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ホンダ、株主優待を大幅アップデート 新たに提供するファンサービス拡充の狙いとは?

モビリティリゾートもてぎ体験会で大勢の参加者が笑顔に!

2025年12月6日~7日 実施
ホンダの株主優待「モビリティリゾートもてぎ体験会」ではサーキットをマイカーで走るコンテンツも実施された

 本田技研工業は、業績に応じて株主に対して支払う「配当金」のほかに、株主にさまざまなサービスを還元する「株主優待」の内容拡充に力を入れている。

 本田技研工業 コーポレート管理本部 経理財務統括部 部長 伊藤功志氏によると、その背景には、2014年にスタートしたNISA(少額投資非課税制度)によって、企業ではなく個人の投資家が増えたこと。また、2024年にはより長期的な資産形成を後押しする「新NISA」へと制度が進化したことで、個人投資家がさらに増加している点が挙げられるという。合わせて2023年10月には、普通株式1株につき3株の割合で株式分割も実施し、より多くの個人投資家が参入しやすくなる体制を構築。実際に2023年3月から株主数も約3倍にまで増加している。

本田技研工業株式会社 コーポレート管理本部 経理財務統括部 部長 伊藤功志氏

 ホンダは、これまでにも1984年から、クルマやバイクの製造工程を見る「工場見学会」、2011年から、クルマやバイク、パワープロダクツ製品やモータースポーツなどいろいろなホンダを大人から子供まで家族そろって楽しめるイベント「Enjoy Honda」への招待、2012年から国内最高峰の自動車レースSUPER GTの観戦チケットプレゼントを、株主優待のサービスに取り入れている。

2023年にスタートしたホンダジェット体験会は大好評という
約40分の周遊を楽しめる「ホンダジェット体験会」

 そして2023年に、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット Elite II」の体験会を実施したところ好評だったことから、2025年からは新たにホンダ製エンジンを搭載した船舶に乗る「マリン試乗会」、自然とモビリティの融合総合施設を見学する「モビリティリゾートもてぎ体験会」、安全運転を楽しく学べる「セーフティスクール体験会」、ホンダの社会人ラグビーチーム三重ホンダヒートを直接応援できる「ラグビー試合観戦」、ホンダが運用しているカーシェアサービス「EveryGo」の「割引クーポン」を追加。伊藤氏は、「ホンダならではの体験サービスを提供することで、より長期的に株主になっていただくことを目指しています」と語る。

2025年からマリン体験会やモビリティリゾートもてぎ体験会など、大幅にサービス内容を拡充している

 2025年も10月にホンダジェットの搭乗、機体見学の体験会が大分県で実施され、約400倍を超える競争率(募集人数12人)を突破した株主が参加し、約40分の周遊フライトを楽しんだほか、11月にはマリン試乗会(募集人数20人)も実施され、東京都の夢の島マリーナからのクルージングを堪能したという。

 加えて、12月6日と7日には新たな株主優待サービスの1つ、「モビリティリゾートもてぎ体験会」が実施され、3116名の応募者の中から40人と、約78倍という確率を通過した株主が招待された。

 なお株主優待のイベントは事前応募による抽選制で、ホンダの株式を100株以上保有していることが必須となるほか、コンテンツによって保有継続年数「1年未満」「1年以上~3年未満」「3年以上」と条件が設けられている。

株主優待イベントは事前応募による抽選制となる。100株以上保有していることと、コンテンツによっては保有年数も必要となる

自然と乗り物が共存する「モビリティリゾートもてぎ」体験会を初開催

モビリティリゾートもてぎMAP

 モビリティリゾートもてぎは、茂木の大自然にかこまれた東京ドーム約137個分の敷地を持ち、自然との共生を主眼として開発し、「人・自然・モビリティ」の融合を体感できる総合施設となっている。

バイクの世界最高峰レースMoto GPが開催されるのは、日本では「モビリティリゾートもてぎ」だけ

 国内最高峰の四輪レース「SUPER GT」や「全日本スーパーフォーミュラ選手権」、バイクの世界最高峰レース「Moto GP」、速さではなくコントロールを競い合う「全日本トライアル選手権」などの大会が開催される「サーキットコース」だけでなく、いろんな乗り物に乗りながら迫力あるスピードの体感や、ものづくりの楽しさを発見したり、ゲーム感覚で交通マナーを学んだりと家族みんなが笑顔になるアトラクション施設「モビパーク」、里山の大自然を心ゆくまで体感できる森の自然体験ミュージアム「ハローウッズ」、ホンダ製品やレースマシンなどホンダの歴史や思いがつまった施設「ホンダコレクションホール」、レーシングコースを一望しながら贅沢な時間を楽しめる極上の空間「ホテルツインリンク」、安全運転を楽しく学べるがテーマのドライビングスクール「アクティブセーフティトレーニングパーク」なども備える。

2台の観光バスでモビリティリゾートもてぎ内を移動

自然を体験できる里山ミュージアム「ハローウッズ」を散策

 体験会当日は、20人ずつの2班に分かれて行動。記者の入る班は、ハローウッズの見学からスタート。敷地が広いので2台の観光バスで移動しながら、各ポイントを回った。

 ハローウッズへ向かう途中には、バスガイドさんからMFJ全日本トライアル選手権シリーズが開催されるエリアの説明があり、「自然の地形をうまく活用しながらコースを設計していて、別の場所から大きな石を運んでくる場合もあります」と教えてくれた。

MFJ全日本トライアル選手権シリーズが開催されるエリア。自然の地形を生かしたコースを作っているという
2023年のMFJ全日本トライアル選手権シリーズの様子。急な傾斜面を足をつかないように走り切る競技

 自然体験ミュージアム「ハローウッズ」の入口は高台にあり、開業した1997年当時は荒廃していたが、少しずつ手入れを行ない、今ではずっと元気で豊かな森になっている。また、2021年には栃木県から認定を受け、管理・整備された里山での動植物の生態観察、環境保全への興味・関心の促進を目的としたプログラムも実施。地域の小学校などをはじめとする教育の場としても活用されている。

 森林にはハッチョウトンボやホタル、タガメといった希少種をはじめ、森の番人と呼ばれるフクロウなど約5800種類の生物種が生息。さらに、計画的に木を伐採することで太陽光が地面に届き、豊かな森を育むと同時に木材も確保できるほか、切った木の切り株からは新しい芽が生まれ、若木が成長して光合成によりCO2を吸収するなど自然の循環を大切にしているという。

 体験会ではハローウッズの全体の3分1を散策。じゅうたんのように柔らかく重なった落ち葉や、大凶作といわれているどんぐりも豊富にあり、参加者は自然との触れ合いを楽しんでいた。

ハローウッズの入口
ハローウッズのスタッフ“だーさん”こと和田さんが施設や自然について案内しつつ、解説してくれた
参加した子供たちは昆虫やどんぐりなど自然を満喫
吊り橋をわたる経験もできる
高台からの見晴らしのいい景色
秋口は落ち葉のじゅうたんも楽しめる
木枠に落ち葉をためてカブトムシの幼虫などが生息できる場所を作っている
伐採した木で作ったブランコなども設置されている
サーキットの一部も見わたせる。サーキットと自然が融合したモビリティリゾートもてぎならではの景色
参加者もたくさんの映えスポットで記念撮影を楽しんでいた

マイカーでサーキットを走れる「サーキットクルーズ」

 続いて参加者は、当日モビリティリゾートもてぎまで乗ってきたマイカーでサーキットを走る「サーキットクルーズ」を体験。走行はコース2周のみだが、ホームストレートでは一旦停止して、約7分間の記念撮影タイムを用意。各自マイカーを降りてコース上での記念撮影を楽しんでいた。

モビリティリゾートもてぎは、楕円のオーバルコースと通常のサーキットコースが交わる部分が立体交差となっている。国内サーキットで立体交差があるのは、モビリティリゾートもてぎと鈴鹿サーキットだけ
サーキットクルーズは、2班に分かれて、先導するセーフティカーに続き1列に並んでの走行となる
事前説明で「最初は先が見えず、途中から下り坂になり、正面の壁に向かっていくように走る迫力ポイント」と説明があった約760mの裏ストレート。この迫力は実際にコースを走ってみないとなかなか味わえない内容だった
ホームストレートを歩けるのは、レースのスタート前に実施される「グリッドウォーク」などもあるが、とても貴重な体験となっていた
参加者はマーシャルカーと並んだり、レース用フラッグを持つなどして撮影を楽しんでいた
2周目には各車チェッカーを受けてコース外へ退出。スタッフみんなが見送りをしてくれる

ランチはグランドスタンドにあるVIPルームで!

 昼食はホームストレート前にあるグランドスタンド内の「VIPルーム」を特別に開放。VIPルームはレースなどで来賓やスポンサーなどが使用する部屋なので、普段は入れない。部屋の最前列からはオーバルコースやサーキットのホームストレート、パドックまでも見わたせる。モニターも完備されていて、レース開催時であれば順位やタイムなども確認できる。

サーキットを眺めながらのランチタイム
全面ガラス張りでコース全体を見わたせる

スタッフに解説してもらいながら「ホンダコレクションホール」を巡る

 最後はホンダの“夢と挑戦の物語”を体験できる「ホンダコレクションホール」の見学会。2024年3月に全面リニューアルしていて、大きな壁に幾度も阻まれながらも夢を諦めることなく突き進んできた挑戦の物語が感じられるほか、夢に向かって動き出そうとする人の力になりたいといった思いが込められた施設となっている。

 館内には自身のスマートフォンとイヤホンで追体験できる「音声ストーリーガイド」も完備されているが、株主優待の体験会では、館内スタッフが実際に解説しながら案内してくれる「ガイドツアー」を実施。より詳しい情報を聞きながらの学びのある見学となった。なお、ガイドツアーはいつも無料で実施している。

ホンダコレクションホールへの入館は無料だが、モビリティリゾートもてぎへの入場料、駐車料などは別途必要となる
ガイドツアーが説明しながら館内を案内してくれる
自転車にエンジンを載せたのがスタートだった
世界中で走っているスーパーカブ
実用車として人気のあった軽トラック「T360」
ホンダがF1初優勝を記録したマシン「RA272」
日本でF1ブームを巻き起こしたアイルトン・セナ選手が乗った「McLaren Honda MP4/6」(1991年)
二足歩行ロボット「アシモ(ASIMO)」の遍歴も見られる
1階ロビーではパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」の試乗会も実施されていた(※期間限定)
株主優待の体験会参加者の子供たちは、すぐに乗り方をマスターして楽しんでいた

モビリティリゾート体験会の参加者の声

 この日株主優待のモビリティリゾートもてぎ体験会に参加していた人たちは、モータースポーツからホンダを好きになった人や、投資としてホンダやホンダ以外の自動車メーカーの株を持つ人などさまざまで、サーキットクルーズで走ったマイカーも、ホンダ車は半数にも満たなかった。また、「モビリティリゾートもてぎがこんなに大きな施設で、里山やいろいろな乗り物もあるなんて知らなかった」「コレクションホールの展示車両の多さに驚いた」など、新たな発見を楽しんでいた様子。

 前出の伊藤氏は、「現状は保有年数が長いほど当選確率が上がるといった措置は考えておらず、100株以上の保有者すべて平等に抽選となります。また、モビリティリゾートもてぎだけでなく、鈴鹿サーキットの体験も検討していきたい。今後もより多くの人がホンダのファンになってくれるような活動を続けていきます」と語っていた。

 なお、ホンダの株式は現在1株1582円(12月23日時点)、優待は100株からなので、総額15万8200円ほどで参加申し込みが可能となる。直近の配当金は、2023年度が68円、2024年度が68円、2025年度が68円、2026年度は70円の予想となっている。

ホンダは2026年3月期の配当利回りは4.57%の見通しと高い水準を維持している
本田宗一郎氏の格言の1つ「やるからには一番困難な道をいく」