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日産、東京オートサロン2025出展車を先行公開 〝趣味をクルマで楽しむ”2台のエクストレイル、災害時に役立つキャラバン

2025年1月10日~12日 開催

東京オートサロン2025の日産ブースで公開する車両を先行公開

 日産自動車は、2025年1月に千葉県の幕張メッセで開催される「東京オートサロン 2025」にブースを出展し、そこに4車種のカスタマイズ車を展示することを発表した。

 今回はその中から3車種の紹介をしていこう。

「趣味をクルマで楽しむ」2台のエクストレイル

 まずはエクストレイルをベースにした「X-TRAIL unwind concept(エクストレイル・アンワインド・コンセプト)」と、「X-TRAIL remastered concept(エクストレイル・リマスタード・コンセプト)」。

 これら2台のエクストレイルを使って表現するのは、自分の「好き」を詰め込んだ「chill(チル。くつろぐなどの意味)」を感じる世界観である。ストーリーとしては本来、インドアでたしなむような趣味を持つ親子が、それぞれの趣味をエクストレイルに搭載してアウトドアに出かけ、同じ場所でそれぞれの趣味を体験しつつ、気持ちのいい環境や親子のつながりを楽しむというもの。

 新型エクストレイルは父親のクルマで、ラゲッジにはエスプレッソをいれるためのエスプレッソマシンを積む。先代エクストレイルは息子が乗り、こちらはラゲッジにアナログレコードを楽しむため、ホーム用のプレーヤーやスピーカーなどの装備を搭載している。そしてそれぞれの趣味をくつろぎながら味わうスペースとしてトレーラーで牽引する「テラス」を組み合わせるという3台セットの展示となる。

 なお、車名に続くコンセプト名はすべて英語小文字で統一しているが、大文字の英語ではフォーマルなイメージが出てしまうため、丸みを帯びた書体での小文字を選択。車名の表記でもクルマのコンセプトに合うリラックス感を出すといった狙いからのものだ。

ラゲッジに父と息子のそれぞれの趣味の道具を搭載。それらをアウトドアに持ち出して楽しむためのテラスをトレーラーでひく。こうしたクルマの使い方は親子関係に対して何か刺激になりそうなもの。親子で来場が多い東京オートサロンで提案するカーライフとしてはなかなかおもしろい存在になりそう
新型エクストレイルをベースにしたエクストレイル・アンワインド・コンセプト。ボディ色はエスプレッソの色をイメージしたもので塗装ではなくラッピングとなっている
足まわりにはJAOS製のBATTLEZリフトアップスを組む
数字の「5」の形をした棚はスライドして奥へ格納が可能。エスプレッソマシンは「ランチリオ」製。セット方法などはランチリオが監修している
下段には1000Wのエスプレッソマシンと249Wのコーヒーグラインダーがある。e-POWERにより1500WのAC電源が取れるのでその機能をフルに使える装備となっている
ボディサイドに入るグラフィックは新旧エクストレイルともに共通デザインで、三角の部分は連なる山や電気や音楽の波形を表す。さらにラインの平行部分はテラスのパラメトリックデザインとも調和するよう考えられている
フロントホイールは特別塗装のJAOS製。タイヤはTOYO TIRE「オープンカントリーA/TIII」
リアホイールも同様の仕様。前後のフェンダーガーニッシュはJAOS製のType-X。塗装は専用塗装
サイドミラーは上部を凹凸があり傷が付きにくい樹脂を混ぜた特殊な塗料で塗装
サイドステップは日産純正品を使う
アンワインド・コンセプトが牽引するのはパラメトリックと呼ばれるスリットのある立体的なテラストレーラー
断面は自然界のさまざまな部分で見られる正弦波をイメージするとともに、車両から電化製品に供給される交流電圧の波形も表している
LEDによるテールランプやウィンカーも装備している
テラストレーラーは下面もしっかり作ってある
エクストレイル・リマスタード・コンセプトは2017年式の「エクストレイル 20Xi」がベース。2023年のマーチに続き中古車ベースのカスタマイズの路線で製作されている。ボディ色は濃いめのメタリックグリーン。草木のある風景に合うよう選ばれた色
「2」の形をした棚にはオーディオテクニカ製のプレーヤーを積む。オーディオセットはオーディオテクニカにて監修されている
アナログレコードの世界では、古い音源を高品質に録音し直したリマスタード版があり、それで音楽を聞くスタイルが若い世代に好まれているとのこと。中古車ベースで質を高めているエクストレイル・リマスタード・コンセプトも同様な復刻版という解釈だ
先代エクストレイルにはe-POWERがないので電源は「ポータブルバッテリーfrom LEAF」より給電している
フロントグリルのガーニッシュ部やバンパーの一部はポリウレア樹脂が入った耐久性が高い塗装にて仕上げている。色味はボディ色に近いが塗装の雰囲気が違うので立体感がしっかりと出ている
JAOS製のADMAS BL5ホイールにTOYO TIRE「オープンカントリーA/TIII」の組み合わせ
リアも同様。フェンダーガーニッシュはJAOS製のType-X
サイドステップは日産純正品だが海外向けの製品となる
握りこぶしのマークは2023年に出展したエクストレイル・クローラー・コンセプトから引き継ぐもの。エクストレイル・アンワインド・コンセプトも同じマークを付けている
インテリアは基本変更はないがシルバーの加飾パーツはコンセプトに合うよう塗装されている
ディスプレイ周辺、スターターボタンのリング、ステアリング、ドアハンドルなどが落ち着いたトーンで処理される
シフトパネル周辺も同様。全体的にアナログレコードが似合う落ち着いた雰囲気になっている

 これら新旧エクストレイルに採用されたコンセプトは、制作スタッフの中でいわゆるZ世代と呼ばれる若手が考案したもので、この世代のクルマの活かし方や楽しみ方、価値感が表現されたものとなっている。

 2台のエクストレイルに搭載された趣味についても、実際のところアナログレコードなどは若い世代に注目されていて、当時のモノをよりよく再現した音源をリマスタード音源などと呼び、そういったレコードをアナログプレーヤーで聞くという趣味を持つ人も多いそうだ。

 また、アウトドアレジャーでは屋外でコーヒーを飲むスタイルもあるが、今回のエスプレッソはその延長線でもある。

 クルマの趣味というとドライブやモータースポーツなど「走ること」をメインに考えるのが一般的だが、そうした定義は世代ごとに変わっているのもまた当然で、この2台のエクストレイルは「趣味のクルマを楽しむ」とは少し異なる「趣味をクルマで楽しむ」といった方向性に思えた。

 このようにそれぞれ「別の趣味を持つ親子」をつなぐアイテムとして「クルマ(エクストレイル)」があることもポイントで、近年の東京オートサロンはクルマ好きの父親に連れられた子供も多く来場しているだけに、こうしたクルマの使い方の提案は興味深いものだと思う。

 ブースではクルマ作りを見るだけでなく、これらのクルマがあることでのストーリーなども想像してみてほしい。

「2」と「5」の文字を使うデザインは過去の出展車にも取り入れていたが、今回は2025年のオートサロンということで目立つように使用したとのこと

実際に購入できるもので仕上げたキャラバン「ディザスター・サポート・スペック」

キャラバンをベースにした「DISASTER SUPPORT SPEC.(ディザスター・サポート・スペック)」

 続いて紹介するのはキャラバンをベースにした「DISASTER SUPPORT SPEC.(ディザスター・サポート・スペック」だ。日産は2021年より東京オートサロンに向けてキャラバンをベースにした出展車を製作してきた。

 2021年は移動できるオフィスとして働き方の提案となった「NV350 CARAVAN OFFICE POD CONCEPT」を出展し、2022年は新しい外遊びの基地としての「NV350 CARAVAN MOUNTAIN BASE CONCEPT」。2023年はこの年に新たに発売を開始したリーフのバッテリを再利用した「ポータブルバッテリーfrom LEAF」を職人の現場で生かすための「NV350 CARAVAN POWERED BASE FOR PRO」。そして2024年は緊急、災害時に防災拠点となる支援車両の「NV350 CARAVAN DISASTER SUPPORT MOBILE-HUB」であった。

 上記のシリーズはどれも大きな反響を得たが、2024年の「NV350 CARAVAN DISASTER SUPPORT MOBILE-HUB」が提案した防災のコンセプトはさまざまな企業、自治体から問い合わせを受けただけでなく、実際に車両の視察まであったほど大きな反響を得た。そしてその結果を受けて企画されたのが、実際に使ってもらえる「備えるCARAVANの製作」というもの。

「備えるCARAVAN」が目指したのは実際に購入できるもので、法人、個人、自治体など必要とするところへ届けることができることだ。そのために考えたのが車体へ大きな加工をしないこと。それぞれの用途で使えることもキャラバンとしては重要なポイントだ。それができれば新車、中古車、さらにはすでに所有しているなどを問わず、すべてのキャラバン(対象になるボディタイプ)を「備えるCARAVAN」に変えることができる。

 こうしたプランを元に、2025年の東京オートサロンの出展車「ディザスター・サポート・スペック」が製作された。

ベースになったのは「キャラバン プレミアムGX ディーゼル4WD」。ボディ色は専用(参考出品)。ボディ各所に使われているオレンジ色は2023年の「NV350 CARAVAN DISASTER SUPPORT MOBILE-HUB」で大きく使われていたデザインのキャリーオーバー
スライドドアの色を変える手法は2021年の「NV350 CARAVAN OFFICE POD CONCEPT」で使われたもの。こういうボディ色の設定があってもいいと感じた
新車、中古車、すでに所有されている車両で再現できることをテーマとしているので、エクステリアに加工はない

 ディザスター・サポート・コンセプトでは出動時、以下のようなシーンが想定されている。企業が所有している場合、有事があった際は社内の備蓄倉庫から必要な品を取り出すと同時に、普段業務で使用しているキャラバンを支援車にするための装備を搭載。そして2名による支援部隊が現地入りしてサポートを行なうというもの。

 サポートは数日にわたることが想定されているが、現地では宿泊施設が使用できないので車内で寝泊まりするためのスペースもある。また、現場では事務作業もあるのでそれを行なうための十分な広さがあるテーブルも装備される。

 さらに停電が続いていても車載のバッテリとソーラーパネルで電力を確保し、インターネットにつなぎ情報収集や本部との連絡を行ない、その電気で現地の人のスマホなどへの充電も行なうというものだ。

 装備については写真でも紹介するが、このクルマは買えることを前提に考えているので、特別な装備はできるだけ減らして、すでに販売されている純正アクセサリーを有効に使用しているのもポイントだ。

 具体的にはまずポータブルバッテリーfrom LEAF、ルーフ上のヘビーデューティーラック、リアラダー、フォグランプ、グリルイルミネーション、ヘッドランプヒーター、ナビゲーション(9インチ)、ドライブレコーダー、ラゲッジレール・フック、ルーフインナーバー、ワークランプである。

ディザスター・サポート・コンセプトの装備展開状態。左面だ
展開時。フロントから見た姿
特徴的な装備は車内からスライドして展開することができる棚。上段はスマホが充電できる装備。かぎ付きのボックス内に入れて充電するという作りで、かぎ付きというのがリアル。下段には電源となるポータブルバッテリーfrom LEAFが収納される
ラックはかなり重量があるのでスライドレールも頑丈な作り。そこでスライドレールを格納するスペースを設け、それをフロアに重ねてフロアとして使えるようにした。固定は2列目シートの取り付け穴など既存のものを使用
スライドすることが分かる画像。このクルマは実際にスライドして棚を収納できる
左スライドドアには情報を表示できるサイネージモニターを装備
有事の際、ドローンの活用は欠かせないのでヘリポートを用意。ポータブルバッテリはドローンの充電にも使用
ルーフには日の向きに合わせて角度調整ができるソーラーパネルを装備する
スターリンク通信用アンテナも装備。純正アクセサリーもヘビーデューティーラックに固定するので車体側は無加工
俯瞰からの姿。ルーフには新素材のボディ保護シートを実験的に貼っている。黒い部分がそれだ
車体右側を見る。車外にあるのは着替えなどができる折りたたみ式の個室。その横は水タンクとシンク
折りたたみ式の個室。大人が立って利用できる高さがある。内部には鏡もある
シンク。下のボックスが水タンク
室内へは右スライドドアからアクセスできる。棚を外にスライドさせると事務仕事用のデスクが展開できる事務スペースが生まれる
デスクはパーテーションパイプを利用して折りたたみ式としている。電源はポータブルバッテリから取る。事務スペースの照明は純正アクセサリーのワークランプで2個使用
リア側には折りたたみ式のベッドがある。ベッドの端には天井照明用のスイッチがあるので寝てから電気を手動で消すことができる。室内の照明は純正アクセサリーのワークランプ。荷室に6個付けている
ベッド下には棚がありポータブルバッテリや調理用のレンジが収められている
天井にはルーフインナーバーを装着し、それを利用してカーテン用のレールを追加。カーテンレールはワンオフだ
壁面にはラゲッジレール・フックを装着
荷室フロアにはパネルが敷かれる。写っているボックスは水タンクで中には水がたっぷり入っていたが、それでも片手で引けるほど摩擦抵抗がなく滑りのいいフロアだった
室内全体をリアから見る。テールゲートのガラスには調光フィルムを貼っていて透過も目隠しもスイッチ操作で選べる。また、調光フィルムは投影もできるので、室内にプロジェクターを用意すればモニター代わりになる
サイドの棚用レールのために底上げしたフロアはこれくらい。固定は元からあるボルト穴を使っている。断面にある模様は「NV350 CARAVAN DISASTER SUPPORT MOBILE-HUB」のときに使っていたデザインを取り入れた
運転席まわりではパネルをワンオフで作ることで9インチナビゲーションをセット
最近のクルマでは一般化している大画面のナビゲーションを使えるようにしている
エンジンを止めた状態でも外気導入や送風ができるようブロアファンを別系統で作動させる機能を追加。スイッチはグローブボックスに収めている
ヘッドランプヒーター。降雪時に雪の付着を防ぐ
バンパーは2台のエクストレイルにも使われていたポリウレアという樹脂が入った塗料で塗る。表面が堅くなるのでちょっと擦るくらいではダメージを受けない
車体各所にあるピクトグラムもオリジナルでデザイン
絵であれば日本語が読めない海外の人でもこのクルマの機能が理解できる

 といった「備えるキャラバン」ディザスター・サポート・コンセプト。有事のときには頼もしいクルマではあるが、1台で多くのことを実行できる能力は多方面に使えるものだけに、もし本当に発売されたらかなり人気が出るのでは、と思えたりする。この多機能キャラバンに興味のある人は、東京オートサロン2025の日産ブースで現車をじっくりと見てほしい。