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交通安全の最先端を突き進むボルボが提唱する「高齢ドライバーが安全に運転するための10のポイント」とは?
2025年12月3日 11:30
- 2025年11月20日 実施
グローバルにおける交通事故死者数の実態をご存じだろうか?
世界では毎年、およそ119万人が交通事故によって命を落としている。日本では1960年代後半~1970年代初頭にかけて1万6000人以上を数えていたが、それをピークに徐々に減少して2024年は3221人(30日以内死者数/警察庁交通局統計)となっている。
人口10万人あたりの30日以内死亡率で見ると2.59人。アメリカの12.76人(2022年)やフランスの4.80人(2023年)と比べれば低い数字だが、気になる点がある。それは死者数を年齢別で見ると、日本だけが65歳以上の人数が最多だということだ。
アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスではいずれも25歳~64歳が最も多い。またもう1つの特徴が、国別状態別30日以内死者数で見ると、各国は「乗用車乗車中」が最も多い中、日本は「歩行中」が36.1%と突出して多い点だろう。
昨今の高齢ドライバーの操作ミスによる交通死亡事故の報道は少々偏りすぎている印象もあるが、年齢別データを見る限り、交通事故ゼロに向けての対策の1つとして、高齢ドライバーの安全運転は大きな鍵を握っていることは間違いない。
さて、人口10万人あたり30日以内死者数において、2.18人(2023年)をはじめ常に日本の上をいく低い数字を出し続けているのがボルボのお膝元、スウェーデンである。
1995年に「ビジョン・ゼロ」の概念を導入した交通安全先進国だ。ボルボは1959年に3点式シートベルトを発明し、100万人以上の命を救ったといわれている。また1970年にはボルボ車が関連した事故現場に赴き、レスキュー活動を支援するとともにその事故の詳細を記録し、原因究明を行なう「事故調査隊」を発足。
以来、積み重ねてきたデータと知見を開発にフィードバックしてきた。そして自動車メーカーとしていち早く、2008年の時点で「2020年までに新しいボルボ車が関連する事故の死傷者をゼロにする」という「VISION 2020」を提言。
残念ながら達成には至っていないが、スウェーデンの交通事故減少に大きく貢献しているとともに、交通事故ゼロに向けて多くの自動車メーカーが同様の宣言を行なう流れをつくった功績は大きい。
高齢者の多い国で交通安全を高める方法はあるのか?
そんなボルボが、日本のメディアに「高齢ドライバーの安全運転」をテーマとするセミナーを開催した。講師としてボルボ・カーズ本社から来日したのは、長年ADASや自動ブレーキ、チャイルドセーフティといった安全技術のプロジェクトに関わり、1999年からはボルボ・セーフティセンターのマネジメントチームの一員として尽力してきた、まさにボルボの安全の第一人者ともいえるセーフティ担当シニア・アドバイザーのトーマス・ブロバーグ氏。
今回のセミナー開催の背景については、スウェーデンも日本も同じように高齢化が進んでおり、近年は特に高齢の車両乗員の交通事故死者数の割合が増加していることから、これまでボルボが確立してきたデータ収集、検証、独自の知見の構築によって導き出された、高齢ドライバーが安全運転をするための「ボルボからの提言」を行ないたいというプロローグが語られた。
そして最初に、高齢ドライバーにはどんな特徴があるのかを紐解いていく。あくまで年齢ではなく個人差に大きな変動性があることを念頭に置きつつ、高齢者は同じ機械的負荷でも重篤な損傷を負いやすいことや、特定の損傷を受けた場合に回復に時間がかかることが挙げられた。また、シートベルトの装着と姿勢に関する研究では、ユーザー調査を行なった結果、高齢者はベルトのフィット感の重要性に対する認識が低いことが認められたという。
高齢ドライバーの特徴をデータからひも解く
次に、交通事故につながるシニアドライバーの特徴をさまざまな角度から研究も行なっている。まず年齢によって影響を受ける運転の重要な要素として、「身体的要因」が視覚・感覚・筋肉。「心理的&認知的要因」が注意・認識・意思決定。「ミスを補う行動」として経験・運転時間・状況・方法があると分析。
実際に、交差点においてどこを見ているのか、35~55歳の運転者24名と75歳以上の運転者26名のデータを取得し調査した。評価項目は「首の動き」「安全確認時の視線移動とタイミング」「バックミラーの使用頻度」で、「首の動き」については前に倒す動きでは若年層と高齢者で差異はなかったが、左右に傾けたり回す動きでは大きな差異があることが確認された。
そして視線分布による関心領域にも違いが見られ、若年層は動く物体により注意を向ける一方、高齢者は静止物に集中する傾向があった。これは視野が狭くなることや、「周りの人の邪魔になりたくない」という意識が強まるためではないかと仮説を立てている。
次に、72歳以上のドライバー40名で路上における評価テストとして、45分間の運転と30~45分間のインタビューを行なった。その結果目立ったのは、直線道路であっても適切な速度調節に苦労する傾向があることと、交差点では注意力に関連するミスが発生しやすいこと。
こうして見えてきた「シニアドライバーの典型的な特徴」は、大きく5つある。
「速度への適応」
複雑な交通状況では、観察して判断・操作する時間を確保できないほど速い速度で走行してしまう。
「交差点での視覚的注意不足」
これはシニアドライバーにとって課題となりやすい。
「自己認識」
道路状況に合わせた運転ができていないことを意識できない傾向にある(通常の運転をしてしまう)。
「態度」
交通の流れを「妨げている」と思われたくない。
「ドライバーの類型」
自分の運転を過大評価する人は運転アシスト技術を受け入れにくい。
これらの特徴を踏まえ、シニアドライバーに必要なこととして、
「速度を落とす」
自分でしっかりコントロールできる速度で運転することが重要(高齢者だけでなく、すべてのドライバーに共通して大切)。
「自分の運転技術を正しく評価し、運転を練習する」
自分の運転スキルを客観的に評価し、定期的に練習を行なう。
「利用可能な技術の活用ー運転支援/衝突回避技術」
例えば自動緊急ブレーキ(AEB)や衝突回避ステアリングアシスト(AES)、ブラインド・スポット・インフォメーション・システムなどが有効との提言があった。
操作ミス自体は若年層でも起きているが……
また昨今のシニアドライバーに関するトピックを2つ取り上げ、1つめはペダルの踏み間違いについて。データとしては、ペダルの踏み間違いによる交通事故件数は若年層も多いのだが、それによって死亡事故につながるケースで見ると、若年層が0.8%にとどまるのに対し、75歳以上の高齢運転者では6.6%と増加し、ハンドルの操作不適と合わせると27.6%と一気に跳ね上がる傾向がある。
そして2つめは免許の自主返納について。スウェーデンでも免許返納については議論がなされており、年齢で区切るのではなく、個人の「状態」で判断するべきだと考えられている。
運転サポートシステムや移動手段は、すべての人のニーズに合わせるべきであり、例えば逆走については道路構造を見直すなどインフラで防いでいくこと、クルマ側でもできることはまだまだあるとの考えを示していた。
シニアドライバーが安全に運転するための10のポイント
トーマス・ブロバーグ氏は最後にまとめとして、「シニアドライバーが安全に運転するための10のポイント」を提言した。
1.「速度を控えめに」特に市街地ではスピードを落とし、観察・判断・操作の時間に余裕を持ちましょう。
2.「焦らず、意図をはっきり伝える」他車に急かされても無理をしない。ウインカー・車両位置・速度で自分の意図を明確に示しましょう。
3.「周囲への注意を高める」加齢で周辺視野や反応が低下することがあります。交差点や横断歩道など進路が交差する場面では特に集中を。
4.「運転の練習を続ける」不安があればためらわず、インストラクターの運転レッスンを受けましょう。
5.「カップルや夫婦の場合は、運転を交代で担当」し、2人とも練習できるようにしましょう。
6.「交通量の少ない時間帯・昼間に走る」可能であれば渋滞を避け、見通しのよい日中に運転しましょう。
7.「事前にルートを計画」出発前に行き先と経路を確認しましょう。最新のナビゲーションの活用も有効です。
8.「安全性能の高いクルマを選ぶ」衝突時の安全性、運転支援(ADAS)、明るい良質なヘッドライトを備えた車両が安心です。
9.「正しい着座とシートベルト」シート位置を調整して楽に操作できる姿勢に。ベルトのたるみは取り除き、体にしっかりフィットさせます。
10.「駐車操作はサポート機能を活用」360°カメラやバックカメラを使い、周囲の安全を確認しましょう。
ほとんどの項目は明日からでもすぐに実践できることで、付け加えるならば、まずは自分の運転を客観的に判断してもらい、どんな状況なのかを正しく認識することが大切だという話もあった。
日本では4.「運転の練習を続ける」ことはあまり浸透しておらず、免許を取得してから50年以上何もしていない人が多いのではないだろうか? 今後は、費用や場所など手軽に受けられる運転レッスンの普及が課題となりそうだ。
さらに、先進安全技術は軽自動車にも積極的に搭載されているが、そうした新型車の価格は高騰を続けており、年金暮らしのシニアが購入しにくいこともネック。既存の車両への誤発進抑制装置の後付けといった、費用負担なしまたは補助金での搭載をもっと進めていくことも必要ではないだと思う。
創業者から脈々と受け継がれる安全への使命とインスピレーションのもと、交通事故死傷者ゼロに向けて挑戦を続けているボルボ。今回のセーフティセミナーでの提言はきっと、日本のシニアドライバーの事故防止の一助となるはず。近くにシニアドライバーがいる方は、この記事をきかっけに改めて交通安全について考え、話し合っていただけたら幸いだ。









