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日産、追浜工場で量産EV「e-NV200」の出荷式を開催
「2015年3月末には急速充電器の数が大手ハンバーガーチェーンの店舗数を上回り、EVを所有するための環境は整いつつある」と片桐副社長
(2014/10/31 00:00)
- 2014年10月30日開催
日産自動車は10月30日、追浜工場(神奈川県横須賀市)において、同日に発売を開始した量産EV(電気自動車)の第2弾「e-NV200(イー・エヌブイ・ニーマルマル)」の出荷式を開催した。
e-NV200は、同社がグローバルに販売する量産EVとしては2車種目となり、ワゴンモデルと同時に初の商用モデルもリリースされる。製造はスペイン・バルセロナ工場のみで行われ、追浜工場において出荷前の最終的な品質チェックを行い、全国の販売店を通じて販売される。e-NV200のスペックや価格は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140609_652089.html)を参照いただきたい。
スペインで生産されたe-NV200を追浜工場で最終検査
まず、ステージに登壇した日産自動車 追浜工場 工場長 高橋徹氏は「このクルマは当社にとって2車種目の電気自動車になります。スペインのバルセロナ工場で生産されていますが、その後日本に輸出され、当追浜工場において日本市場導入前の最終検査を実施しております。追浜工場では2010年から量産型電気自動車『日産リーフ』の生産を世界に先駆けて始め、いわばEVのマザー工場です。スペインで生産された『e-NV200』についても責任を持ってお客様に満足のいただけるクルマをお届けしていきたいと考えています」と述べた。
次いで生産を担う日産モトール・イベリカのマネージングダイレクターであるフランク・トレス氏からのメッセージをビデオで紹介。トレス氏は「5月より世界の各市場と私たちのホームマーケットである日本へ輸出するために、同車の生産を行っています。e-NV200の生産は私たちの工場にとって最大の事業であり、非常に光栄に感じています。バルセロナは現在、日産として2車種目となるゼロ・エミッション車のグローバル拠点としての役割を担っています。e-NV200は電気自動車セグメントにおける日産のリーダーシップ拡大に貢献するモデルです。同車の生産を請け負うことは、バルセロナ工場にとってチャレンジングなことでした。世界中で販売する2車種目となる電気自動車の生産に挑戦することは、非常に大きな責任を負うことでもあります。しかし同時に、それはバルセロナ工場が持続可能な成長および品質面において実施してきたさまざまな取り組みが認められたということでもあります。100%電気自動車『e-NV200』は日産バルセロナ工場のコミットメントを、その高い品質で証明しています。バルセロナで生産されたe-NV200に、ぜひ世界中の皆さんにお乗りいただきたいと思っています」とコメントした。
トレス氏のメッセージを受け高橋氏は、「彼らの思いとともに我々追浜工場もEVのトップランナーとして、お客様の期待に全力で応えていきたいと思っております」と締めくくった。
そして高橋氏の「出荷開始です」の声とともにステージ上にe-NV200が登場。助手席から現れた日産自動車 副社長 片桐隆夫氏は6月の発表からお待たせしてしまったが、と前置きした後に「ようやくこの日を迎えることができました。このクルマが今後日本中を走り回り、新しい価値をお客様に提供し、お客様の満足に貢献するとともに、当社が掲げております“ゼロ・エミッションモビリティ”の実現に寄与することを強く期待しております」と述べた。
そして2010年に発売されたリーフの販売台数が4万5000台あまりであることに触れ、同時に全国の販売店に普通充電器や急速充電器を備えるなど、ユーザーが快適に使えるよう環境作りにも力を入れていると強調。また、自動車メーカー4社(トヨタ自動車、日産、本田技研工業、三菱自動車工業)などによる充電インフラ普及プロジェクトにも触れ、「業界の垣根を越えたインフラ整備が進んでおります。普通充電器、急速充電器ともにその数は今後もさらに拡大する見通しでございまして、高速道路のSA(サービスエリア)、道の駅、大型ショッピングセンター、コンビニエンスストア等、急速充電器の設置の動きも広がりを見せております。こうした取り組みによりまして、2015年の3月末にはおよそ6000基の急速充電器が日本中に設置される見通しでございます。これは大手ハンバーガーチェーンの店舗数の合計数を上回る数でございます。このように電気自動車を所有するための環境は整いつつあります。また、このところ各社こぞって電気自動車を市場に投入してきておりまして、カテゴリーそのものの勢いも増してきていると肌で感じております。当社もこの動きを創り出してきた先駆者であるという自負のもと、新しいe-NV200の販売も先行させていきたいと考えております」と締めくくった。
e-NV200の導入を決めた企業や自治体がプレゼンテーションを実施
出荷式を締めくくったのは、e-NV200の導入を決めた企業や自治体によるプレゼンテーション。2014年9月末時点での導入企業、自治体は69カ所あり、その中から日本郵便、みやぎ生活協同組合、DHLジャパン、リビエラリゾート、神奈川県横須賀市、鹿児島県薩摩川内市の代表が登壇した。
日本郵便 執行役員 荒若仁氏は、電気自動車は充電時間、走行距離の問題があるものの、「運送業務では環境問題も重要視される。そのためe-NV200には期待しており、実証実験も行った。使い勝手がよく停止や加速もスムーズ。経済性の面からも期待している」とした。
すでに6台のリーフを活用するなど、CO2削減に取り組んでいるみやぎ生活協同組合。専務理事の大越健治氏は11台のe-NV200の導入を決めたといい、その理由について「クラストップの先進性があり、商用車なので営業活動だけでなく商品の配送等にも活用できる。大容量の車載バッテリーによりどこでも給電できる仕組みがあり、大規模災害時の事業復旧、会員への商品提供の継続が可能だから」と語った。
国際間のエクスプレスデリバリーサービスを行うDHLジャパン 代表取締役社長 山川丈人氏は、CO2を2020年に2007年から30%削減することが目標であり、そのために航空機、車両、施設において省エネルギーの設備の配置を推進しているという。e-NV200を使い2013年に実証テストを行ったところ現場から好評を得たため、まずは2台の導入を決定した。1台は丸の内周辺の集荷、配送を、もう1台は東京税関との往復に利用するという。
逗子マリーナ、シーボニアマリーナなどリゾート事業を展開するリビエラリゾート 取締役社長 小林昭雄氏は「お客様の送迎用としてはもちろん、電力需要が夏に偏るため電気自動車の給電機能を活用してピークシフト、ピークカットに利用したい。災害時の非常電源の確保も重要なため期待している」とコメント。
そして追浜工場が位置する横須賀市の市長 吉田雄人氏は、「日本で一番EVに優しい街、EVタウンを目指している」といい、市役所で使うためのリーフを10台購入し、タクシー事業者に2年間無料で貸し出したほか、面積あたりの充電器の設置数が日本一であることなどに言及。また、新たに建設した関東大会レベルの大会が行われるサッカー場を無料で「リーフスタジアム」とするなど、自治体ならではの取り組みを紹介した。
また、鹿児島県薩摩川内市 企画政策部 新エネルギー対策課 課長 久保信治氏は、本土から23kmにある甑島において、「離島という特性を生かしてEVを導入したほか、超小型モビリティを20台導入したり、電気バスを導入するなどエコ、環境、観光の面でEVを利用している。また、自治体にとっては市民の安心、安全が重要。災害時の給電や電気が必要な要支援者への対策にも活用したい」とした。そのほか、今年度からはリユースバッテリー活用のための実証実験を行うなど、電気自動車の普及に弾みを付けたいと語った。