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佐藤琢磨選手のファンミーティング、お台場「シティサーキット東京ベイ」で開催 インディ500への意気込みも語る
2025年4月3日 08:10
- 2025年3月16日 開催
レーシングドライバー佐藤琢磨選手のファンミーティング「Takuma Club Kart Meeting 2024/2025」が、3月16日に東京 お台場の「シティサーキット東京ベイ」で開催された。
このイベントは本来2024年のシーズンオフに行なわれる予定だったが、悪天候で延期したSUPER GT第5戦が12月開催となった影響で、スケジュールが2025年に変更されたもの。こうした経緯から琢磨選手がトークショーだけでなく、かねてから要望があったカート大会も一緒に開催したという経緯がある。
ところで琢磨選手といえば、自身が現役ドライバーであるだけでなく、「鈴鹿サーキットレーシングスクール」のプリンシパル(校長)およびエグゼクティブ・アドバイザーも務めている。また個人としても「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」を開催して後進の育成を積極的に行なっており、当日は雨が降るなか70人を超えるファンと、若きカートドライバーたちがお台場に集まった。
雨の中、みんな笑顔でカート大会
イベントの第一部は、「エンジョイクラス」と「チャレンジクラス」の2カテゴリー形式でカート大会が開催された。
マシンは東京シティサーキットのレンタルEVカートで、ウォームアップを兼ねた練習走行でタイムを計測してクラス分け。そこからプチ耐久レースが実施され、チャレンジクラスはその順位を元にグリッドを決めて20分間の決勝レースを行なった。
筆者はメディアとしての参加だったので、自動的にチャレンジクラスへ。チームメイトにはレーシングドライバーでありモータージャーナリストとしても大先輩となる桂伸一さんと、カー・アンド・ドライバー誌の山本義隆編集長、そしてアマチュアカーターの方の4人で「アンドレッティ・オートスポーツ」を結成した。そう、チャレンジクラスはそれぞれがカートやF1に由来するチーム名でエントリーされる茶目っ気ぶりなのだ。
そしてここに琢磨選手が1人で20分間を走り切る形で加わり、「参加者全員が佐藤琢磨選手と一緒に走れる」という、なんとも素敵な耐久レースがスタートした。
個人的におもしろかったのは、EVカートのポテンシャルが非常に高いことだった。当日はかなりの雨量だったが、なんとタイヤはスリックのまま。しかしこれが、かなりきちんとグリップしたのだ。
雨でもトレッドと路面の間に水が入り込まなければ、タイヤはグリップしてくれる。絶対速度の低さと(といってもドライ路面だと、MAXスピードは70km/hくらい出る)、エンジンカートよりも重たい車重でタイヤに面圧がかかって、ハイドロプレーニングが起こりづらいというわけだ。
そしてEVよろしくアクセル追従性がリニアだから、ガソリンカートのように吹け上がりのラグを気にせず運転できる。タイヤが滑ってもアクセルコトンロールがしやすいから、走らせていてとても楽しいのだ。
またコース設定では、広場をプラスチック製のボックスで仕切っているのも新鮮だ。これならコース設定も自在だし、全面的なクラッシュバリアになる。縁石に乗り上げる代わりにボックスのギリギリを攻めて、“チッチッ!”とタイヤをかすめる走りはなかなかにエキサイティングだ。
そんな筆者の走りはというと、39秒721がベストだった。チームベストも山本さんに持っていかれてしまったが、チームとしては総合3位、かつ琢磨選手にも勝ったからよしとしよう!
ちなみに総合優勝はかつて琢磨選手が活躍した「AJ FOYT RACING」で(笑)、全体ベストは「DALE COYNE RACING」のドライバーが38秒424をマークした。これはなんと、琢磨選手よりも0.179速いタイムだ。
とはいえレンタルカートは個体差もあるし、雨の状況や体重差によってタイムも大きく変わる。一番大切なのはエンジョイすることで、どしゃぶり・ずぶ濡れの中でもみんなが笑顔だったことが、イベントの楽しさを物語っていた。
琢磨流の壁に当たったときの立ち直り方とは
そして第二部では琢磨選手のトークショーが開催された。
まずは2024年、レイホール・レターマン・ラガニン・レーシングからスポット参戦したインディ500の予選や決勝レースを自ら映像とともに振り返って会場を盛り上げた。そして2025年もレイホールから75号車で参戦することがファンに告げられた。
さらに2025年は昨年よりも早くから準備を整えるために、3月末には現地に一度乗り込み、4月のオープンテストに備えるという。
またファンとの交流では、将来を夢見る若きカーターからの質問が印象的だった。「レースに限らずいろんな活動で、なにか壁に当たったとき佐藤琢磨さんはどうやって自分を鼓舞したり、立ち直ったりしていますか?」という内容だ。
これに対して琢磨選手は「まず壁に当たったときは、壁の高さを低くしましょう」と笑顔で答えた。「目標を下げると気持ちも楽になるし、まずは次の目標にいける。壁というのは一気に登れないんです。(中略)そこにたとえば3段くらいの跳び箱を付ければ、乗り越えられそうじゃないですか」。
今までやってきたことは、必ず力になる。それを信じてあげることは大事だが、「『そもそもなんで壁に当たった?』『なんで壁を越えられなかったのか?』という理由をちゃんと分析する必要があるんです。分析して理由が分かれば、それができれば対策ができるじゃないですか。だからまずはそこをやってもらいたいです」と語った。
そして「夢」と「目標」は似ているようで違うと語った。「夢はたくさん持っていた方が楽しいし、夢は大きい方がいいと思うんですけど、目標っていうのは高すぎるとだめなんですよ。目標が高すぎていつも失敗してしまうと、精神的にも『自分はできないんじゃないか?』と思っちゃうから、成功できるギリギリ、こう(手振りを加えて)ツメが引っかかるくらいのところに目標を置く。そして、それが簡単にできるようになると達成感も、満足感も得られなくなる。そうしたら上に上がる。そうすると、目標を達成する=確実に上に上がれる(ことになる)んですよね」。
そして最後に、レーシングドライバーの先輩として核心を語った。「目標を立てるときにもう1つ大事なのは『時間』なんですよ。時間は有限なんですよね。『いつかできる』って思っていると何も動けない。ボクもそうなんだけれども、『いやだけど、ここまでになんとかする!』って決めちゃうと、そこに行かざるを得なくなる。自らにプレッシャーを向けて、自らを奮い立たせて、(目標を)達成するためにがんばる。そのために必要なサポート(を得るに)は、みんなに自分の夢や目標を言ってください。そうしたら誰かが助けてくれる可能性がある。見ている人は見ているから。でも言わないと誰も気付かないので、それを口に出しながら目標を設定してほしいです」。
短い時間の中に、琢磨選手が培ってきたたくさんのアドバイスがこれでもかというほど濃く詰め込まれていた。きっと「HRS」や「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」でも同じように的確で、本質的で、熱のこもったアドバイスが行なわれているのだろう。筆者も琢磨選手の話を聞いて、自分を奮い立たせて締め切りを守れるモータージャーナリストになろうと決心した。
琢磨選手が3勝目を狙うインディーカー・シリーズ第5戦「109th Runnning of the indianapolis500」(インディ500)は、5月25日(現地時間)に開催される。















