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自工会、2023年度の「乗用車」「軽自動車」「2輪車」市場動向調査について説明 インフレや燃料費高騰が乗り替えのハードルに

2024年4月17日 開催

乗用車分科会長 俵田真氏(本田技研工業 統合地域本部 日本統括部 商品ブランド部)

 日本自動車工業会は4月17日、2023年度に実施した「乗用車」「軽自動車」「2輪車」の市場動向や使用実態に関する調査の結果を取りまとめて公表。同日に報道関係者向けの概要説明会をオンライン開催した。

2023年度乗用車市場動向調査

2023年度乗用車市場動向調査の結果要約

 乗用車の市場動向調査については、乗用車分科会長 俵田真氏が解説を実施。調査結果の要約としては、近年の乗用車世帯保有率は約8割となり、保有期間は平均で7.2年。このうち「10年超」という回答が2割強を占め、長期保有の傾向は継続している。平均での月間維持費や維持費全体の負担感があるとの回答は上昇を続けており、とくに「燃料費への負担感」が前回の2021年度調査から大きく増加して、クルマの非保有理由でも「維持費負担」が上位になっている。

 車両の平均購入価格は「264万円」で、2017年度からの上昇傾向が継続。車両購入者の約8割が車両価格が高騰していると認知しており、車両価格が当初想定していた予算から10万円以上上まわった場合には、4割の人がオプション品やグレード選択に影響が出たと回答している。

 保有車両に占めるハイブリッドカーなど次世代エンジン車の割合は増加傾向が継続。購入検討順位ではハイブリッドカーを1位とする割合が最も高いものの、BEV(バッテリ電気自動車)の割合も継続的に上昇している。一方でBEVを対象とする補助金制度の内容認知は1割強で、まだまだ認知度は低い状況となっている。

 コロナ禍で実施された前回調査からの行動変容を調査するために行なわれたアンケートでは、自家用車の利用は増加している半面、旅行やレジャーといった長距離移動は逆に減っているという。

 車両購入時におけるインターネット販売の利用意向は約2割に留まっており、「実物を見たい」という要望が強いとの結果となった。若年層や高価格帯車両の保有層では利用意向が比較的高い傾向も見られている。「クルマの購入中止」や「保有期間の長期化」の理由では、景気の悪化、燃料価格高騰といった回答が増加しており、インフレが購入に影響を与えている調査結果が出ている。

「乗用車市場動向」の時系列分析結果

 調査結果を時系列で見た分析では、乗用車の世帯保有率は8割弱で大きな変化はなし。地方都市ではクルマが生活の足となるため、地方圏や家族形成期の保有率が高い傾向も同様に変化なしとしている。

 保有タイプでは軽自動車が4割近いことも変わらない部分だが、ハイブリッドカーといった次世代エンジン車の割合は年々増加。今回の調査では約2割が次世代エンジン車に乗っていることが分かった。

 乗用車を保有しない理由では、「ガソリン代や駐車場代が負担になる」「車検費用が負担になる」といった費用負担の理由が上位になる傾向に変化は出ていないと分析されている。

「乗用車ユーザーの特性と使用状況」の時系列分析結果

 ユーザー層別の時系列分析では、女性ユーザーの比率が年々上昇。今回の調査ではほぼ5割というところに到達している。年齢比率は日本の高齢化とリンクしており、平均年齢は54.0歳となった。主な用途は「買い物・用足し」が4割強で、この部分は変動が見られていない。

「維持費と負担感」に関する時系列分析

 維持費と負担感の面では、平均月間維持費が前回調査の1万1300円から1万2100円に増加。2017年の9800円と比較すると2割以上の増加となり、負担感が「大きい」「どちらかといえば大きい」と回答した人が6割となっている。負担感の理由としては「車検代」「任意保険料」といったこれまでも回答数が多かった項目に加え、今回は「燃料代」が68%と大きく上昇して、燃料費の高騰が負担感を高めていると分析された。

「購入状況」の時系列分析結果

 時系列分析で見た購入状況では、「小型車」「大衆車」「軽乗用車・軽ボンバン」というジャンル別それぞれで同じジャンルのクルマに乗り替える傾向が強いと分析され、車両の保有期間はこれまでの7.1年から7.2年に増加。保有期間の長期化傾向が続いている。新車購入時の平均価格は264万円で、継続的に上昇している結果となった。

トピック分析「次世代自動車への意識」における購入意向や懸念点

 調査結果から特徴的な分析結果を抜き出したトピック分析では、まずBEVなどに関する「次世代自動車への意識」での分析を紹介。

 次世代自動車の乗り替え候補ではハイブリッドカーが半数以上を占めてトップとなっており、続くBEVは32%という結果。ハイブリッドカーは少しずつ減少している一方でBEVは増加傾向となっており、BEVを検討する理由には「家庭用コンセントで充電できる」「環境に優しいイメージがある」「最先端の技術を取り入れている」という回答が上位となっているが、一方で「車両価格が高い」「1回の充電での走行距離が短い」「充電に時間がかかる」「バッテリの耐用年数を考えると維持費の面で不安」といった面が購入にあたっての懸念点として挙げられている。

トピック分析「次世代自動車への意識」における補助金などの認知度

 補助金や充電器に関する回答では、補助金の存在は6割強の人が知っていたが、内容まで把握している人はわずか11%に留まっている。補助金に対する懸念では「申請が分かりにくい」という回答が多く寄せられ、購入時に補助金を申請する点に対してユーザーが不安に思っていると明らかになった。

 BEV購入後に必要となる充電器については、すでに設置している人は4%と少数で、設置する意向という人を含めても4割程度となっており、設置しない理由としては「設置費用がかかる」「設置スペースがない」ことがハードルとなっている。充電器を利用したい場所としては、「ガソリンスタンド」「コンビニエンスストア」「大型商業施設」「高速道路のSA・PA」が回答の上位となり、自分の生活圏内や長距離移動の経路に高い充電ニーズがあると分析している。

トピック分析「車の使用実態・ニーズの変化」

 要約でも取り上げられたコロナ後の行動変容では、自家用車の使用が2年前を比較して「増えた」という回答が38%、「減った」という回答が21%で、コロナ後で自家用車の利用が増えていると分析されたが、一方で利用シーンでは「国内旅行」「アウトドア・レジャー」「ドライブ」などが2年前より減ったとの回答が上まわり、さらに今後1年でも同様の項目が減ると考えている人が多いことが分かった。なお、ライフステージ別の分析では、高齢者はドライブなどを減らすと答えているが、独身者、家族形成期の人の回答では増えるとの考えとなっており、結果に差が出ているという。

トピック分析「購入プロセスの変化」

 購入プロセスについてはこれまでの調査結果と大きな変化はなく、インターネット販売での車両購入は「利用したい」5%、「やや利用したい」14%を合わせても前向きな回答は19%と多くないが、年代別の回答では30代以下の人は48%が前向きな回答となっている。

トピック分析「インフレによる乗用車市場への影響」

 インフレが販売に対して与える影響では、直近2年間でクルマの購入を止めた理由に価格の上昇や景気の悪化、燃料価格の高騰を挙げた人が多く、合わせて保有期間の長期化も継続している。車両価格の高騰で、予算より10万円以上高くなってくると40%近い人が購入内容に対して何らかの影響が出ると考えていると回答している。

2023年度軽自動車使用実態調査

軽自動車使用実態調査TFリーダー 村木政志氏(スズキ グローバル営業統括部 日本営業企画部 調査課)

 軽自動車の使用実態調査は軽自動車使用実態調査TFリーダー 村木政志氏から説明が行なわれた。軽自動車ではボディタイプ別に「軽乗用系」「軽キャブバン」「軽トラック」の3種類に分けて使用と購入実態を調査・分析している。

「軽乗用系」の使用と購入実態。ユーザーの年代層や使用頻度など

 軽乗用系の使用と購入実態では、ユーザーの約4割が60代以上という高齢層中心の構成だが、前回調査よりわずかながら比率が減少する傾向となっている。使用頻度は「ほとんど毎日」という回答が67%で最も多く、月あたりの平均走行距離は398kmで時系列的に減少傾向とのこと。1世帯での保有台数は軽自動車1台のみという回答は3割で、それ以外は2台以上を併有している。

「軽乗用系」の使用と購入実態。購入形態や車両価格

 購入形態では軽自動車から軽自動車に買い替えるケースが6割で中心となっており、登録車から軽自動車にダウンサイジングする割合は時系列的に見て少しずつ減少している。新車購入時の車両価格は、約6割が180万円以上を支払っており、平均価格も184万円と、前回調査の165万円から約20万円の上昇となった。

「軽キャブバン」の使用と購入実態

 軽キャブバンの使用と購入実態でもユーザーの中心は60代以上の高齢層となり、主な用途としては商用が55%、乗用が40%、農用が4%となっており、時系列的に見て大きな変化は起きていない。

「軽トラック」の使用と購入実態

 軽トラックの使用と購入実態はさらに高齢層がユーザーの中心で、約7割が60代以上、平均年齢は63歳となっている。主な用途は農用が46%で上昇傾向となっているほか、乗用が19%まで増加。用途の詳細では「買い物」「通勤・通学」「趣味・レジャーなどの用具運搬」といった使い方で増加が起きている。この理由としては、軽トラックでは室内スペースを拡大した「ビッグキャビンタイプ」の販売構成が増えていることも影響しているだろうとの分析も示された。

軽自動車の存在意義「地域別」

 軽自動車の社会的意義について分析した「軽自動車の存在意義」では、まず地域別の視点から、人口密度が低い地域に住む人の軽自動車保有比率が高いことを指摘。「軽自動車より大きいクルマしか使えなくなった場合にどの程度困るか」という質問には、人口密度が低い地域ほど「非常に困る」と回答しているほか、「軽はライフラインである」という設問についても人口密度が低い地域ほど「そう思う」との回答が多いと語り、人口密度が低い地域のユーザーにとって軽自動車の存在意義が高いと説明している。

軽自動車の存在意義「高齢者」

 60代以上の高齢者については、前出の「軽自動車より大きいクルマしか使えなくなった場合にどの程度困るか」という質問についての回答で、「非常に困る」「それほどでもないが困る」という回答が50代以下の54%に対し、60歳以上では66%の回答となっている。また、40代以上に対して行なわれた「運転を止めたい年齢」についての質問では、60代の回答で「80~84歳」が44%、「85歳以上」が24%と合わせて7割近い人が運転を止めるのは先のことだと考えていると指摘。これらの面から、軽自動車は高齢者の日常的な移動手段として必要とされていると語った。

軽自動車の存在意義「女性」

 女性ユーザーにフォーカスした分析では、女性ユーザー全体で71%の人が「ほとんど毎日使用する」と答え、仕事を持っている有職者では78%に数値が増加。仕事の移動で軽自動車を利用しているケースも多いことが分かり、女性ユーザー全体でも72%の人が有職者となっているなど、軽自動車が働く女性の通勤、仕事の足として活用されているとした。

安全装備に対するユーザー意識

 また、軽自動車でも採用が拡大しているADAS(先進運転支援システム)装備に対するユーザー意識では、ADAS装備の装着意向で「衝突被害軽減ブレーキ」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」について装着したいとの意向が高くなっている。一方で、その装備を装着するときに追加費用が発生する場合でも装着する意向があるかとの質問になると、回答の上位の順番には変化がないものの、装着したいとの回答は大きく数字が減り、軽自動車ユーザーには現在でもADAS装備に対する理解、必要性の認識がまだ高くない状況だと分析している。

2023年度2輪車市場動向調査

2輪車をめぐる諸環境

 2輪車の市場動向調査については二輪車分科会長 荒木順平氏(ホンダモーターサイクルジャパン 企画部 プロダクトプランニング課)が解説を実施。

 新車購入ユーザーの調査では、ユーザーの年齢構成比が2004年調査時との比較で10代~30代の割合が大きく減少し、60代以上が26%から35%に増加。販売総数は排出ガス規制の強化やリーマンショックを経た2009年以降に大きく減少し、2015年には40万台を割り込んだものの、新型コロナウイルスの感染拡大による「3密」回避で公共交通機関から需要がシフトしたことを受け、2021年からは40万台規模を回復した。また、免許取得者も同様の傾向で、2021年度から30万人以上という状況で推移している。

2輪車運転環境の変化

 年代別の新車購入者は、50代以上が全体の70%以上で、平均年齢は55.5歳。40代以降の割合が減少傾向となっている。週あたりの使用日数は平均で3.1日と、前回調査の3.3日から減少。スクーターの排気量別では50cc以下が平均4.6日と最も多くなっている。

購入形態・継続意向の変化

 購入形態としては代替が半数以上を占めて最も多いが、増車が増えて代替が減り。需要構造にやや変化が見られている。この傾向はビジネスユースで顕著となっており、この理由として本田技研工業の「スーパーカブ」のヒットが挙げられるという。

 2輪車の継続乗車意向では、年代別に見て20代~50代のユーザーは「ずっと乗り続けたい」という回答割合が高い一方、60代以降のユーザーは「10年以内に乗らなくなる」「あと数年で止めるつもり」という回答が高まる傾向が出ている。

胸部プロテクターを持たない理由

 調査結果のトピックとしては、「胸部プロテクター」を持たない理由について、「着用が面倒」「価格が高い」「夏は暑そうだから」という回答が上位となった。また、女性ユーザーの回答では「その製品自体を知らなかった」というものが43%となっており、さらなる認知向上、訴求活動の実施が求められるとの見解を示した。

購入先重要度・満足度

 購入先重要度・満足度に関する調査では、ユーザーが考える購入先の重要度は「お店の信頼感」「スタッフの対応のよさ」「整備・修理などの技術力」が上位となり、満足度についても同様となっている。

 購入先別の満足度は、メーカー正規販売店では「店の入りやすさ」「店の入りやすさ」「バイク陳列の整然さ」「複数メーカーの車種取り扱い」といった点で満足度が高くなっており、一方で「整備・修理などの技術力」については満足度が低下している。また、メーカー直売店では「店の入りやすさ」「店の入りやすさ」「バイク陳列の整然さ」で満足度が高まっており、「販売条件のよさ」の部分で満足度を落としているという。

2輪車貸し出しサービスが購入のきっかけになるか

 近年増えてきている「2輪車レンタルサービス」の利用動向では、全体の7割近い人が2輪車貸し出しサービスが2輪車購入のきっかけになると回答しており、とくにオンロードユーザー、若年層できっかけになるとの意見が出ている。きっかけになると考える理由としては、「複数のメーカー、車両タイプを比較検討できる」「バイクの楽しさや魅力を手軽に味わえる」といった部分に回答が集まっている。

 一方、「憧れの2輪車を買わなくても楽しめる」ことを挙げ、購入のきっかけにならないと考える意見も出ているという。

2輪EVの認知状況・購入検討意向

 2輪EVについては8割の人が認知しており、前回調査の7割から増加。購入を検討するかについては「購入を検討したい」と回答したのは全体のわずか4%に留まり、属性別に見ても「購入検討の意向なし」が各層で最も多い回答になるなど、購入の検討にも至らない状態となっている。ここから購入を検討するようになるための条件では、「購入価格が安くなる」「走行距離が長くなる」「自宅で容易に充電が可能になる」といった実用面についての改善が上位となっており、とくにスクーターユーザーでこのような意識が強く、普及に向けてはユーザーが抱えている不安の解消が求められると分析した。

今後の2輪車市場活性化に向けた取り組み方針

 最後に荒木氏は今後に向け、「これからの2輪業界活性化に向けて業界やメーカーで取り組むべき方針を整理して、コロナ禍を経てこれまでと異なる新たな価値観を生み出される現在の社会環境変化を的確に捉え、これに適切に対応することが2輪業界に求められる課題になる。市場の好調さを維持して継続させていくことが欠かせない条件になると考え、この実現に向けて業界とメーカーが一丸となって取り組み、将来にわたる2輪業界の活性化を図っていきたい」と締めくくった。