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ホンダ、セナとベルガーを勝利に導いた「ホンダ RA100E」主要部品をオークション販売 数千円単位の手ごろなパーツもEC販売する「メモラビリア事業」
2025年4月3日 10:28
- 2025年4月2日 開催
HRC(ホンダ・レーシング)は4月2日、東京・お台場で開催されているF1日本グランプリ公式プロモーションイベント「F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025」の会場内で、過去のモータースポーツ参戦で使用されたマシンのヘリテージ部品を販売する「メモラビリア事業」について紹介する説明会を実施した。
ホンダでは2016年1月に、MotoGPのオープンカテゴリーに参戦した「RCV1000R」で実際に使用されたエンジンバルブを限定販売した実績もあるが、F1マシンの関連パーツを販売するのは今回が初めてとなる。
世界中のレースファンやコレクターに“モータースポーツの歴史の一部”を所有する機会を提供するサービスとして行なわれるメモラビリア事業では、署名入りグッズや限定版のコレクターズアイテムに加え、ホンダが歩んできたモータースポーツの歴史にまつわる貴重な収蔵品など、幅広い高品質なコレクションを販売する。
この新事業開始の口火を切る第1弾商品として、1990年のF1世界選手権でアイルトン・セナ選手、ゲルハルト・ベルガー選手が使用したF1マシン「マクラーレン ホンダ MP4/5B」に搭載された実際のエンジン「ホンダ RA100E」を分解。エンジンブロックやシリンダーヘッド、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、バルブといった全パーツをパーツ別でセットにして、毎年8月に米国で開催されているヒストリックカーやヒストリックレースマシンの祭典「モントレー・カー・ウィーク」内でオークション販売することとなった。
数千円レベルの小規模なパーツ販売も検討中
説明会で登壇したホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺康治氏は、日本ではまだあまり耳慣れないメモラビリアという単語が「記憶に留めたい記念の品」という意味を持ち、スポーツ界では憧れのスタープレーヤーが着用したユニフォームや用具、写真やカードなどをスポーツメモラビリアと呼んでいると説明。
また、ホンダでは栃木県のモビリティリゾートもてぎ内にある「ホンダコレクションホール」、三重県の鈴鹿サーキットにある「Honda RACING Gallery」で数多くのレースマシンを収蔵・展示しており、一部で実際の走行が可能な「動態保存」を行なっている。この目的のため、現役を終えたレースマシンの動態保存に必要な主要パーツを交換用のスペアとして保管しており、自身でもホンダコレクションホールの倉庫で木箱に収められたまま未使用で残されたパワーユニットなどを目にすることがあると述べ、こうした所蔵品をレースファンなどと共有して日の目を見せることができないかと考え、周囲のスタッフとも相談を重ねて事業化を進めてきたとこれまでのいきさつを明かした。
第1弾商品として選ばれたホンダ RA100Eも35年に渡って箱詰め状態で保管されてきた予備エンジンであり、当時のホンダ F1参戦でエンジン組立を手がけていたHRCの熟練エンジニアがていねいに分解を実施。自身の背後に全点を並べた「オールパーツディスプレイ」で紹介している。
まずは8月に米国で開催されるモントレー・カー・ウィークの会場でオークション販売を行ない、日本でのオークション販売も実施する予定。また、F1に続いてインディカーやMotoGPといった高い人気を持つレースマシンでもパーツ販売をオークションで行なうほか、より多くの人にもレースヘリテージをパーツ所有で味わってもらえるよう、数千円レベルの小規模なパーツ販売をECサイトをつうじて行なう計画についても検討を進めているという。
最後に渡辺社長は、メモラビリア事業によってレーシングブランドであるHRCの価値をさらに高めていきたいと意気込みを口にした。
プレゼンテーション後に行なわれた質疑応答では、今後のHRCの事業運営について質問され、すでに米国で一部が始まっているホンダ車向けの「パフォーマンスパーツ」開発・販売をさらに進め、将来的なビジョンとしてはHRCブランドでの完成車生産についても意欲を示した。
また、メモラビリア事業とも連動した新しいアイデアとして、動態保存に向けたメンテナンスなどのシーンで大気放出される排出ガスに着目。往年のレースシーンの迫力を身近に感じてもらえるアイテムとして、エキゾーストパイプ直後で採取した排出ガスを缶詰にした「エンジン始動の空気缶」を作成。レースヘリテージを安価に体験してもらえる商品として今後の反響次第で販売したいと語り、サンプルとして作成した「マクラーレン ホンダ MP4/6の空気缶」「RA272の空気缶」を取材に訪れた記者向けのお土産として配布した。