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パナソニック2025年度第1四半期連結業績、エナジーは増収増益で業績見通しは据え置き
2025年7月31日 12:30
- 2025年7月30日 開催
パナソニックホールディングスは7月30日、2025年度第1四半期(2025年4月〜6月)連結業績を発表。EV用車載電池などの事業を行なうエナジーのセグメント業績は、売上高が前年同期比3%増の2193億円、調整後営業利益が101億円増の318億円と、増収増益の内容となった。
パナソニックホールディングス 執行役員 グループCFOの和仁古 明氏は、「車載電池については、北米工場の販売量が拡大しているが、原材料価格の低下に伴う価格改定などもあり、減収になった」と、車載電池事業の業績について総括。その一方で、同じくエナジーに含まれる産業・民生用の蓄電システムは、生成AI市場の拡大に伴うデータセンター向け蓄電システムの需要が好調を持続しており、増収になったことも示した。
エナジーの第1四半期のセグメント業績は、車載電池の落ち込みを産業・民生がカバーし、増収増益を達成したという構図だ。だが、車載電池の主力市場となる北米市場での第1四半期の生産実績は10.1GWhとなっており、前年同期よりも1.4GWh程度増えているという。
一方、2025年度(2025年4月〜2026年3月)におけるエナジーの業績見通しは据え置かれ、売上高は前年比19%増の1兆390億円、調整後営業利益は451億円増の1680億円と、引き続き大幅な増収増益を見込んでいる。
だが、車載電池については、やや慎重な見方を示している。
和仁古グループCFOは「長期的にはEV化が継続するという見立てに変わりはない。だが、トランプ政権における米国関税政策や、EV購入者に対する補助金であるIRA 30Dが、2025年9月末に廃止されることが決定したことも影響し、短期的にはEV市況の減速が見込まれる」と指摘する。
それでも、今回の決算発表でパナソニックホールディングスは、全社およびエナジーの通期業績見通しを変更しなかった。その理由として挙げたのが関税影響の不透明感だ。
「第2四半期以降の米国関税影響は、直近でも大きな動きが継続しており、引き続き流動的な状況にある。これを精査するのに時間を要するため」としており、「米国関税の影響は、とくに、エナジーやコネクトなどを中心にして発生している。車載電池では部材やセルにおいて影響がある」とする。
つまり、マイナス影響を具体的に算定できないために、修正を見送ったともいえる。
こうした動きを捉えながら、今回の決算発表のなかでは、同社の車載電池事業の主力となる北米車載電池工場における販売推移を、IRA(インフレ削減法)が開始された2022年度第4四半期にまでさかのぼって図表で示してみせた。
和仁古グループCFOは「2024年度は、IRA準拠となっている米国内で生産するパナソニック製セルの優位性を、戦略パートナー(テスラ)にもしっかりと評価してもらい、四半期ごとに販売量を拡大していった。その流れを受け、2025年度の期初時点では、戦略パートナーからのデマンド情報を勘案し、46GWhという年間販売見通しを公表した」とした上で、「その後、米国関税政策の急速な変更や、EV購入者に対する補助政策(IRA 30D)の廃止などが重なり、短期的には需要の一定の減速は避けられない見通しになっている。期初の状況よりは軟化せざるを得ないと判断している。また、IRA 30Dが需要に対して、どれぐらいの影響があるのかといったことにも注視しているところである」とした。
だが、販売量の修正見込みの下げ幅については、伸び率は鈍化するとはしながらも、前年度の規模を上まわると想定しているという。
「戦略パートナーのEVの販売は伸び悩んでいたが、米国で生産しているという競争力を生かし、四半期ごとに当社のポジションを高めることができている。戦略パートナーのなかでの採用を増やしてもらうことで、セルの販売数を増やしている」と説明した。
中国製セルの輸入が縮小し、米国で生産しているパナソニック製のセルを採用する動きが出ていることが、EV全体が販売減となるなかでも、セルの販売数を伸ばす要因となっている。
また、「EV購入者に対する補助政策は廃止が決定したが、電池の生産者に対するインセンティブである45Xは継続しており、それらに準拠する米国で生産するパナソニック製セルの優位性は依然として継続できる。また、新たに稼働したカンザス工場で生産するセルは、従来品よりもさらに5%容量を向上させており、戦略パートナーからも強い引き合いがある。今後も引き続き、市場動向や顧客動向に合わせて、適切に事業拡大を図っていくことになる」とした。
パナソニックエナジーでは、車載電池生産のカンザス工場を、当初計画を前倒しする形で2025年7月から稼働させているが、2026年度末(2027年3月)としていた32GWhでのフル生産への移行時期を未定と発表。「北米EV市場のデマンドが減速することを踏まえたものであり、当初の計画よりは後ろ倒しになる」と述べた。
一方、4680セルの生産工場として立ち上げている和歌山工場に関しては、「量産の立ち上げ準備が完了している段階にある。お客さまによるスペック確認や品質確認を行なっており、確認が取れ次第、出荷を開始していくことになる」と説明した。
なお、2025年5月に発表した1万人の人員削減の進捗についても言及した。
和仁古グループCFOは「国内においては、事業会社ごとの事情に合わせ、従業員に対してプランの説明を開始したところである。第3四半期以降に従業員の意思を確認することになるため、まだ成果といえるものは出ていない。また、海外については、各地域や海外法人の事情に合わせて、それぞれのタイミングで実施する。国内に先行する形で進めることになる」とした。
パナソニックグループでは、国内5000人、海外5000人の合計1万人の人員削減を発表しており、2026年度までの2年間で実施する計画だが、その多くは2025年度で実行する考えを明らかにしている。





