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佐藤琢磨選手が二度目の優勝を果たしたインディ500を現地取材して、US-RACING 斉藤和記

インディ500を優勝した佐藤琢磨選手

 今回、第104回インディ500の予選と最終プラクティスのレポートを書かせていただいたUS-RACINGの斉藤です。佐藤琢磨選手の2度目の勝利の瞬間も現場で撮影することができて、ほんとうに感無量ですが、初優勝のときとはまったく異なる感動がありました。

 1989年からアメリカで取材を開始し、今年もインディカー・シリーズの開幕戦から取材するはずだったのですが、これまでに経験したことがないような世界規模のパンデミックが発生してしまい、スケジュールが大幅に変更されるなどでなかなか取材できませんでした。

 毎年必ず5月に開催されていたインディ500は史上初めて8月の開催となり、渡米できないまま時間だけが過ぎていく中、やっとインディ500の取材用パス発給が決まったのは8月。すぐに準備して飛行機に乗ったのが8月6日で、到着後アメリカ疾病対策予防センターの指針に従い、シカゴのホテルで2週間の自主隔離に突入です。そう、実をいうと予選が行なわれている最中はまだホテルで、日本人初のフロントロー獲得を見逃してしまい、かなりショックでもありました。

 やっと自主隔離が終わって現地入りしたのが20日、久しぶりに琢磨選手に会って「ようこそ、おかえりなさい!」と言ってもらってすぐに決勝。昨年の最終戦以来、ほぼ1年ぶりのインディカー撮影がインディ500となってしまい、その速さになかなか体が追い付かない焦りや、猛暑の中マスクをして機材を担ぎながらの移動や撮影で体が限界に近いところまでいきましたが、最後は琢磨選手の勝利にすべてが報われたような気がします。

30号車 パナソニック・ピープルレディ・ダラーラ・ホンダ

 正直言って、ここまでのストーリーはまったく予想していなかったというか、今年もスピードウェイに来れただけでも十分だったのに、琢磨選手の2勝目まで撮れてしまい、US-RACINGをサポートしていただいたみなさんや家族には感謝の気持ちしかありません。「これまでのインディ500で一番気持ちよく走れたクルマでした」と本人が絶賛するほど仕上がりがよかったと聞けたことが何よりでした。

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http://www.us-racing.net/modules/weblog0/details.php?blog_id=3435

 「(メーカーごとにエアロパッケージが異なる)初優勝の2017年はクルマのアドバンテージもありましたが、(同じエアロパッケージの)今年はまったくない中で、今持っているものを完璧にまとめ上げて、1つのバランスというか、ハーモニーの中に入れることができたという意味ではこれまでにない感覚だったし、それができたからこそ、ディクソンも追いつくことができなかったんではないかと思います」と僕のインタビューの中で語ってくれた琢磨選手。

 全員が同じエアロパッケージで競うというのが初優勝時とは大きく異なり、この点は非常に重要なポイントだと僕は思っていて、まさにこれまでの11年の経験がもたらした円熟の走りだったと言えるでしょう。

 今年はかつてないほど厳しい状況での取材となりましたが、それだけに琢磨選手の過去ベストな走りを撮れたのは最大の喜びであり、未だ厳しい状況の中にある日本のファンのみなさんに、こうして吉報を届けられたことをとても嬉しく思っています。ほんと、来た甲斐がありましたよ!