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アストンマーティンの新型「ヴァンテージS」「DBX S」について、本社のプロダクトマネジメント責任者に聞く

アストンマーティンジャパンリミテッドは「ヴァンテージS」と「DBX S」の取材会を開催。アストンマーティンラゴンダより、リージョナルプレジデントとプロダクトマネジメント責任者の2名が出席した

 アストンマーティンジャパンリミテッドは2月26日、2025年に発表された2台の新型車を報道陣に紹介する取材会を、東京都港区にある「The House of Aston Martin Aoyama」にて開催。アストンマーティンラゴンダより、APAC担当 リージョナルプレジデントのカール・ベイリス氏と、プロダクトマネジメント責任者のニール・ヒューズ氏が登壇した。

 車両はスポーツカーにおけるパフォーマンスの頂点と位置付けられる「ヴァンテージS」と、SUVのスーパーカーで新たなフラグシップとなる「DBX S」の2台。

「ヴァンテージS」はアストンマーティンのハイパフォーマンスモデルの証である「S」モデルの血統を引き継ぐモデル。最高出力680PS、最大トルク800Nmを発生する
ヴァンテージSはFR(フロントエンジン/後輪駆動)にこだわり、最新テクノロジーを搭載した高性能シャシーを投入
アストンマーティンのSUVである「DBX」のフラグシップモデル「DBX S」
最高出力727PS、最大トルク900Nm。大柄だが軽量化をかなり意識したモデル
東京都港区北青山にある「The House of Aston Martin Aoyama」が会場となった
最初はAPAC担当 リージョナルプレジデントのカール・ベイリス氏より、ウェルカムメッセージとして挨拶と車両の概要が語れた
2023年にアストンマーティンのCEOに就任したエイドリアン・ホールマーク氏。経営だけでなくエンジニアリングの効率についてもよい影響を与えている人物だという
アストンマーティンの「S」シリーズの歴史
現在の「S」の車種構成。DB12Sの日本導入はもう少し先になるとのこと

アストンマーティンらしいスポーツカーとは?

 車両の細かい解説はプロダクトマネジメント責任者のニール・ヒューズ氏が担当。以下はニール氏の解説だが、その話の前に質疑応答で筆者が質問したことを先に触れておこう。

 冒頭の車両画像のところでも触れたが、今回の車両は2台ともとても高出力エンジンを搭載していて、最高出力は700PSクラス、最大トルクも800Nmや900Nmだ。筆者は過去に電子制御デバイスのない600PSクラスの加速を体感したことがあるが、スタートからしばらくは駆動輪のグリップがないだけでなく、その加速感は視点をどこに置いていい分からないくらい激しいもので、操るどころかただ乗っているだけのものだった記憶がある。

 それだけに、こうした数字は非現実的に思えるのだ。ただ、このクラスのハイパフォーマンスカーでは見慣れたものではある。ハイエンドのレーシングカーをしのぐ数値である。だからシンプルに考えればそんな性能を持ったストリートカーは「すごすぎる」のだ。

アストンマーティン プロダクトマネジメント責任者のニール・ヒューズ氏

 ハイブランドのクルマでは、そのような速さを特徴としているものもある。でも、アストンマーティンの車両はスポーツカーではあるが、過激な性格のものではなく、ラグジュアリーさや個性も大事にしている。そこから見ると700PSクラスの速さは快感と呼ぶには速すぎるもので、太いトルクは余裕というレベルを超えているものともいえる。

 そこで「こうした性能をどのようにしてユーザーにアストンマーティンらしく体験してもらうことを考えているのか?」と質問してみた。

 それに対してニール氏は、「確かに出力面では猛々しいものであるが、エンジン特性を決めるマッピングやそれを受け止めるシャシー関連の電子制御、そして機械的なジオメトリーなど、総合的にバランスさせることで、アストンマーティンらしい高いパフォーマンスを安心して体感できる仕上がりになっている」と答えてくれた。

 この話を先に触れておくと、この後出てくるテクノロジーについて、なぜそれが投入されているのかがよく分かると思う。

質疑応答で参加メディアの質問に答えるニール氏。筆者の質問にもていねいに対応してくれた
ボディサイズは4495×1980×1272(全長×全幅×全高)。ホイールベースは2705mm。エンジンはV型8気筒4.0リッターツインターボで最高出力680PS(500kW)/6000rpm。最大トルクは800Nm/3000-6000rpm。最高速度は325km/h、0-100km/hは3.4秒、200km/hまでが10.1秒と公表されている。車両価格は2760万円
リアまわり。マフラーは左右2本出し。小振りだが大きなダウンフォースを生むリアスポイラーとアンダーディフューザーの構成

ヴァンテージSの特徴はエンジン&シャシー

 ヴァンテージSに搭載されるエンジンは680PSというハイパワーとなっている。発生回転数は6250rpmとそれほど高回転域ではない。また、800Nmという最大トルクは2250rpmの低い回転数で発生するというセットアップ。そしてスロットル制御を見直すことで、ダイナミックでありつつ、通常のドライブでも扱いやすさを実現している。

 プラットフォームはアストンマーティンが誇るスポーツカー用のヴァンテージプラットフォームである。エンジンはバランスよくフロントミッドマウントされていて、このパッケージを様々なブランドが研究しているが、アストンマーティンだけの技術とのこと。

 重量配分は前後50:50を実現していて、ドライバーとの一体感、そして意のままに操れる運動性能を持っているが、このシャシーに使われているテクノロジーが非常にダイナミックなシステムでクラス最高のものとなっているという。

 ヴァンテージSはアストンマーティンの「GT3マシン」「GT4マシン」、それにフォーミュラ1で使用されているセーフティカーからの学びを得て、シャシーのダイナミクスを追求しているもので、基本の方針としては妥協を廃して車体との一体感を向上させたものとなる。

 その作りの特徴の1つが、ソリッドマウントのサブフレームを使用している点。これにより横方向剛性が30%向上したという。ただ、単純に硬くするだけではバランスがとれないため、トランスミッションマウントの剛性を10%低くすることで、エンジンやトランスミッションを積んだ状態で最適な剛性となるように調整しているとのことだ。

 また、ボディ形状からも分かるように、ハイパワーを受け止める後輪側はグラマラスな作りとなっているが、これは単純にタイヤが太いというだけでなく、リア側のサポート力を向上させるチューニングを行なっているとのこと。

 サスペンションは電子制御式で、ソフト、ハードの両方で最適化を施している。そのうえでモーションコントロールや減衰力などを調整できるようになっている。ちなみにイギリスの道路は日本よりも路面状況がよくないので、イギリスの道で安定した走行ができる作りであれば、日本を含む世界の多くの国で対応できるものになると語っていた。

 そしてサスペンションのジオメトリーに関しては、フォーミュラ1で使用されているセーフティカー由来となる「S専用」の数値を使用しているとのこと。そのため、よりダイナミックな走行体験を希望するユーザーにも満足できるものとなっている。

ヴァンテージプラットフォームについて
ヴァンテージSについて
エンジンについて
ハイパワーを受け止め、安定したドライビングを実現するためのシャシー
エクステリアの構成について
Sバッヂはプリント等ではなくて真鍮のベースにクロムメッキと赤色のガラスのエナメル焼き付けで仕上げたもの。1つずつ職人の手作業とのことだ
タイヤサイズはフロントが275/35ZR21(左)、リアは325/30ZR21(右)
ヴァンテージSのインテリア
助手席側
ステアリングまわり
センターコンソールまわり

SUVのフラグシップモデルとなる「DBX S」の特徴は?

  DBX Sのプラットフォームは5年前に発売されたものだが、構造は複合アルミニウムを採用していて、設計やデザインの自由度が高いものとなっている。これはアストンマーティンの車両の中でも新しい技術となる。

 搭載するエンジンはヴァンテージSと同じくV型8気筒4.0リッターツインターボだが、 DBX Sでは出力を20PS高めた727PSに設定している。これに貢献しているのがヴァルハラにも採用されている大型コンプレッサーホイールとターボテクノロジーである。この組み合わせによるパフォーマンスは0-100km/hが3.3秒といわれている。

 エンジン特性もヴァンテージS同様に、ハイパワーながら扱いやすいものとしていて、ゆっくり走ることも快適となっているそうだ。パフォーマンスの面でユニークな部分としては、マフラーの構造を見直すことで効率を落とすことなくV8エンジンらしいサウンドが楽しめるようになっている点。

 シャシーではステアリングのギア比を見直すことでDBXより応答性が5%向上。また、サスペンションなども見直されているので、俊敏性や応答性が改善されている。こういった部分をDBXからのノウハウが用いられていて,SUVながらスポーティな走行体験を実感できるとのことだった。また、細かいところだが最小回転半径も小さくなっている。

 ドライブモードについてもキャリブレーションを実施。これはチューニングの一環であり、対象となったのは「スポーツモード」と「スポーツプラスモード」。トランスミッションのギアシフト戦略と合わせて全体のバランスを整えたとのことだ。

 さらにブレーキの制御も変更されていて、ブレーキオフセットという部分のキャリブレーションを変更することで、ブレーキング時の車体の一体感を向上させている。4WDのトルク配分については、フロント47:リア53を標準とし、そこから100%後輪駆動まで完全可変駆動維持を行なえる仕様。リアのデフにはLSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)が装備されている。

DBX Sのボディサイズは5039×2175×1680(全長×全幅×全高)。ホイールベースは3060mm。エンジンはV型8気筒4.0リッターツインターボで最高出力535kW(727PS)/6250rpm。最大トルクは900Nm/3000-5250rpm。最高速度は310km/h、0-100km/hは3.3秒。車両価格は3590万円
駆動方式は4WD。マフラーは縦型に並んだ左右4本出し。ボディ下部のパーツにはラインが入り、ラインの色はレッド、シルバー、グリーンから選択できる
DBXのブラットフォームについて
DBX Sについて
エンジン自体はヴァンテージ Sと同様だが、ターボをバルハラで使用した大型のものとしている
ステアリング設定の変更について
ドライブトレーンの変更について

 DBXと比べてエクステリアには複数の変更点がある。まずはフロントグリルのデザインだ。アストンマーティンならではのフロントグリルが、ハニカム状デザインの大型グリルとなった。これはDBSからの流れのものとなる。このグリルの部分だけでも約3kgの軽量化を図っているとのことだ。また、ルーフをカーボンファイバーにすることで、こちらでも約7kgの計量化を達成している。

 軽量化についてはまだまだ行なっていて、 DBX Sに設定されているオプションのホイールは23インチと大径であるが、材質を鍛造マグネシウムとすることで、アルミホイールに対して1本あたり約5kgの軽量化を達成。この23インチ鍛造マグネシウムホイールは、自動車メーカーが純正装着するものとしては最大の大きさとなっているという(2026年2月時点)。ホイールを軽くすることでバネ下重量の低減となり、それがステアリングフィールや走行、安定性の向上に大きく貢献するという。

 DBX Sも700PSを超えるパワーを安心して使うためのエンジン特性の作り方や、シャシー設計、サスペンションの制御など、あらゆるところに最適化のためのチューニングが施されている。

 現在のクルマは多くの電子制御が採用されているが、ヴァンテージSや DBX Sレベルのパワーを持つクルマでは、その実力をどのように発揮するかという味付けにも電子制御は使われるので、ハイパワーすぎる現代のクルマにおいての「乗り味」とは制御の方向性や熟成度で決まるものともいえるだろう。

 そしてそうしたものをハイレベルにまとめているものが、現代のスポーツカーの姿だと思う。今回の取材会では、その点に対してアストンマーティンからは確固たる自信を持っていることが、はっきりと感じとれた。

 この後は資料画像と車体画像で紹介していく。またDB12Sについては、日本導入前ということで解説は省いて資料画像のみ紹介する。

DBX Sのエクステリアデザインについて
DBX Sのエクステリアデザインについて。リア側
フロントグリルはハニカム形状のデザインを採用。ここだけで約3kgの軽量化
マフラーは縦に並んだデザインで、左右振り分けの4本出し
鍛造マグネシウムのフロントホイール。アルミホイールより1本あたり約5kgも軽い。サイズは23インチ×10.0J。タイヤサイズは285/40R23
リアホイールのサイズは23インチ×11.5J。タイヤサイズは325/35R23
DBX Sのインテリア。ヴァンテージSと基本的に同じ
ステアリングまわり
後席も十分なスペースがある
シートは分割可倒式
DB12Sについて
DB12Sのエンジンについて
DB12Sシャシーの技術について
DB12Sのエクステリアについて