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石浦宏明選手にGT500活動終了について聞く、「引退ではなく、500の活動を終えるということ」「スピードに優れた選手に譲りたい」
2025年7月26日 06:33
7月25日、TOYOTA GAZOO RacingはSUPER GT GT500クラスで活躍してきた石浦宏明選手が2025年シーズンをもって同クラスでの活動を終了することを発表した。この発表は、26日から始まるスーパー耐久第5戦オートポリス前日に発表され、多くの人に衝撃を持って迎えられた。
石浦選手はスーパー耐久参戦のためにオートポリスを訪れており、この発表の真意について聞いてみた。
石浦選手は開口一番、「引退ではなく、500の活動を終えるということです」という。このニュースの衝撃が大きかったためか、レーシングドライバー活動から引退すると捉えられている面もあり、そのような反響が石浦選手のところまで届いているという。
石浦選手はこの時期に発表した意図を、「8月の富士の前に発表したかった。8月のレースを見に来てくれる人は多いし、8月のレースに集中したかった」と明かす。8月は1日~3日にSUPER GT第4戦富士、23日~24日に第5戦鈴鹿と2戦あり、そのカレンダーを配慮したとのこと。その前に発表することで、しっかりレースに取り組んでいきたいと語る。
石浦選手は速く強いドライバーとして知られており、またその開発力にも定評がある。実際GRヤリスの開発過程においては、GRヤリスの開発スタッフが「石浦レポート」と呼ぶものがあり、その場でのコメントもあるのだが、その後に細かな石浦レポートが送られてくると聞いている。2015年、2017年のスーパーフォーミュラチャンピオン獲得時も、チームとマシンをしっかり作り上げて着実にポイントを積み上げていたのが印象的。どちらも最終的には悪天候が絡みつつシリーズチャンピオンを獲得しており、厳しい状況でも勝ち残るドライバーである。
そんな石浦選手だが、「今のセルモチームであれば、僕のようなベテランドライバーと、スピードに優れる大湯選手のようなドライバーの組み合わせより、スピードスターのようなドライバーが2人いたほうがシリーズチャンピオンを狙える。自分として今は多くの仕事があり、いろいろなカテゴリーで自分の経験値が活かせる状況を得ているし、(その経験値を)必要としてくれる方もいる。自分の活躍できる場所で自分の力を発揮して、(GT500は)若くスピード抜群の人がよいのではないかと思っていた」と語り、開発しながらの戦いにより力点を移していく考えを示した。
また、石浦選手がこうしたことを決断できた背景には今のトヨタのドライバーの活躍の広がりがあるという。「今のトヨタのプロドライバーたちって、すごく夢がある世界にしてもらっている。夢が広がってますよね。チャンスが本当にたくさんあって、今海外に行っている中山とか小高ともそうですし、いろんなところで乗るチャンスがある。そういう意味では、自分が同じフィールドにいるよりは、自分が活躍できる場に早めに自分の決断でいけたらいいなと思っていた。何より自分で決めさせてもらえるなんて。若いときから毎年いつクビになるのかという契約で、年末に契約をしてもらえるのかとか。そういうふうにして過ごしてきたので、今のように、自分で決めさせてもらえるなんて、もうまったく想像もしてなかった」と、トヨタドライバーの活躍の場が広がるとともに、自分自身を次のステップに持っていきたいとの考えを明かしてくれた。
今後については、石浦選手自身が決めたと語るように、非常に多くの仕事があるようだ。「勝ちにこだわるレースをやりたいなと思います」と石浦選手は語り、開発をしつつ、さらに新しいカテゴリーに挑戦していく模様。となると気になるのはトヨタの新しいGT3の未来に石浦選手が絡んでいるのではという部分。
石浦選手はグッドウッドでのデビュー時にトヨタGTコンセプトや新型GT3のステアリングを握っており、その点についても聞いてみると「モリゾウさん(豊田章男会長)がワクワクするような新しいクルマだったり、レースだったりを用意してくれ、チャレンジがたくさんある。正直500を降りることに悲しい思いももちろんあるんですけど、それを上回るぐらいワクワクもたくさんある。」と、直接新型GT3マシンに言及することはなかったものの、何か新しいワクワクする未来があることは教えてくれた。
石浦選手に話を聞く中で何度か強調していたのは引退ではないということ。「引退ではないので立川さんのような会見もしません」「その新しいチャレンジを応援してもらいたいなと思います。引退しないぞということです」「引退はしません、誤解しないでください」と語り、GT500での活動は今シーズン限りになるが、石浦選手は新たなフィールドでのレース活動を続けていく。




