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もてぎKART耐久フェスティバル “K-TAI”に挑戦してみた

2025年9月7日 開催
2025年のクラブレーシングの面々。中央後方の創始者の中部博さんをはじめ、山崎憲治さん、片岡英明さん、鈴木健一さん、工藤貴広さんらベテランから、橋本隆さん、西川省吾さん、黒木美珠さん、瀬イオナさんら若手のジャーナリスト、自動車メディアの編集者やその関係者などで構成されている

合言葉は「みんなでカートを楽しもう」

「もてぎKART耐久フェスティバル “K-TAI”(以下「K-TAI」)」は、モビリティリゾートもてぎを舞台に開催されるレーシングカートの耐久レースで、年に一度の祭典として恒例となっている。

 K-TAIは単に勝敗を競うのではなく、「みんなでカートを楽しもう」を合言葉に、気軽に家族や友達といっしょにモータースポーツを楽しんでもらいたいという願いを込めてこれまでも実施されてきた。

 それゆえルール作りも、「いかに楽しめるか」を重視したK-TAIならではの独自のルールを採用している。たとえばレース中にコース上で停止した車両をピットクルーの手元に回収し、再スタートしてレースを続行できるようにしているのもそのひとつ。また、スターティンググリッドも予選は行なわずクジ引きで決めることになっている。

 さらには、ドライバーやチームクルーだけでなく応援団のみんなにも楽しんでもらえるよう、1チーム最大10名のドライバーと最大11名のピットクルーやヘルパーによる合計21名ものチーム編成が許されているのも特徴的だ。

 エントリーフィーは1チーム8万8000円で、ドライバーの参加資格は10歳以上の競技ライセンス保持者もしくは16歳以上で原付免許以上を持っていて、公開練習での講習会を受講すればOKだ。そのほか詳細な参加条件や費用、参戦までの手順などについては、公式Webサイトをご覧いただきたい。

 実にリーズナブルに本格的なコースで本格的な耐久レースを楽しめることが特徴で、参戦マシンは基本的にレンタルカートと同じもので、クラスIは各社の200cc、クラスIIは各社の270cc、クラスIIIはヤマハ製の300cc、クラスEは電気カート、クラスF(Future)は次世代バイオマス燃料を使用するエンジンというように、指定エンジンにより5つのクラスに分かれている。

 慌てて危険な状況が起こらないよう、またマシンの性能差を緩和すべく、クラスによって給油時にピットに滞在しなければならない時間が決められているのも特徴だ。

 そんなK-TAIに2007年から参戦し続けている「クラブレーシング」というチームに、2025年は筆者(岡本幸一郎)も一員として加わることになった。

 クラブレーシングは、これまで自動車関連の執筆を多数手がけてきた作家の中部博氏が設立したレーシングチームで、自動車メディアに関わるメンバーで構成されている。それも、「若い自動車メディアに関わる人間に、モータースポーツの楽しさを知ってもらう」というクラブレーシングの方針により、積極的に若い人に声をかけてきたことで、20~30代のメンバーが非常に多いところも特筆できる。

自分たちでできることはやる

 2025年は、まず6月に埼玉の川越にある「HASEGAWA MOTORS」という自動車整備工場のガレージに参加可能なメンバーが集まり、マシン製作にいそしんだ。もちろん専門のプロの手を借りるが、できるところは自分たちの力でできるだけやるのもクラブレーシングのポリシーだ。

 さらに、6月と8月にK-TAI参戦者向けの練習走行会が実施されたので筆者も参加した。実は筆者もかつてカートで走り込んでいた時期があり、それなりに走れるようになっていたつもりだが、事情により何年もブランクがあいてしまった。

 それに1周4.8kmもありスーパーフォーミュラやSUPER GTも開催されるもてぎのロードコースのような大きなコースをカートで走るのは初めてのこと。全体的にスピードレンジは高く、とくに下り坂のダウンヒルストレートでは約120km/hにも達する。生身のままそんな速さで走るのはけっこうスリリングだ。

もてぎ名物のダウンヒルストレートではスピードが120km/hにも達する。筆者はここでちょっとがんばりすぎてはみ出してしまった……(苦笑)

 最初はカートの感覚そのものを思い出すのに苦労して、同じぐらいのタイムで走れるはずのメンバーより1周10秒ほど遅かったのだが、だんだん乗り方を思い出してきて同程度のタイムで走れるようになった。これなら本番もなんとかなるだろう。ところで、お恥ずかしながらレーシングスーツもカート用は耐火性ではなく耐摩耗性を高めたFIA公認のカート用が必要で、普通のレース用では走ることが許されないというのを初めて知った……(笑)。

筆者も周回を重ねるごとにだんだんカンが戻ってきた(ホントか……!?)

クラブレーシングは4台全車が無事に完走

 迎えた本戦、9月6日には参加受付/車検/特別スポーツ走行が行なわれ、翌9月7日にいよいよ7時間の決勝レースが開催。当日は天候にも恵まれて、暑くて熱い1日となった。

ブリーフィング。K-TAI本番での運営は、JAF公式戦と同等に、本格的かつ厳粛に行なわれる
ブリーフィング後に車検を実施。98号車のマシンはホンダGX200で、ダンロップのレンタルカート用タイヤを装着して臨んだ

 クラブレーシングは今回、GX270でクラスIIに、95号車「クラブレーシング・アン」、96号車「クラブレーシング・ドゥ」、97号車「クラブレーシング・トロワ」の3台、GX200でクラスIに、98号車「クラブレーシング・キャトル」の1台という、計4台ものマシンで参戦した。ドライバーが15名前後で、チームクルーと応援団を合わせると50名を超える大所帯だ。

98号車のレース運営に携わってくれたみなさん。ドライバーは西川省吾さんと長野優正さんと筆者

 筆者は同業若手の西川省吾さんと、知人編集者のご子息の長野優正さんとともに、3人交代で98号車を駆った。3人で7時間なので、1人あたりが走る時間がかなり長くなるが、たっぷり走れるのはむしろ大歓迎だ。

フォーメーションラップに送り出した98号車がなぜか返ってこないと思ったら、途中でストップしたらしく、回収されてパドックへ。ピットで調べたところ、チョークが戻っていなかったことが判明

 9時30分のレーススタートに向けて、9時すぎにフォーメーションラップが始まったのだが、なぜか98号車が返ってこない。なんと、チョークの戻し忘れで途中で失速してしまい、回収されてピットスタートとなってしまった……。

9時30分にレーススタート。すでに気温が高くなっていたが、95台のマシンは大きな混乱もなく1コーナーへ

 波乱の幕開けとなった98号車のレースは、その後は順調に周回を重ねていたが、終盤で他マシンとの接触によりカウルが破損して修復に時間を要し、また大きくコースアウトして復帰に手間取るなど、大なり小なり予期せぬできごとに見舞われたものの、無事にゴールを迎えることができた。

クラスIは5分のピットストップが義務付けられる。給油量が定められていて、あらかじめ計量しておいた携行缶を使ってドライバーも給油を行なう
7時間の耐久レース。関係者の厚意で焼肉にカレーと、毎年手の込んだ美味しい食事を用意してもらえるのもクラブレーシングのよき伝統だそう。ありがとうございました!
98号車西川選手の走り。「GX200」はクラブレーシングの中でも唯一、クラスIとなる。
先に走った西川省吾さんからアドバイスをもらう筆者

 クラブレーシングの結果は下記のとおりだ。

総合37位 96号車(クラスII 22位)クラブレーシング・ドゥ GX270 120周 L
総合51位 95号車(クラスII 26位)クラブレーシング・アン GX270 117周 Y
総合80位 97号車(クラスII 42位)クラブレーシング・トロワ GX270 104周 L
総合87位 98号車(クラスI 7位)クラブレーシング・キャトル GX200 93周

L:レディース賞対象車両
Y:ユースドライバー賞対象車両

レース終了。まもなくチェッカーというタイミングで、数台がからむやや大きなクラッシュがあり、赤旗が掲示された。全マシンがホームストレートに誘導され、そのままレース終了となった
クラブレーシング名誉会長の山崎憲治さん(左)と現会長の片岡英明さん(右)に労ってもらう岡本幸一郎(中央)

 98号車の結果は芳しくなかったが、初めて参加したK-TAIで、カートで走る楽しさと、国際的なサーキットでレースができる喜びと、仲間とみんなで耐久レースを戦う醍醐味を味わうことができて、楽しい思い出がまたひとつ増えた。ちなみに「モータースポーツの魅力を伝えていく」ことを大切に活動を続けてきたクラブレーシングは来年、創立25年の節目を迎える。筆者も何はともあれ来年はもっと上を目指して精進したいと思う。