ニュース
アストンマーティンの新型「ヴァンテージS」「DBX S」について、本社のプロダクトマネジメント責任者に聞く
2026年3月2日 08:00
アストンマーティンジャパンリミテッドは2月26日、2025年に発表された2台の新型車を報道陣に紹介する取材会を、東京都港区にある「The House of Aston Martin Aoyama」にて開催。アストンマーティンラゴンダより、APAC担当 リージョナルプレジデントのカール・ベイリス氏と、プロダクトマネジメント責任者のニール・ヒューズ氏が登壇した。
車両はスポーツカーにおけるパフォーマンスの頂点と位置付けられる「ヴァンテージS」と、SUVのスーパーカーで新たなフラグシップとなる「DBX S」の2台。
アストンマーティンらしいスポーツカーとは?
車両の細かい解説はプロダクトマネジメント責任者のニール・ヒューズ氏が担当。以下はニール氏の解説だが、その話の前に質疑応答で筆者が質問したことを先に触れておこう。
冒頭の車両画像のところでも触れたが、今回の車両は2台ともとても高出力エンジンを搭載していて、最高出力は700PSクラス、最大トルクも800Nmや900Nmだ。筆者は過去に電子制御デバイスのない600PSクラスの加速を体感したことがあるが、スタートからしばらくは駆動輪のグリップがないだけでなく、その加速感は視点をどこに置いていい分からないくらい激しいもので、操るどころかただ乗っているだけのものだった記憶がある。
それだけに、こうした数字は非現実的に思えるのだ。ただ、このクラスのハイパフォーマンスカーでは見慣れたものではある。ハイエンドのレーシングカーをしのぐ数値である。だからシンプルに考えればそんな性能を持ったストリートカーは「すごすぎる」のだ。
ハイブランドのクルマでは、そのような速さを特徴としているものもある。でも、アストンマーティンの車両はスポーツカーではあるが、過激な性格のものではなく、ラグジュアリーさや個性も大事にしている。そこから見ると700PSクラスの速さは快感と呼ぶには速すぎるもので、太いトルクは余裕というレベルを超えているものともいえる。
そこで「こうした性能をどのようにしてユーザーにアストンマーティンらしく体験してもらうことを考えているのか?」と質問してみた。
それに対してニール氏は、「確かに出力面では猛々しいものであるが、エンジン特性を決めるマッピングやそれを受け止めるシャシー関連の電子制御、そして機械的なジオメトリーなど、総合的にバランスさせることで、アストンマーティンらしい高いパフォーマンスを安心して体感できる仕上がりになっている」と答えてくれた。
この話を先に触れておくと、この後出てくるテクノロジーについて、なぜそれが投入されているのかがよく分かると思う。
ヴァンテージSの特徴はエンジン&シャシー
ヴァンテージSに搭載されるエンジンは680PSというハイパワーとなっている。発生回転数は6250rpmとそれほど高回転域ではない。また、800Nmという最大トルクは2250rpmの低い回転数で発生するというセットアップ。そしてスロットル制御を見直すことで、ダイナミックでありつつ、通常のドライブでも扱いやすさを実現している。
プラットフォームはアストンマーティンが誇るスポーツカー用のヴァンテージプラットフォームである。エンジンはバランスよくフロントミッドマウントされていて、このパッケージを様々なブランドが研究しているが、アストンマーティンだけの技術とのこと。
重量配分は前後50:50を実現していて、ドライバーとの一体感、そして意のままに操れる運動性能を持っているが、このシャシーに使われているテクノロジーが非常にダイナミックなシステムでクラス最高のものとなっているという。
ヴァンテージSはアストンマーティンの「GT3マシン」「GT4マシン」、それにフォーミュラ1で使用されているセーフティカーからの学びを得て、シャシーのダイナミクスを追求しているもので、基本の方針としては妥協を廃して車体との一体感を向上させたものとなる。
その作りの特徴の1つが、ソリッドマウントのサブフレームを使用している点。これにより横方向剛性が30%向上したという。ただ、単純に硬くするだけではバランスがとれないため、トランスミッションマウントの剛性を10%低くすることで、エンジンやトランスミッションを積んだ状態で最適な剛性となるように調整しているとのことだ。
また、ボディ形状からも分かるように、ハイパワーを受け止める後輪側はグラマラスな作りとなっているが、これは単純にタイヤが太いというだけでなく、リア側のサポート力を向上させるチューニングを行なっているとのこと。
サスペンションは電子制御式で、ソフト、ハードの両方で最適化を施している。そのうえでモーションコントロールや減衰力などを調整できるようになっている。ちなみにイギリスの道路は日本よりも路面状況がよくないので、イギリスの道で安定した走行ができる作りであれば、日本を含む世界の多くの国で対応できるものになると語っていた。
そしてサスペンションのジオメトリーに関しては、フォーミュラ1で使用されているセーフティカー由来となる「S専用」の数値を使用しているとのこと。そのため、よりダイナミックな走行体験を希望するユーザーにも満足できるものとなっている。
SUVのフラグシップモデルとなる「DBX S」の特徴は?
DBX Sのプラットフォームは5年前に発売されたものだが、構造は複合アルミニウムを採用していて、設計やデザインの自由度が高いものとなっている。これはアストンマーティンの車両の中でも新しい技術となる。
搭載するエンジンはヴァンテージSと同じくV型8気筒4.0リッターツインターボだが、 DBX Sでは出力を20PS高めた727PSに設定している。これに貢献しているのがヴァルハラにも採用されている大型コンプレッサーホイールとターボテクノロジーである。この組み合わせによるパフォーマンスは0-100km/hが3.3秒といわれている。
エンジン特性もヴァンテージS同様に、ハイパワーながら扱いやすいものとしていて、ゆっくり走ることも快適となっているそうだ。パフォーマンスの面でユニークな部分としては、マフラーの構造を見直すことで効率を落とすことなくV8エンジンらしいサウンドが楽しめるようになっている点。
シャシーではステアリングのギア比を見直すことでDBXより応答性が5%向上。また、サスペンションなども見直されているので、俊敏性や応答性が改善されている。こういった部分をDBXからのノウハウが用いられていて,SUVながらスポーティな走行体験を実感できるとのことだった。また、細かいところだが最小回転半径も小さくなっている。
ドライブモードについてもキャリブレーションを実施。これはチューニングの一環であり、対象となったのは「スポーツモード」と「スポーツプラスモード」。トランスミッションのギアシフト戦略と合わせて全体のバランスを整えたとのことだ。
さらにブレーキの制御も変更されていて、ブレーキオフセットという部分のキャリブレーションを変更することで、ブレーキング時の車体の一体感を向上させている。4WDのトルク配分については、フロント47:リア53を標準とし、そこから100%後輪駆動まで完全可変駆動維持を行なえる仕様。リアのデフにはLSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)が装備されている。
DBXと比べてエクステリアには複数の変更点がある。まずはフロントグリルのデザインだ。アストンマーティンならではのフロントグリルが、ハニカム状デザインの大型グリルとなった。これはDBSからの流れのものとなる。このグリルの部分だけでも約3kgの軽量化を図っているとのことだ。また、ルーフをカーボンファイバーにすることで、こちらでも約7kgの計量化を達成している。
軽量化についてはまだまだ行なっていて、 DBX Sに設定されているオプションのホイールは23インチと大径であるが、材質を鍛造マグネシウムとすることで、アルミホイールに対して1本あたり約5kgの軽量化を達成。この23インチ鍛造マグネシウムホイールは、自動車メーカーが純正装着するものとしては最大の大きさとなっているという(2026年2月時点)。ホイールを軽くすることでバネ下重量の低減となり、それがステアリングフィールや走行、安定性の向上に大きく貢献するという。
DBX Sも700PSを超えるパワーを安心して使うためのエンジン特性の作り方や、シャシー設計、サスペンションの制御など、あらゆるところに最適化のためのチューニングが施されている。
現在のクルマは多くの電子制御が採用されているが、ヴァンテージSや DBX Sレベルのパワーを持つクルマでは、その実力をどのように発揮するかという味付けにも電子制御は使われるので、ハイパワーすぎる現代のクルマにおいての「乗り味」とは制御の方向性や熟成度で決まるものともいえるだろう。
そしてそうしたものをハイレベルにまとめているものが、現代のスポーツカーの姿だと思う。今回の取材会では、その点に対してアストンマーティンからは確固たる自信を持っていることが、はっきりと感じとれた。
この後は資料画像と車体画像で紹介していく。またDB12Sについては、日本導入前ということで解説は省いて資料画像のみ紹介する。















































