてレース本番に挑んでいくのです。
マオル氏:シミュレーションでは今日(3月29日)の雨は予測していないですよね?
シルベストゥロ選手:そうですね。レースで最初のプラクティスで走行したときは路面が非常にウェットでした。事前の走行とは違ったので少し混乱しましたが、とにかくプラクティスで走行してみて、経験を積んで本番の決勝レースに進むスケジュールです。
マオル氏:レースではマシンに装着された多数のセンサーにより、レース開催ごとに400GBを超えるデータが生成され、分析するためクラウドに送られています。こうしたデータはヴァイザッハにあるポルシェの開発センターにとってどれぐらい重要なのでしょうか。
シルベストゥロ選手:プラクティス1、プラクティス2とあって、もう1人のドライバーがシミュレータでも走行を経験しています。そういったデータをできるだけ早期に取得して、データを活用することでレースマシンの性能を次のセッションに向けてさらに向上させていくことが非常に重要です。
マオル氏:レース前に準備がとても大事だというお話しですが、実際のレース中でもヴァイザッハにデータを送っているのですか?
シルベストゥロ選手:シミュレータの利用は重要ですが、レースウィークに入るとある時点からシミュレータの利用が、FIAのレギュレーションによって制限されます。従来のレースでは実車を使ってサーキットを走り、さまざまなテストを行なっていましたが、現在ではシミュレータを非常に多くの面に活用していて、シミュレータによってさまざまなものを判断しています。チームではシミュレータを有効に使い、マシンに変更を与えたらシミュレータでのテストですぐに効果を確認できます。ポジティブな結果ならそのままにして、ネガティブな結果ならすぐに取り止めるといった判断が可能になります。
マオル氏:最後は私にとっても重要なセキュリティについて質問させてください。モータースポーツでデータテクノロジを活用したマシンの進化を行なっていく上で、ドライバーの立場からセキュリティやネットワークについて意識することはありますか?
シルベストゥロ選手:フォーミュラEのレースでは、燃料がなくすべて電気でマシンを走らせます。その電気に関連するデータはとても大切です。だからこそセキュリティも重要で、セキュリティがしっかりしていなければせっかく取得したデータ自体、そしてデータからの学びも盗まれてしまう恐れが出てきます。そういった面からも、ネットワークとセキュリティはレースにおいて重要だと思っています。Cato Networksという素晴らしいパートナーがいることが私たちの役に立っています。
マオル氏:ありがとうございました。
自前のインフラで提供していることが10Gbps実現の1つの理由
このほか、セキュリティに精通したCato NetworksのJapan&South Asia SEマネージャー 桜井勇亮氏、SB C&S テクニカルマーケティングセンター 竹石渡氏によるパネルディスカッションも実施された。
――桜井さん、Catoが日本でどのように採用されているのか教えてください。どのような企業がCatoのプラットフォームを使っているのでしょうか?
桜井氏:Catoはグローバル企業で、世界100か国以上で使われているグローバルサービスを展開しています。とくに日本企業のお客さまに高い評価をいただいて、多くの皆さまにご利用いただいています。その理由はいくつかありますが、業種や業態、企業規模を問わず使っていただいています。
Cato Cloudというシステムは、グローバル対応や多拠点対応といった点に強みがあるクラウドサービスなので、日本の企業では世界で活躍していることも多く、海外に支店があってあちこちを飛びまわったり、グローバルでさまざまなガバナンスを効かせるサービスが求められているという部分で、Cato Cloudのグローバル対応やクラウドネイティブに開発された画期的なアーキテクチャーが評価していただいてご利用いただいているのだと思います。
――コロナ禍を経て自宅で仕事をする人も最近は増えています。自宅でもどこでも会社のWebサイトにアクセスできる、今までのゼロトラストではできなかったことがSASEやCatoのプラットフォームはあるということでしょうか。
桜井氏:そうですね。どこでもできるということと、それを安全に提供することは両立させることが難しい問題です。そういった点をクラウドで構築できる、簡単に実現できるというところがCato Cloudの技術的特徴だと思います。
――先ほど発表された10GbpsというSASEスループットはとてもエキサイティングでした。日本のお客さまにとってどのような意味を持つものになるでしょうか。
桜井氏:世界にSASEベンダーはいくつかありますが、10GbpsというSASEスループットを出せるサービスはCato Cloudしかありません。これは他を圧倒的に引き離す内容です。10Gbpsというトラフィックはそれほど珍しいものではなくなってきていますが、さまざまなセキュリティサービスを含むSASEで10Gbpsを実現して提供できるのは、われわれ自身から見ても画期的だと思っています。
その理由となるのが「自前のバックボーンを持っている」ということです。ほかのSASEベンダーが基本的にインフラの部分をサードパーティに依存する状況で、弊社は自前のインフラにこだわって提供していることが10Gbpsを実現できた1つの理由だと思います。また、アーキテクチャー自体も他社と比べてかなり画期的な仕組みを備えていて、クラウドネイティブに開発されたプラットフォームであるという部分が他社にはできない10Gbpsにつながっています。
これが日本のお客さまにとってどういった意味を持つかですが、今後ますますSASEに対する要望は増えていくと考えていて、SASEの重要な要件として、ロケーションやトラフィックの通信量を問わずどこでもつながること、クラウドから物理拠点、データセンター、リモートユーザーなどをすべて必ずつなげることができる環境を作るという意味で、今回の10Gbps実現で制約が1つ減ったと考えています。大容量通信に対応する選択肢がさらに増えたという部分が大きな意義になると思います。
――竹石さん、セキュリティのお客さまはCatoのどのような部分に魅力を感じているのでしょうか。
竹石氏:いろいろとありますが、2点に絞ってお伝えすると、1つはSASEと言ってもいろいろな機能が求められますが、Catoはたいていの機能をカバーしているので使い勝手がいい点が挙げられます。もう1つは、それらを1つのプラットフォームで提供しているということ。シームレスに統合されていてユーザビリティが高い部分ですね。
最近は「シングルベンダーSASE」という言葉がこの界隈で出てきているのですが、私はこの言葉が嫌いです。なぜかと言えば、いろいろなSASEベンダーが買収などの手法で機能を無理矢理組み込んでSASEを提供しているパターンがあります。これは確かにシングルベンダーと表現できますが、真に大切なのはシングルベンダーなのではなく、「シングルプラットフォーム」であることだと思います。その点でCatoさんは真のシングルプラットフォームでSASEを提供しているので、そこがユーザーに受け入れられているのかなと思います。
このほか、ポルシェスタジオ銀座を運営しているEBI GROUPの代表取締役 荒川由紀氏もあいさつを行ない、「このたびはCato Networksさまの発表会会場として弊社のポルシェスタジオ銀座を選んでいただいたことで、東京ビッグサイト周辺を舞台に日本初開催されることになったフォーミュラE世界選手権に、私たちも少しだけでも携わることができました。この場をお借りして御礼申し上げます」とコメントした。
【お詫びと訂正】記事初出時、一部の社名表記に誤りがありました。ポルシェチームのパートナー企業名はCato Networksです。お詫びして訂正させていただきます。