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橋本洋平の東京お台場に誕生したEVカートサーキット「シティサーキット東京ベイ」を体験してみた

2023年10月28日 プレオープン

料金:6000円/名

10月28日にプレオープンするEVカートサーキット「シティサーキット東京ベイ」を体験

総合ディレクターの井上貴弥氏、舘信秀会長に新サーキットの狙いを聞く

 10月28日、東京お台場のEVカートサーキット「シティサーキット東京ベイ」(東京都江東区青海1丁目3)がプレオープンする。期間は11月22日までとなり、「プレオープンフェスティバル」として、EVカートやシミュレーターの乗り放題やオリジナルグッズのプレゼントなどが行なわれる。チケットの購入についてはシティサーキット東京ベイの公式サイトを参照いただきたいが、料金は6000円/名。同伴の小学生以下の子供1名まで無料(2名以降は2000円/名)。

 さて、そんなシティサーキット東京ベイを体験するために会場に訪れると、とにかく立地が最高だということに気づく。複合施設「パレットタウン」の跡地であり、つまりはあの観覧車があったところの下。メガウェブの入り口あたりとでも言えばよいだろうか。りんかい線の東京テレポート駅から徒歩3分、ゆりかもめの青海駅からはほぼダイレクトに入れてしまう距離である。

 シティサーキット東京ベイの入り口には小さな箱物が2つと大きな倉庫のような建物が1つ、そしてその奥に屋外コースが広がっている。小さな箱物の1つがエントランス棟となっており、その上にはVIPラウンジなども準備。もう1つの箱物にはロッカールームやシャワーが浴びられる環境まで整えられていた。そちらはまるでトレーニングジムのようでもある。

シティサーキット東京ベイの入り口
ロッカールームやシャワールームも用意
豪華なVIPラウンジ

 そして本題の1つとなる大きな建物に入っていけば、ピットレーンに加えミニサーキットがさらにもう1つあるから驚く。こちらは初心者や子供への対応を考えており、コース上にはプロジェクションマッピングを行なえるようにもなっている。さらにその奥にはシミュレーターが何台も並んでいるのだから驚きだ。これはこれまでにあったようなサーキットじゃない。

初心者や子供向けのミニサーキット

 一体どんな狙いでこの施設をスタートさせようとしたのかをトムス モビリティ事業本部 本部長であり、シティサーキット東京ベイの総合ディレクターでもある井上貴弥氏に伺ってみた。

株式会社トムス モビリティ事業本部 本部長で、シティサーキット東京ベイの総合ディレクターでもある井上貴弥氏

 井上氏は「音も排出ガスもないEVカートを使って都市部でレースをやりたいという構想は以前からありました。お台場で2022年11月に開催したモータースポーツジャパンで、EVカートでのデモンストレーションナイトレースを開催したのですが、それがきっかけでこの場所を東京都さんと森ビルさんからご提案があり、サーキットを開こうとなったんです。東京都さんはインバウンド向けのナイトライフを充実させたいという想いがあったそうで、デモンストレーションナイトレースがそれだと思ってもらえたようです」。

「EVカートは室内でも走行可能なことから、そこにプロジェクションマッピングを与えることにしました。リアルな世界は当然おもしろいんですけれど、やはり裾野を広げるにはデジタルも必要だという考えですね。プロジェクションマッピングを使えばレコードラインやブレーキングポイントをゲームのように路面に出すことも可能。それを次第に消していきテクニックの向上につなげられればと思っています。そのシステムはすでに完成しています」。

「今後はマリオカートのように甲羅が飛んできたりという世界も子供たち向けに作ってみたいと考えています。楽しんでいるうちにクルマの扱いがうまくなっていけるような環境が整えばと思います。そしてスイミングスクールのようにここからバスが迎えに行って、気軽に通えるような環境を整えたいですね。カートが中心で人間形成とか語学なども学べれば最高ですね」と語る。

 すでに免許を持たない子供たちからの問い合わせがあり、「電車で1人で行ってもいいのか?」と聞かれたそうだ。これまでのレーシングカートといえば親がいなければなかなか乗れないものだったことを考えると、シティサーキット東京ベイの環境は夢のようである。

 この企画を見守っていたトムス 取締役会長である舘信秀氏もこう振り返る。

株式会社トムス 取締役会長 舘信秀氏

「僕たちは昔から都心で市街地レースをなんとか成立できないかを探っていたんですよ。けれども、市街地となると音とか排出ガスの問題でどうしても引っかかってしまう。EVカートは音も排出ガスも問題なく、しかも室内でも走行できてしまうし、時代的にも合っていますよね」。

「それにサーキットって基本的に遠いじゃないですか。人の目に触れないところにあるからなかなか注目してもらえない。こういうところであれば色々な人が見てくれますからね。興味を持ってくれる人が増えて、モータースポーツが広がってくれたらいいですね。会社帰りにでも寄ってもらえたらとも思います」。

井上氏と舘会長は「気軽に通えるような環境を整えたい」「会社帰りにでも寄ってもらえたら」とシティサーキット東京ベイについてアピール

 2024年春にはお隣に完全没入型体験施設「イマーシブ・フォート東京」がオープンする予定となっている。人の流れがさらに増えることでシティサーキット東京ベイへの注目が自然と増えてくることだろう。

お台場の真ん中で乗るレーシングカートは気分爽快

 さて、その施設はどんなものかを体験してみることに。そこでまず導かれたのはシミュレーターだった。キッズ用と大人用のカートが2台ずつ並べられた先にはモニターがあり、さっき外で見たコースを体験できるようになっているのだ。そこに乗り込んでみると、操作系はカートそのもの。ステアリングも十分に重く設定されており、本番さながらの環境が整っている。

 シティサーキット東京ベイの初走行がまさかのシミュレーターだったことに驚いたが、これならコースインの仕方も分かりやすいし、レコードラインやブレーキングポイントが導かれているから習熟度は短期間で行なえそうだ。いきなりコースに出るよりはるかに効率よくうまくなれそうな気がしてくる。

カートを用いたシミュレーター

 なお、子供や初心者向けにさらにやさしいシミュレーションもあり、そちらは広場でアクセルやブレーキ操作を学ぶところから始めるプログラムだった。これをやった後にインドアのコースでゆっくりと習熟させようという狙いなのだろう。残念ながら今回はプロジェクションマッピングによる体験は昼間だったので体験できなかったが、実際のコース上でラインやブレーキングポイントが出てくるのなら、そちらのほうがシミュレーターよりもよさそうな気がしてくる。

子供や初心者向けのシミュレーションも用意する

 さまざま見た後に今度は屋外コースのピットに向かってみた。そこにはレンタル用のヘルメットが用意されていたが、それをかぶる前にはオリジナルのバラクラバを受け取ってかぶることに。これならレンタルでも匂いや汚れを気にせずにいられそうだ。

オリジナルのバラクラバを使うのでレンタルのヘルメットも気兼ねなく使える
EVカートは「静音」「排出ガスなし」「デジタル制御」という特性を持つことで、騒音の軽減、環境負荷の低減、安全性の向上を実現でき、今まで郊外という立地に限られていたサーキットを都市部に作ることを可能にした

 コースを走ってみると、やはり気分は爽快。なにせお台場の真ん中でレーシングカートに乗っているのだから。遠くにはお台場のマンション群が広がるからなんだか異様だ……なんて思った瞬間に1コーナーである。

 たしかにシミュレーター通りにブレーキングしてターンインすれば、きっちりと安全に曲がれる感覚がある。とにかく静かで排出ガスも出ないが、たまにコーナーでタイヤがキュルキュルと鳴っちゃうあたりはなかなかレーシー。レンタルカートでフレームはBirel N35、しかも最高速は80km/hにも達するカート(このレイアウトだとそこまで出ていないと思うが)はなかなか疲れる。おっさんにとっては2~3回乗れれば十分かな、という本格ぶりである。

 実はシミュレーターの時点でも汗をかいていたほどなので、ジムとしても十分。どこかのトレーニングジムじゃないが、ちょこカートで定期的にやればダイエットにもつながるかも、なんて期待せずにはいられない。今後が楽しみになってくる施設だった。