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ボルボ、世界初の「マルチアダプティブ・シートベルト」 状況に応じて荷重設定を自動的に変更して乗員保護効果を向上

2025年6月5日(現地時間)発表
ボルボが世界初の「マルチアダプティブ・シートベルト」を発表した

 ボルボは6月5日(現地時間)、車両に搭載された高度なセンサーからのリアルタイムデータを活用し、交通状況の変化や装着しているそれぞれ人に応じて最適に作動する世界初の「マルチアダプティブ・シートベルト」を発表した。2026年に発表予定の新型バッテリEV「EX60」に初搭載される。

 マルチアダプティブ・シートベルトは、車内外のセンサーからのデータを活用し、その状況や身長、体重、体型、着座姿勢などの個人のプロファイルに応じて保護の設定をその個人にあわせて調整。例えば、大柄な乗員が激しい衝突事故に遭った場合は、頭部損傷のリスクを軽減するためにベルトのロードリミッターの荷重設定が高くするほか、小柄な乗員が比較的軽い衝突に遭った場合は、肋骨骨折のリスクを軽減するためにベルトのロードリミッターの荷重設定を自動で低くするという。

マルチアダプティブ・シートベルトはさまざまなセンサーと統合されることで状況に応じた最適な荷重設定を割り出すという

 現在のシートベルトは、衝突時にシートベルトが人体に与える力の大きさを制御するために、ロードリミッターを使用しているが、新しいマルチアダプティブ・シートベルトは、ロードリミッターのプロファイルを3種類から11種類に拡大し、設定可能なプロファイルの数を増やすことで、それぞれの状況や個人に合わせて性能を最適化できるように進化。

 従来のシステムとは異なり、車外、車内、衝突センサーなど、さまざまなセンサーからのデータを活用することができ、車両のシステムが、衝突の方向、速度、乗員の姿勢などそれぞれの衝突固有の状況を瞬時に分析し、その情報をシートベルトに伝達。そのデータに基づいて、システムが最も適切な設定を選択してくれる。

乗員の体格だけでなく、衝突したときの衝撃の強弱や方向性などもデータとして活用するという

 また、無線ソフトウェアアップデート(OTA)により、継続的に機能を向上できるように設計されていて、より多くのデータと知見を収集することで、車両が乗員や新たなシナリオ、事故への対応策を学習し、進化し続けるという。

 さらに、マルチアダプティブ・シートベルトはあくまで安全システムの一部であり、エアバッグ、乗員検知、運転支援システムとシームレスに連携することで、保護機能がうまく連動し、乗員保護効果が高まり、後遺症のリスクが最小限に抑えられるとしている。

ボルボ・カーズ・セーフティセンター衝突実験施設

 ボルボのセーフティ・センターの責任者であるオーサ・ハグランド氏は、「世界初のマルチアダプティブ・シートベルトは、自動車の安全性における新たな通過点であり、リアルタイムのデータを活用しさらに数百万人以上の命を救うという私たちの高い目標を体現する素晴らしい例です。これは、1959年に導入され、すでに100万人以上の命を救ったとされるボルボの発明である3点式シートベルトの大きな進化となります」と述べている。

ボルボ・カーズ・セーフティセンター衝突実験施設の内部
Meet the multi-adaptive safety belt(50秒)