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一部改良されたトヨタの新型「クラウン クロスオーバー」、デザイナーの宮崎満則氏は「よりワイド&ローなデザインに」と変更ポイントを語る

9月3日に一部改良が発表された新型「クラウン クロスオーバー」。左が一部改良後のもので、右が一部改良前のもの。ぱっと見には違いが分かりにくいが、左のクラウン クロスオーバーにはワイドな印象があり、すっきりしたデザイン感がある

 9月3日に一部改良が発表され、同日に発売されたトヨタ自動車の新型「クラウン クロスオーバー」。トヨタのWebサイトで先行して改良型のデザインが公開され話題となっていたが、発売日を迎えたことで実車が登場したことになる。

 この一部改良が行なわれた16代目クラウンのクロスオーバーをはじめとしたクラウン群だが、燃費低減を図りつつ出力向上を同時に実現するなど興味深い改良が行なわれている。外観デザインについては下記のように箇条書きでクラウンのWebサイトで発表されているものの、これだけでデザイン変更の背景にある意図を読み取ることは実質不可能だろう。新車の登場であろうと、一部改良であろうと、クルマを購入する人にとっては大切な1台であり、一部改良の場合に箇条書きとして告知が行なわれるのは、その理由は何となく想像がつくものの、やや残念な流れであるかもしれない。販売プロモーションは行なわれているようなので、正式なリリースでしっかり告知されることにも期待したい。

16代目となった新型クラウンのデザイン群を担当したトヨタ自動車株式会社 新型クラウン プロジェクトチーフデザイナー 宮崎満則氏

クラウン(クロスオーバー)

▽外観デザインの変更
──リアデザインの変更により、安定感のあるワイドスタンスを実現
・バイトーンの構成を変更、ボンネットフードとベルトラインから上のキャビン全体をブラック化
・フロント・リヤアーチモールディング、フロント・リヤバンパー下モールディング、ドア下モールディングをピアノブラックに変更
──存在感を放つ深みのある“ニュートラルブラック”採用

 と、デザイン面での意図や、変更点の詳細があまり分からなかったため、9月6日にクラウン専門店「THE CROWN 愛知高辻」におじゃますることで、「THE CROWN Lifestyle Session」に登壇したプロジェクトチーフデザイナー 宮﨑満則氏に詳細を聞くことができた。

 これはイベントでも語られていることではあるが、2022年7月に16代目として世界初公開された新型クラウンはクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートの4車形でお披露目。プレゼンテーションを行なった豊田章男社長(当時)は、「新時代のクラウンの誕生」と紹介した。

 16代目クラウンでも歴代クラウン同様「革新への挑戦」を掲げており、特に最初に登場するクロスオーバーは「セダンを超えるセダン」として登場することもあり、SUV的な要素を色濃く反映していたという。

 それが、登場時にイメージカラーとなったバイトーンのボディカラーであり、マット仕上げのフェンダーアーチに反映されていたとのことだ。このバイトーンのボディカラーのブラックの部分をリアまわりまで回り込ませるために、リアバンパーエリアを3分割。ボディカラー、バイトーンブラック、ボディカラーという色で作り上げることでバイトーンカラーの塗り分けを成立させていたという。

2019年に電動化戦略発表会で公開された車両。新型クラウン クロスオーバーの源流デザインと言われており、ここからハンマーヘッドデザインが始まった
クロスオーバーよりも先鋭的なスポーツとエステートのデザイン。新型プリウスも含め、トヨタのトレンドをつくる力が発揮されている

 すでに2年前のことなので、このときの衝撃を忘れがちだが16代目クラウンは、今では多くのトヨタ車が採用するハンマーヘッドデザインの先駆けとして登場した。当初、自分も含め「これがクラウンなのか?」と思った人もいたと思うが、その後により先鋭的な新型「プリウス」や「クラウン スポーツ」が登場したことでクロスオーバーのデザインはコンサバに見え始め、エステートや他車から同様のLED技術を使用したクルマが登場した今となっては1周回って王道のデザインに見えてしまうほど。今後、同様の流れを汲む新型カローラ(モビリティショーのコンセプトでデザインの流れは見せている)が登場することを考えると、トヨタのトレンドを作る力を改めて感じている次第だ。

 宮崎氏はそうしたデザインの先まで見ていると思うが、今回の一部改良で特にリアまわりに施したのは「ワイド&ロー」の印象をもってもらうことだという。16代目クラウンとしてのデビュー時は、SUVとセダンの融合を掲げた部分があったものの、販売やイベントの現場では「さらなる上質さ」を望むお客さんの声が多かったとのこと。

 そこで今回の一部改良では、マット仕上げだったフェンダーアーチ部を前から後ろまでピアノブラックに変更。ツヤのあるブラック仕上げが上質感とある意味の軽やかさを演出している。

一部改良した新型クラウン クロスオーバーで話題となっているリアまわりのデザイン
こちらが従来型のリアまわり。リアのパネルラインが下方へ向けて走っており、SUV的な車高の高さを感じる
一部改良した新型クラウン クロスオーバーのサイドシルエット
線が少なく、水平方向への流れが強調された一部改良後の新型クラウン クロスオーバー。クリアランスソナーもシンプルな印象を受ける
一部改良前の新型クラウン クロスオーバーのリアまわりのアップ。バックランプエリアのデザインが切れ長の目のようで、さらにクリアランスソナーには枠がある
ピアノブラックとなったフェンダーアーチ。お客さんの声に応える形で、マット仕上げのものから変更された
マット仕上げのフェンダーアーチ。クロスオーバーはSUVとセダンの融合であるというデザインの意図を感じるところ
こちら、フロント下部もマット仕上げからピアノブラック仕上げに
一部改良前のマット仕上げ。2つのマテリアル感があり、これはこれで贅沢な感じだ

 ワイド&ローの表現では、バイトーンのために3分割していたリアまわりの部品を一体化。ボディと同色となり、ある意味つなぎ目のラインもなくなったことでリアまわりがすっきりして見えるようになり、下向きに走る線がなくなったことで重心が落ちて見える。

 宮崎氏は「実は、バックランプエリアのデザインも変わっています」という。写真を撮っている際にも気がつかなかった部分だが、上辺がより水平基調のものとなり、ワイド感を心に刻み込む部品となっている。

 その写真を撮っていると、記者が宮崎氏の言葉に反応するのが面白くなったのか「実は、クリアランスソナーもすっきりさせています」と宮崎氏はささやく。確かに、言われてから気にしてみると一部改良前はクリアランスソナーの部品に枠があったのに対して、一部改良後のクラウンではクリアランスソナーがツラツラにはめ込まれている。改めてじっくり見ると、ソナーの径も小さくなったように思えるが微妙なところだろうか。

 ただ、宮崎氏は新しいデザインも好きなのだが、一部改良前のSUV感のある方向性も優れたデザインであるという。特にデビュー時のことを振り返ってみると、あのデザインだったから従来のクラウンのイメージを打ち砕くことができ、明らかにこれまでとは違う新しいお客さんがクラウンを気にするようになった。

 特に新しいお客さんが増えているのは、「ひと目惚れで買う人が多い」というスポーツとのことだが、スポーツ、セダン、エステートとラインアップがそろった段階でクロスオーバーが選びやすくなったのも事実だろう。

 さらに今回の一部改良では第5世代THS(トヨタハイブリッドシステム)を採用することで、ハイブリッドモデルにおいては燃費の改良と出力の向上を同時に成し遂げており(パドルシフトも装備した)、商品力も明らかに向上している。

 一部改良した新型クラウン クロスオーバーは、デザインの力とクルマづくりの工夫を強く感じられるクルマであり、気になる人はディーラーで現車を確認してみていただきたい。