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佐藤琢磨氏、インディ500の3回目の優勝を目指し、休館するウエルカムプラザ青山でトークショー

2025年3月30日 実施
今年もインディ500に参戦するレーシングドライバー佐藤琢磨氏がホンダウエルカムプラザ青山のトークショーに登壇した

 本田技研工業は3月30日~31日にかけて、ホンダ青山本社ビル建て替え前の最後のひと時をファンと一緒に楽しむクロージングイベント「ホンダ青山本社ビル グランドフィナーレ ~ウエルカムプラザフォーラム~」と題して、さまざまなコンテンツを展開している。

 初日となる30日は、HRS SUZUKA Motoクラスのプリンシパルである岡田忠之氏とHRCテストライダー高橋巧氏、、DragoCORSE代表の道上龍氏とF1ドライバー角田裕毅選手、レーシングドライバー兼HRCエグゼクティブ・アドバイザーの佐藤琢磨氏、二輪大型FUNカテゴリー責任者の坂本順一氏と電動二輪カテゴリー責任者の丸山智千氏など、豪華なトークショーが実施された。

ウエルカムプラザ青山の2階からゆっくりとした足取りで登場した佐藤氏

 佐藤氏は、今年もインディ500に参戦する現役ドライバーでありながら、HRS(ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿)のプリンシパル(校長)として若手ドライバー育成に尽力するほか、エグゼクティブ・アドバイザーとして国内外のドライバー育成戦略やプログラムの策定、レースの参戦計画や運営体制などの助言やサポートも行なっている。

 今回のトークショーでは、これまでのレース活動とウエルカムプラザ青山との関りなどを振り返る内容となった。

トークショーは整理券が配布され先着400人のみが入場できた。また、屋外でモニター越しにトークショーを見ることもできるようになっている

 佐藤氏は、1997年に鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F)を卒業し、2001年にイギリスF3選手権チャンピオン、マスターズF3優勝、マカオGP優勝など結果を残したことで、2002年にジョーダン・ホンダよりF1デビュー。2003年にはB・A・R ホンダに移籍し、2004年にF1第9戦アメリカグランプリで3位表彰台を獲得した。

ウエルカムプラザ青山ではインフォメーション冊子として「Welcome」を発刊。これは佐藤氏がジョーダン・ホンダからF1デビューした2002年の特集記事
B・A・R ホンダへ移籍した2003年にも冊子「Welcome」で独占インタビュー記事が掲載された
2005年もホンダのモータースポーツ参戦体制が特集され、佐藤氏の意気込みが掲載されていた

 F1ドライバー時代を回顧した佐藤氏は、「今は春開催ですが、当時の日本グランプリは最終戦に組まれていたので、鈴鹿でチャンピオンが決定するのも見どころの1つでしたね。それと今は入賞が10位までですが、当時は6位までで入賞するのが本当に大変。でも最終戦で5位に入って、その1週間後くらいにウエルカムプラザ青山に来た」と、F1ドライバーだったころを振り返った。

F1ドライバー時代の思い出を語る佐藤氏

 また、2010年にはKVレーシングからインディカー・シリーズに参戦。2011年にはインディカー・シリーズ第8戦で日本人初のポールポジションを獲得している。翌2012年にはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍し、第4戦サンパウロで自身初の3位表彰台を獲得したほか、第96回インディ500では終盤まで優勝争いを演じるも、惜しくも最終ラップでスピンでリタイヤとなった。

会場は安全を考慮して400人限定となっていた

 そのレースを振り返った佐藤氏は、「2012年に優勝争いをしてから、実際に優勝できたのが2017年、実に5年もかかりました。でも、それくらい勝つのは難しいことで、ドライバーがいくら速くても勝てるものではなく、エンジニアやスタッフとのチームワークが重要で、ほんの0.00ウンmmでもズレていてもダメ。そんな重要なか所が数百~数千あるのがレーシングカーですから、わずかなズレでもそれがたくさんあったら、まったく別のマシンになってしまうんです」と勝利の難しさを語った。

2017年のインディ500優勝を記念したファンイベントもウエルカムプラザ青山で開催された
当時のホンダの社長からインディ500の優勝を記念してNSXが寄贈された

 続けて、2017年に優勝した際、当時のホンダの社長から電話があり「何か乗りたいクルマとかある?」と直接聞かれ、自身が開発に携わっていたこともありNSXをお願いし、その納車式もウエルカムプラザ青山で行なわれ、ホンダ社員が祝福してくれたという。

 そして2020年の第104回インディ500では予選で日本人過去最高位となる3位を獲得し、決勝レースでは2度目の優勝を果たしている。佐藤氏は、「当時はコロナ禍だったから、無観客でとても寂しかったのを記憶している」と語ったほか、「あとインディはF1と違って日本での開催が今はない(2011年まで開催されていた)ので寂しいんですよね。みんなの前で走れるチャンスが、ホンダサンクスデイ(=モビリティリゾートもてぎで開催されるファン感謝イベント)しかないんだもん。だからホンダサンクスデイでは、この音を聞いてくれ~! この走りを見てくれ~! って周囲のドライバーよりかなり本気で走っています」と観客の笑いを誘った。

ホンダは優勝マシンをチームから買い取り、動体(きちんと整備して走れる状態)保存しているという

 続けて2025年の参戦についても触れ、「今回参戦するにあたり、当時一緒のチームにいたエンジニアで、今は引退していたのですが、お願いして呼び戻しました。ほかにも何人か当時サポートしてくれたスタッフに集まってもらいました。他にも今スーパーフォーミュラで岩佐歩夢選手のマシンを作っているメカニックのトミーさんも、歩夢には『先着順だから5月は俺。ゴメンね』と言ってインディに来てもらうことになっています。やはり知っている顔が多いほうが心強いし、安心できるんですよね」とコメント。

すでに発表されているが、2025年もインディ500に挑戦する佐藤氏
3回目の優勝を目指すと語る佐藤氏

 加えて「インディ500はレースだけでなく雰囲気が桁違いですよ。鈴鹿のF1日本グランプリは1日で10万人ちょい観客が入りますが、インディ500は1日で35万人。どんだけ人が集まるんだっていう感じ。しかも鈴鹿サーキットよりも小さいコースですからね。鈴鹿の130Rみたいな高速コーナーが4つあるようなコースを380km/hで走りますから、しびれますよ。もうこれはぜひ現地で観戦してもらえたら嬉しいです。3台目の優勝マシンもウエルカムプラザ青山に並べたいですね」と締めくくった。

 なお、トークショー全編はYouTubeで視聴できるほか、2日目となる31日は、全日本トライアルにTEAM MITANI Hondaで参戦する小川友幸選手、フリード開発責任者 安積悟氏とシビックTYPE R開発責任者 柿沼秀樹氏とS660開発責任者 椋本陵氏、HRS SUZUKA Motoクラスのプリンシパルである岡田忠之氏とNakajima Racing監督 中嶋悟氏のトークショーなどが予定されている。

Welcome Plaza AOYAMA Grand Finale ~Welcome Plaza Forum~
ホンダ青山本社ビルは2025年度に解体され、同地に建設する新たなビルは2030年度の完成を目指している