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自工会 二輪車委員会、30%から減らないヘルメット離脱率削減など二輪事故死者半減に取り組む
2023年3月17日 11:47
原付は減ったが、自動二輪は増えた死亡事故
自工会(日本自動車工業会)二輪車委員会は3月16日、自工会が推進する「二輪車安全啓発活動」の取り組みについて報告するなどの報道向けミーティングを開催した。このミーティングには、自工会副会長兼二輪車委員会 委員長 日髙祥博氏、同 常務理事 和迩健二氏、同 二輪車委員会 二輪車企画部会安全教育分科会 飯田剛氏が出席、自工会が現在取り組んでいる4つの取り組みを紹介するとともに、質疑に応じた。
日髙委員長は、「本日は、二輪車産業政策ロードマップの課題の1つになる事故ゼロの推進に向けて、自工会が推進する安全啓発活動の取り組み、これをテーマに取り上げ、自工会の安全啓発活動を紹介するとともに、ディスカッションを行ないたい」とあいさつ。2022年の交通事故死者数が2610人と前年より26人減り、原付・自動二輪についても435人と前年より28人減少したことを紹介。しかしながら、細かく見ると原付は39人減ったものの、自動二輪は11人増加したことについて「バイク人口が増加するに比例して交通事故が増えてしまうことは、私どもの望むところではありません」と憂慮。
2030年までに二輪車の死亡事故、死者数を2020年比半減を目指す自工会の取り組みについて紹介した。
東京モーターサイクルショー開幕日に安全啓発映像を公開
具体的な施策については二輪車企画部会安全教育分科会の飯田氏が紹介。ライダーの胸部を守る胸部プロテクターの認知度・保有率・着用率の調査結果の紹介、数字が減らないというヘルメット離脱率削減に向けた取り組み、生徒の“隠れ乗り”など交通安全教育が届かない状況にもなっている「三ない運動」の見直し施策、二輪車重大事故削減に向けた啓発映像の制作などについて語った。
胸部プロテクターについては、認知率は75%と高いものの保有率は18.1%と低く、さらに着用率となると全排気量平均で9.26%と大きく下がってしまう。自工会として胸部プロテクターの所有や装着の改善に向けて、全国自動車用品工業会とも話しつつ、買いやすく装着しやすい胸部プロテクターというものを進めていきたいとした。
ヘルメットの着用離脱率は、ヘルメットをかぶっていたのだが事故の際にヘルメットが脱げてしまったというもの。二輪死亡事故のうちヘルメット着用離脱率は30%になるという。つまり、死亡者の3分の1弱がヘルメットが脱げてしまっての事故になる。
この主な要因はシンプルで、あごひもを締めていないためになる。多くのヘルメットはDリングがあごひもに備わっており、Dリングを利用してあごひもを締める。飯田氏によると何年もあごひもを締めるための安全啓発活動を行なっているが、この数字は何十年も変わらないという。
記者の感触としては、半キャップ(おわん型)、ジェットヘル、フルフェイスで差がある中での平均値かと思ったが、飯田氏によるとフルフェイスの人でも締めていない人は一定数いるとのこと。自工会としてはヘルメット着用離脱率の減少を進めるため、二輪車重大事故削減に向けた啓発映像を制作。3月24日に開幕する東京モーターサイクルショーに合わせて公開する。
この啓発映像では、半キャップ、フルフェイスヘルメットそれぞれであごひもを締めない場合のシミュレーションを実施。衝突時にどのようになるかが再現されている。ある意味二輪車の危険性を広く知らしめるものでもあるが、「きちんと危険性を伝えながら、こうすれば安全なんだよということをやっていかなければいけない」(日髙会長)という思いで制作したとのことだ。自工会としてはいろいろ内部で意見があったものの、数十年変わらない30%のヘルメット着用離脱率を下げるために、相当踏み込んだ映像になっているという。
そのほか、安全運転教育を前提とした三ない運動の見直しについても報告。三ない運動は、約40年前に全国高等学校PTA連合会によって特別決議された、高校生に対して「バイクの免許を取らない」「バイクに乗らない」「バイクを買わない」をスローガンとした社会運動で、全国統一での運動は2017年に終了している。現在は、各自治体の判断に委ねられており、およそ半数の県で行なわれているとのこと。
自工会としては、この三ない運動の陰で安全運転教育が届かず、バイクの隠れ乗りが起きていることを懸念。埼玉県での三ない運動方針転換の例を説明し、安全運転教育を前提にした三ない運動の方針転換を働きかけていくとした。