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佐藤琢磨選手、HRC「エグゼクティブ・アドバイザー」就任 HRCブランド商品展開の際には琢磨選手の経験と知見を投入

株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺康治氏(左)と、佐藤琢磨氏(右)

インディ500を2度優勝した佐藤琢磨選手がHRC「エグゼクティブ・アドバイザー」に就任

 本田技研のレース活動を担当するHRC(ホンダ・レーシング)は2月19日、佐藤琢磨選手がHRC「エグゼクティブ・アドバイザー」に就任すると発表した。

 佐藤琢磨選手は1997年にホンダのドライバー育成プログラムである鈴鹿レーシングスクールを首席で卒業。2001年に英国F3選手権チャンピオンを獲得し、2002年からF1に参戦。2004年のアメリカGPでは日本人最高位となる3位表彰台を獲得した。

 2010年よりアメリカのインディカー・シリーズに参戦し、2017年に日本人として初めて世界三大レースの1つである「インディ500」を優勝。2020年にも優勝し、インディ500を2度優勝するという快挙を成し遂げている。2024年も5月26日に開催されるインディ500に、Rahal Letterman Lanigan Racing(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)から参戦し、3度目の優勝を目指して戦っていく。

 佐藤琢磨選手はHRS(ホンダ・レーシング・スクール)のプリンシパル(校長)として、次世代ドライバーの育成も行なっているが、HRCのエグゼクティブ・アドバイザーとしてより広い視野と立場でホンダレーシングに関わっていく。

 佐藤琢磨選手によると、日本での現場における最初の仕事は3月8日~9日に鈴鹿サーキットで行なわれるスーパーフォーミュラ開幕戦になるとのこと。これから、ホンダやHRC Sakura関係者へのあいさつなどを行ない、スーパーフォーミュラ開幕戦において国内の現状の勉強を行なっていくという。

 4月にはF1日本グランプリが同じく鈴鹿サーキットで開催されるが、そちらについてもまだ何も決まっていないとのこと。例年どおりトークショーやファンへのメッセージ発信を行なうが、詳細はこれらのようだ。

 ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺康治氏によると、佐藤琢磨選手の仕事は、国内外のドライバー育成戦略やプログラムの策定、レースの参戦計画や運営体制などの助言とサポートとのこと。ヨーロッパ、アメリカのトップカテゴリーで戦ってきた佐藤琢磨選手のアドバイスが活かされていくことになる。

HRCブランドの市販車にも佐藤琢磨選手の思いが込められるかも?

 渡辺社長によると将来におけるHRCブランドの商品展開の際には、佐藤琢磨選手のトップレーシングドライバーとしての経験と知見を投入するとのこと。“No Attack, No Chance”で知られる佐藤琢磨選手のチャレンジする心、新しい道を切り開いていく精神性が込められたクルマの登場に期待したい。

 渡辺社長は、将来HRCブランドで発売するクルマについては、「HRCブランドということなので、当然ながら走る楽しさやレースで裏付けされた技術を使ったものをしっかり商品に反映していきたい」と語り、構想は着実に進んでいる様子。

 琢磨選手は、何も決まっておらず自分の気持ちという部分と、SDGs、カーボンニュートラルという社会状況を前置きした上で、「やっぱり自分としては内燃機関エンジンですよね。あの気持ちよさと高回転ハイパワー」と語り、「なるべく身近な存在でお届けできるようなプランニングが一緒にできれば」とコメント。クルマを購入するところまで、腹案があるような感じであった。

 佐藤琢磨選手がHRC「エグゼクティブ・アドバイザー」に就任することで、これまでより日本のモータースポーツシーンにおいて佐藤琢磨選手を見かけることは多くなりそうだ。5月のインディ500挑戦と合わせて、佐藤琢磨選手の新しい挑戦には注目だろう。

佐藤琢磨氏のコメント

 長年にわたって私の『夢の実現』を支え、二人三脚で歩んできたHondaとの絆の象徴ともいえる『HRCエグゼクティブ・アドバイザー』への就任を心より誇りに思います。私が培ってきた技術と経験を後進に伝えていくことに加えて、自分も”No Attack, No Chance”の気持ちを忘れることなく、チャレンジャーとしてHonda/HRCとともに新たな挑戦を続け、さらなるHondaモータースポーツの発展に貢献できるよう努めてまいります。

株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺康治のコメント

 レーシングドライバーとして進化を続け栄冠に輝いてきた佐藤琢磨氏を我々HRCのエグゼクティブ・アドバイザーに迎え入れることを大変うれしく思います。佐藤琢磨氏には、これまでもHRSのプリンシパルとして若手ドライバーの育成に大きく貢献していただいておりました。今後はHRCのエグゼクティブ・アドバイザーとしてさらに活動の幅を広げ、Hondaのモータースポーツ活動を多角的にサポートしていただけることを心強く思います。また、佐藤琢磨氏の魅力は、そのドライビングスキルだけでなく『勝利を目指しチャレンジし続ける強い信念』にあると思います。今年もインディ500に果敢に挑戦する姿を称え、3回目のインディ500勝利という金字塔を打ち立ててくれることを心より願い、ファンの皆様とともに精一杯応援したいと思います。

佐藤琢磨氏の主な経歴

1997年
鈴鹿レーシングスクール フォーミュラ(SRS-F)を卒業

2001年
英国F3選手権チャンピオン
マスターズF3優勝
マカオGP優勝

2002年
ジョーダン・ホンダよりF1デビュー

2003年
B・A・R ホンダに移籍

2004年
F1 第9戦アメリカGPで3位表彰台

2006年
スーパーアグリ・ホンダに移籍

2010年
KVレーシングからインディカー・シリーズに参戦
第94回インディアナポリス500にてインディ500に初挑戦、20位完走

2011年
インディカー・シリーズ第8戦で日本人初のポールポジション獲得

2012年
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍
第4戦サンパウロで自身初の3位表彰台
第96回インディ500にて終盤まで優勝争いを演じるも、惜しくも最終ラップでスピン

2013年
AJフォイト・レーシングに移籍
第3戦ロングビーチでインディカー・シリーズ日本人初優勝

2017年
アンドレッティ・オートスポーツに移籍
第101回インディ500で日本人初優勝
この勝利により内閣総理大臣顕彰受賞

2018年
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍

2019年
鈴鹿レーシングスクール(現ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿)プリンシパルに就任
第103回インディ500でトップに約0.3秒及ばず、3位

2020年
第104回インディ500予選で日本人過去最高位となる3位
決勝レースで自身2度目となる優勝

2021年
第105回インディ500で連覇を狙うも、14位。

2022年
デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングから参戦

2023年
チップ・ガナッシ・レーシングからオーバルコースでのレース5戦に参戦、第107回インディ500は7位