ニュース
スーパーGTは特別な思い入れのあるカテゴリー。セガ「プロジェクトモーターレーシング」開発者インタビュー
2026年4月8日 16:30
- 2026年3月25日 アップデート
大型アップデートを実施した「Project Motor Racing」
セガは、PlayStation5/Xbox Series X|S/PC(Steam/Epic Games Store/Windows)用ソフト「Project Motor Racing(プロジェクトモーターレーシング)」の大型アップデートを2026年3月25日に実施するとともに、日本のGTマシン9台とサーキット1種を収録したダウンロードコンテンツ「Japanese GT500 Pack」を3月31日に配信した。
大型アップデートでは、ゲーム全体のユーザーインターフェースを刷新し、ナビゲーションやメニュー、セットアップ、システム、レース情報などの視認性を改善。また、全クラスを対象にタイヤモデルやハンドリング、物理挙動を全面的に調整。摩擦挙動の改善やフォースフィードバックの拡張、衝突時のリアルな挙動の実装など、新たなアップデートも追加したことで、今までにないリアルなドライビング体験を実現したという。
さらに、4月1日よりアンチチートシステムの導入やレース参加フローの改善などオンライン機能を強化し、すべてのクラスが参加できるようランキングイベントも拡張。加えて、グラフィック品質とパフォーマンスの向上を図ったほか、レーシングチームの運営を体験できるキャリアモードでは、実在スポンサーや表彰台セレモニーなどを追加。新たなUIの導入と構造自体の改善により、より充実したゲーム体験の提供を目指した。
ダウンロードコンテンツの「Japanese GT500 Pack」では、GTレースの頂点ともいえるGT500クラスの魅力を体験できる日本車が登場。高いダウンフォースと精密なハンドリング、圧倒的なスピードを誇る現代GT500マシン5台に加え、ターボエンジンと個性的なエアロが特徴的な全日本GT選手権時代の名車4台を収録。また、テクニカルかつ高難度なレイアウトが特徴の「Takimiya Circuit」を収録して、より本格的なレース体験を楽しめるようにした。
今回、「Project Motor Racing」を開発するStraight4 Studiosのコミュニティとマーケティング責任者であるAlex Martini氏が、Car Watchのインタビューに応え、リリース後のユーザーからの評価をうけてソフトの改善に取り組んだこと、日本のモータースポーツへのリスペクトからダウンロードコンテンツ「Japanese GT500 Pack」を用意したことなどを語ってくれたので、その内容をお伝えする。
アップデート2.0は、プレイヤーが期待していた体験により近づけることが目標
──2025年に「Project Motor Racing」をリリースした後の反響についてお聞かせください。
Martini氏:ゲーム、特に本作は映画や本といったメディアと異なり、リリースして終わりではありません——その後も発展を続けていくものです。ローンチ時点でのゲームは、あくまでストーリーの一部に過ぎず、その後どう発展していくかも非常に重要です。
実際、Steam(PCゲームを購入・ダウンロードしてプレイできるオンラインプラットフォーム)ゲームの評価を見ても、パッチ(不具合を直すアップデート)を重ねるごとにプレイヤーからの反応が改善してきていることが分かります。ローンチ直後の明らかに厳しい評価から、現在は概ね好評へと変化しています。これは、リリース後に配信してきた7回のパッチが、シミュレーション体験の質や楽しさにしっかりと反映されていることの表れだと感じています。
アップデート2.0では、さらに大きな改善を目指しています。本来ローンチ時にプレイヤーが期待していた体験に、より近づけることが目標です。
リリース後の初動の反応がローンチ時点の本作を正確に評価したものだったかという問いは、究極的には、私たちが判断することではありません。プレイヤーやメディアの評価を受け止め、それを改善につなげていくことが重要だと考えています。私たちはシミュレーションを作ることに強い情熱を持っていますが、最終的にその評価を決めるのはプレイヤーです。満足していただけていないのであれば、その理由を理解し、期待を超える体験を届ける責任があります。
ゲームづくりに本気だからこそ、批判は重く受け止めざるを得ません。ただ、それもこの仕事の一環なのです。
大切なのは、その後どう行動するかです。私たちは寄せられたフィードバックを、その内容の厳しさや規模も含めて、すべて改善の出発点として受け止めてきました。そしてそれは、開発の優先順位やパッチの方針、今後の開発の進め方にも直接反映されています。
現在見られているユーザーからの評価の変化は、そうした取り組みの結果です。しかし、まだ改善の余地はたくさんあります。その上で、今回のアップデート2.0が配信されたことで、「Project Motor Racing」がようやくプレイヤーの皆さんに「楽しさ」と「興奮」をしっかり届けられる出来になっていると信じています。
──日本のレース「スーパーGT」のマシンを収録するにあたり、「Project Motor Racing」でこだわった部分について、お話を聞かせてください。例えば、2名のドライバーが交代して1つのレースを戦うといったスーパーGTにおけるレース展開の再現などはありますか?
Martini氏:スーパーGTは、スタジオとしても特別な思い入れのあるカテゴリーです。長年シリーズを追い続けてきたメンバーも多く、「Project Motor Racing」に収録することは開発初期からの目標のひとつでした。
最初の課題はライセンスです。複数のメーカーや関係者が関わるファクトリー主体のカテゴリーであるため、現行のGT500車両とJGTC時代の象徴的なマシンの両方について許諾を得るには、時間と慎重な調整が必要でした。中途半端な形ではなく、きちんと実現することを重視して進めてきました。
収録にあたっては、シリーズの両面を表現することを意識しています。現行のGT500車両をできる限り揃える一方で、2000年代初頭のカテゴリーを象徴するマシンもあわせて収録しています。これらは技術的には異なる時代の車両ですが、いずれも非常に高いパフォーマンスと、このカテゴリーならではの個性を持っています。他のどのカテゴリーとも異なる独自の魅力です。
ドライビングの観点では、GT500は非常にユニークなポジションにあります。高いダウンフォースと軽量な車体を兼ね備えており、そのグリップと応答性は従来のGTカーというより、プロトタイプカーに近い感覚です。そのため非常にやりがいがありますが、同時に高い精度も求められます。
アップデート2.0では、これらの車両にも最新のタイヤモデルとハンドリングの方向性が全面的に反映されています。より段階的なグリップ変化、限界域での分かりやすさ、そして操作入力と挙動のつながりが大きく向上しています。結果として、性能面だけでなく、それぞれの車両が持つ個性もより感じ取りやすくなっています。
レース要素についてですが、現時点ではドライバースワップには対応していません。そのため、実際のスーパーGTにおける耐久レースの要素は完全には再現されていない状況です。アップデート2.0ではまず、クルマの挙動やレスポンス、レース中の感触といった、コアとなるドライビング体験の完成度を優先しています。
今後、システムや機能の拡張を進めていく中で、そうした要素についても検討していきます。ただし、まずは土台をしっかり整えることが最優先だと考えています。
──GT500マシンの車両の再現にあたって、音やステアリングに伝わる感触など、こだわった部分について何かあれば教えてください。
Martini氏:GT500クラスについては、ひとつの性能カテゴリーとしてまとめるのではなく、各車両やそれぞれの時代が持つ個性をしっかり再現することに重点を置きました。
現行のGT500 EVO世代では、以下のような車両が含まれています。
・ 2024 Honda Civic GT500
・ 2022 Honda NSX GT500
・ 2022 Nissan Calsonic Impul Z GT500
・ 2021 Nissan Motul Autech GT-R GT500
・ 2022 Toyota GR Supra GT500
これらの車両は非常に高い空力性能と精密なメカニカル特性を持っており、高速域での荷重のかかり方や挙動の変化に重点を置いて調整しています。特に高ダウンフォースコーナーやブレーキング時、素早い方向転換における反応性が重要になります。ステアリングの応答性やフロントの入り、荷重がかかった状態での安定性については、鋭さと一貫性、そして現実感のある挙動を重視しています。
一方で、過去のGT500世代ではアプローチが異なります。
・ 2003 Honda NSX JGTC
・ 2004 Nissan Fairlady Z(Z33)JGTC
・ 2003 Nissan Skyline GT-R(R34)JGTC
・ 2003 Toyota Supra JGTC
これらの車両はレイアウトや挙動の幅が広く、空力よりもメカニカルな要素が強いドライビング特性を持っています。そのため、重量移動やバランス、限界域での挙動の出方に重点を置き、フロントエンジンとミッドシップの違いがしっかりと感じられるよう、それぞれの個性を際立たせています。
また、これらの車両においてはターボ特性やスロットルレスポンスの調整にも多くの時間を費やしました。ただし、限界域に近づくにつれて扱いが難しくなるという点は共通しています。
両世代を通じて重視しているのは、車がドライバーにどのように情報を伝えるか、その一貫性です。ステアリングの応答、タイヤの挙動、車両全体のダイナミクスがしっかりと連動し、ハンドルから感じる情報と実際の挙動が一致するよう設計しています。
その結果、このクラスは単に速いだけでなく、多様性があり、難しさとやりがいを兼ね備えたものになっています。各車両が、それぞれ異なる形でGT500のパフォーマンスを表現しています。
個人的な話になりますが、テスト初期の段階から2003年型Honda NSX JGTCには特に注目していました。非常にバランスが良く、タイトなコースでは特別な走りを見せてくれる一台です。
──GT500マシンが戦うスーパーGTではタイヤ選択もレース展開における重要なポイントになりますが、そういった部分で楽しめる再現などはあるのでしょうか?
Martini氏:タイヤはGT500のパフォーマンスを決定づける非常に重要な要素です。そのため、それぞれの車両が持つ特性の一部として、適切なタイヤ挙動を再現することに注力しています。
ライセンスが下りた中で、たとえばブリヂストンやミシュランといった実在メーカーの特性を反映しています。一方でライセンスの制約がある場合でも、汎用的な仕様で済ませるのではなく、実際のタイヤ特性に基づいて調整された代替モデルを採用しています。
重要なのは、タイヤを単なる交換可能なパーツとして扱っていない点です。各車両はタイヤの特性を前提に設計されており、コース上で感じる挙動(荷重のかかり方、スティント中の変化、操作に対する反応など)はすべてそこに直結しています。
このクラスの奥深さは、コンパウンドの切り替えにあるのではなく、それぞれの車両が持つタイヤ特性がドライビング体験そのものを形作っている点にあります。
──マシンとともに、スーパーGTが開催される国内サーキットの「岡山国際サーキット」「富士スピードウェイ」「鈴鹿サーキット」「スポーツランドSUGO」「オートポリス」「モビリティリゾートもてぎ」については、コースとして収録の計画はあるのでしょうか?
Martini氏:今回のパックでは、日本のサーキットを1つ収録しています。スーパーGTとの関わりが非常に深い、象徴的なコースを選定しています。
このサーキットはスキャンデータをもとに再現しており、路面の細かな起伏や高低差、縁石、レイアウトに至るまで、実際のコースをできる限り忠実に反映しています。
スーパーGTで使用されている他のサーキットについても、もちろん十分に検討しており、今後シミュレーションに追加していきたいと考えています。ただし車両と同様に、サーキットのライセンス取得は複数のステークホルダーが関わる複雑なプロセスであり、必ずしも希望するスケジュールで進められるとは限りません。
そのため、今回のリリースではGT500の体験をしっかり支えることを優先し、まずは1つのサーキットを高い再現度で提供することに注力しました。
今後、「Project Motor Racing」の拡張を進めていく中で、日本のサーキットを含むさらなる国際的なコンテンツの追加は、ぜひ取り組んでいきたい領域です。ただし、実現できるかどうかはライセンスの状況や今後のコンテンツ展開の計画によって左右されます。
──本作を遊んだ日本のプレイヤーにお伝えしたいことはありますか。
Martini氏:まずはじめに、「Project Motor Racing」をプレイしていただき、ありがとうございます。
日本のプレイヤーの皆さんには、「Project Motor Racing」に貴重な時間を割いていただき、心から感謝しています。特に、早い段階から参加し、率直かつ情熱のこもったフィードバックを寄せてくださった皆さんには、深く感謝しています。
ローンチ時の体験が期待に応えられるものではなかったことは、私たち自身も十分に認識しています。特にシミュレーションやモータースポーツ文化に強い思いを持つプレイヤーの皆さんにとって、大きな失望につながったことも理解しています。そうした声はスタジオ内でも重く受け止めており、その後の改善を進めるうえで重要な指針となりました。
また、チーム内には両地域におけるレースゲームの歴史に対する強い敬意があります。とりわけ日本では、SEGAのような企業が、ドライビングゲームのあり方を長年にわたって形作ってきました。そうした系譜は私たちにとっても大切なものであり、現代のシミュレーションを作るうえで常に意識しています。
「Project Motor Racing」に収録されている車両を見ていただければ、日本メーカーの存在感が大きいことに気づいていただけると思います。私たちは日本の自動車文化、そして世界のモータースポーツにおける日本の役割に強い敬意と愛着を持っています。開発者であると同時に、一人のファンとしてその想いが、ローンチ時の収録車両や今後のDLCにも反映されています。
アップデート2.0は「Project Motor Racing」にとって大きな前進となりますが、それ以上に重要なのは、私たちの開発の進め方そのものが変わったことです。より規律ある体制で、より焦点を絞り、プレイヤーの期待にしっかり向き合う形へと進化しています。
また、両地域においてモータースポーツが持つ重要性も十分に認識しています。日本における長いレースの歴史には、リアリティと競争に対する強い価値観があります。私たちはそれを大切にしていきたいと考えています。
「Japanese GT500 Pack」のようなコンテンツを通じて、そうした想いが体験として伝わることを願っています。改めて、これまでのご支援とご理解、そして率直なご意見に心より感謝します。皆さんの信頼に応えられるよう、これからも改善を続けていきます。









