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タミヤ、ホンダの開発者を交えた1/12「Honda CB1000F」の発表記念トークイベント

実車とプラモデルの両面から開発秘話が語られる

2026年2月14日 開催
左から、株式会社タミヤ スケールモデル広報担当 山本暁氏、企画開発部 古谷隆久氏、本田技研工業株式会社 二輪・パワープロダクツ事業本部 商品開発部 CB1000F LPLの原本貴之氏、元Hondaワークスレーサーで評論家の宮城光氏

 タミヤは2月14日、東京・新橋にあるタミヤ製品を集めたショップ「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」において「Honda CB1000F」トークイベントを開催した。実車とプラモデルの双方の開発者からそれぞれの開発にかけた熱い話が飛び出し、会場は大いに盛り上がった。

CB1000Fの「CB」とはクリエイティブベンチマーク

 このイベントは、今春発売予定のタミヤ1/12オートバイシリーズ新製品「Honda CB1000F」の発表を記念したもので、ホンダからは二輪・パワープロダクツ事業本部 商品開発部 CB1000F LPL(開発責任者)の原本貴之氏、タミヤからは企画開発部の古谷隆久氏が参加し、さらにゲストの元Hondaワークスレーサーで評論家の宮城光氏が、それぞれの魅力を引き出す形で進行した。

実車のCB1000Fを交えて、トークはスタートした

 イベントは、まず実車側であるホンダの原本氏の説明で始まった。原本氏は2008年のPGM-Fiを搭載したCB400 SUPER FOURが設計人生の始まりとし、これまで自動車学校などで練習や試験に使うNC750など、教習車を多く担当した「珍しい」経歴の持ち主であると紹介された。

 今回担当した2025年11月発売のCB1000Fの話になると、まず、ホンダの「CB」の意味は諸説ありとしながらも、今回は「クリエイティブ ベンチマーク」と位置づけ、これからの基準になるものが「CB」だと説明した。

CBについて語り合う宮城氏と原本氏。原本氏はCB400やNC750の教習車を担当したので、2輪免許を取った人もこれから取る人も自分の担当車から逃れられない、と笑いを誘った

 ホンダではCBの語源について公式なものはなく、ホンダコレクションホールのテストドライバーも担当するゲストの宮城氏は諸説のひとつとして「クラブマン」だと話し、クラブマンレースの人にも乗れるスポーツバイクを目指してスタートしたというエピソードを紹介した。

 宮城氏はさらに「CBは世界中のバイクメーカーのベンチマーク、バイクらしさと扱いやすさ、幅広い年代に響く」「角が取れて、多くの人に扱いやすく、生産性も優れ、多くのお客さんの手の届くところにあるものがCBだと思う」とCBに期待することを述べた。

 原本氏はCB1000Fではそれらをふまえた上で、新しいCB、これからのCBを作ることがあり、過去のCBを調べるなかで「ベストバランス」を目指すことを決めた。すべてを新しくするとCBではなくなり、かといってCBらしさにこだわりすぎると新しくならない。この絶妙なバランスをとっていったという。

新しいCBはベストバランスロードスター

 スタイリングもゼッケン19番の往年のCBを示しながら、スペンサー・カラーを知っている層だけでなく、当時のレースを知らない世代からも「かっこいい」と思われるデザインを目指した。CB750FやCB900Fのストリームラインや、フラッグシップとしての風格、フロントまわりのたたずまいを継承しながら、現代の大型バイクらしい力強さと取り回しの良さを両立させ、積載性や2人乗りのしやすさも考慮して全体を再構築した。

 例えば、ヘッドライトの高さは、低くするとモダンになりすぎ、高くするとレトロになる。そこで、何度も何度も細かく調整して高さを決めた。ホーンは2個装備して初代CBのイメージを踏襲。燃料タンクについては、CB1000Fではホイールベースが短くなっているが、長さを抑えつつ容量を確保し、タンクキャップの位置も5mm変わるだけで印象が変化するため、こだわりながら位置を決めていった。

 そのホイールベースは65mm短縮。1000ccでありながら圧倒的な軽快感と取り回しのよさを実現したという。

CB1000Fの走りのねらい

 宮城氏はできあがったCB1000Fについて、200kg超の重さを感じさせない軽快感があり、アクセルを開けなければ非常にフレンドリーなバイクだが、アクセルを開ければ「恐ろしく速い」と評価した。

イベント会場に展示されたCB1000F、カラーはグラファイトブラック

実車開発者も興味を持つ、タミヤの成型技術

タミヤのCB1000F。手前が塗装して完成させたウルフシルバーメタリック(ブルーストライプ)、ボディ未塗装のウルフシルバーメタリック(グレーストライプ)

 後半はプラモデルのHonda CB1000Fの話。まず、司会のタミヤのスケールモデル広報担当の山本暁氏が、タミヤのオートバイシリーズとCBの関わりを紹介。第1号が1970年発売の1/6の「ドリーム CB750 FOUR」で、1981年発売の「CB750F」は現在まで継続して生産している超ロングセラーモデルであると紹介した。CB750Fについてはエンジンだけのプラモデルも発売された。

プラモデル側のトークが始まった

 CB1000Fの開発を担当した古谷隆久氏は「製作の敷居が高くないモデルにしたい」ということと、エンジンが見えて複雑になりがちなところを検討してまさに「ベストバランス」で開発した。プラモデルでは全部を再現できるわけではないものの、エンジンを見せ場として進めたという。

右がタミヤ 企画開発部の古谷隆久氏、左が司会のタミヤのスケールモデル広報担当の山本暁氏

 まず紹介されたのは水冷になったエンジンのまわりをラジエーターホースが複雑に取り回されている造形。組み立てやすくしながらも見た目の精密感を出すように設計し、ホースの耐久性を上げる網が組み込まれた表面を再現した。

まず、示したのがエンジンとラジエーターホース

 シリンダーヘッド、シリンダーブロック、クランクケースを締め付けるボルトは別パーツで表現。これは、別にすることで塗装がしやすくなるためだ。ただし、あまりに小さいパーツで、製作時にピンセットで飛ばしてしまう恐れもあるためランナーには予備パーツも用意した。

 見えにくいところでは、タンクに隠れてほとんど見えないエアボックス。穴の開いた筒状を表現する場合は成型の関係から2つのパーツを組み合わせるが、製作の敷居を上げたくないことから工夫して1つのパーツで表現した。

エアボックスのダクトを一体で成型。見えにくい部分まで作りこんでいる

 この点についてホンダの原本氏は性能に大きく関わるところで、作り込んだところであることから「そこに注目していただいてすごい嬉しい」と喜んだ。

 次にタンクやフロントフェンダー。プラモデルは成型上、左右のパーツを組み合わせることが多いが一体で成型している。金型の構造に興味を持った原本氏は「どうやって抜いているのだろう?」とつぶやくと、すかさずタミヤの山本氏は「見たい場合は、静岡にお越しいただければ……」と応え、場内を沸かせた。

フロントフェンダーと燃料タンクは一体成型。フェンダーはこれだけで別ランナーになっている

 マフラーの組み立てでは、継ぎ目が分かりにくいパーツ分割とし、ヘッドライトは接着剤の失敗で透明パーツが曇ることのないよう接着剤不要のはめ込み構造とした。テールライトもクリアレッドとめっきパーツの組み合わせで実車と同様のリフレクター構造として奥行き感を表現した。

マフラーはめっきパーツを2分割。中央をビス止めしめっきをはがす接着部分を少なくした
ヘッドライトははめ込み構造で非常に精度が要求される。宮城氏が接着剤だとべたべたになって指紋が付くと指摘すると、これには会場からもうなずく様子が見られた。
テールライトはクリアレッドとめっきパーツで再現

 液晶のメーターパネルの表現も、画面の艶感を出すためにスライドマークを貼ったパーツの上に透明のカバーをかぶせる構造とした。実車の液晶画面は中央以外は透明ではないが、塗装をしやすくするためマスクシールも付属している。

液晶のメーターパネルはスライドマークを貼った上に透明のカバーをかける

 ほかにも、フロントディスクブレーキもフローティングディスクの塗分けがしやすく、無塗装でも見映えがするようアウターローターとインナーローターを別パーツとし、シートの表面、フロントショックのめっきパーツの成型方法、1/12ながらチェーンを細かく再現したことなど、こだわりが多く語られた。

ブレーキはアウターローターとインナーローターを別にして、未塗装でも雰囲気が出せるようにした
シートは模様を再現、デカールでステッチも再現できる
フロントショックのめっきパーツは、ランナーとの接合をアンダーゲートとした
チェーンの表現

 また、ディスプレイして楽しむモデルのため構造面でのこだわりもある。実車では通常、サイドスタンドで立てかける。しかし、プラモデルとして並べるときは正立させることが多い。そこで、実車にオプション設定のあるセンタースタンドを装備した。

左がサイドスタンド、右がセンタースタンド。スイングアームの状態が微妙に違い、実車の開発者も納得の仕上がり

 ところが、センタースタンドで立てるとリアサスペンションが伸びることになるが、プラモデルでリアのダンパーやスイングアームを固定しているとタイヤが地面から大きく離れてしまう。そこで、スイングアームが動く構造とし、センタースタンドで立てた場合のスイングアームの動きを実車同様に再現した。

プラモデルの再現度を確認する宮城氏と原本氏

 ホンダの原本氏も、センタースタンド立てた状態を見て「すごいしっくりきていると思っていたんですが、謎が解けました。さすがです」と驚きの様子だった。

サイドスタンドを立てたところ
センタースタンドを立てるとわずかにスイングアームが動く

 ゲストの宮城氏から、模型化にあたって、実車そのままスケールダウンでなく違う比率にするなどの表現があったのかと問われると、古谷氏は、4輪車ではボディも調整することもあるがオートバイでは「わりとデフォルメなしで見映えがする」と返答し、今回はタイヤだけ若干太めにしているとのことだ。

 一般的には丸いパイプ類は模型化すると実際より細く見えることから太くすることもあり「(プラモデルを)ノギスで測って、この幅違うじゃないか! というのもあるかもしれない」とし、見た目に実車と差異がないよう調整しているとのことだ。

入っているパーツの組み合わせで、CB1000F SEのヘッドライトカウルやラジエーターカバーも付けられる

 ホンダの原本氏から、開発のなかで試行錯誤して決めた裏側の部品配置まで再現されているという感想が聞かれたほか、宮城氏も細かいパーツの組み合わせや構造を指して「もう実車と全く一緒でしょ。ごまかそうと思えばいくらでもごまかせるポイントもあるが、そこもきちんと再現している」と評価した。

パーツ一覧
実車のエンジンとラジエーターホース
プラモデルのエンジン部分
実車の燃料タンク
プラモデルの燃料タンク
実車のヘッドライト
プラモデルのヘッドライト、中の「HONDA」のシグネチャーレターも再現
実車のテールライト
プラモデルのテールライト。内部のリフレクターが奥行き感を出している
実車のメーターパネル
プラモデルのメーターパネル
実車のフロントブレーキ
プラモデルのフロントブレーキ

CB1000Fの実車を確認できる、TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO

 今回イベントを行ったTAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYOの店舗いちばん奥にあるMODELERS SQUAREは、通常、プラモデル製作教室やミニ四駆、RCカーの競技会などを行うイベントスペース。今回、プラモデルと見比べながらのトークショーとしては、初めて実車を運び込んでのイベントとなった。

TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYOには道路から見える位置にCB1000Fの実車を展示中

 また、TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYOでは「HondaとTAMIYAの世界展」の第3期を3月9日まで開催中。ホンダのF1マシン「RA273」の実車展示のほか、CB1000Fもシルバーの実車を2月16日まで、2月17日から3月9日まではCB1000F SEを展示中。さらに、3月9日から7月12日には、ホンダコレクションホールのあるモビリティリゾートもてぎでアンサーイベントとして「TAMIYAとHondaの世界展」も開催する。

もてぎのホンダコレクションホールで「TAMIYAとHondaの世界展」を開催

 なお、タミヤ1/12オートバイシリーズ新製品「Honda CB1000F」の発売日、価格は現在のところ未定。今回のイベントでは極めて完成度の高いものが展示されたため、そう遠くない時期に発表されそうだ。

タミヤからはセットで並べたいフィギュアとして「1/12 ストリートライダー」も用意される