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トヨタ、寺師副社長が今後のEV戦略について詳説。「2人乗り超小型EV」「立ち乗り歩行領域EV」は2020年発売
全固体電池については「来年のオリンピックのタイミング」と
2019年6月8日 00:00
- 2019年6月7日 開催
トヨタ自動車は6月7日、EV(電気自動車)を普及させていくために取り組んでいる活動内容などを取締役副社長 寺師茂樹氏などが紹介する説明会を東京 お台場の「メガウェブ」で開催した。
発表の概要については関連記事の「トヨタのEV普及に向けた取り組み、スバルとEV専用ユニットを共同企画」ですでにお伝えしているとおりで、「日本市場での超小型EVの展開」「グローバルでのEV展開」「バッテリーの開発と供給」の3点を柱に取り組みを推進している。
なお、当日の模様はトヨタ自動車 公式YouTubeチャンネルでアーカイブ動画が公開されている。
寺師副社長はプレゼンテーションの中で、トヨタではハイブリッドカーの開発で20年以上に渡って培ってきた「モーター」「バッテリー」「パワーコントロールユニット」の3点を“車両電動化のコア技術”に位置付け、コア技術にエンジンや充電器、FCスタックといった固有ユニットを掛け合わせることでハイブリッドカーやEV、FCV(燃料電池車)といったさまざまな電動化車両が生み出されるというトヨタにおける法則を紹介。ここに自動運転やコネクティッドといった先進技術を融合させることで「MaaS」といった次世代モビリティサービスが生まれるとして、電動車がMaaSなどの新しいビジネスモデル構築でキーになるとした。
また、2017年に公表した「トヨタ環境チャレンジ2050」で目指すCO2削減に向けて電動車の普及に努めており、マイルストーンとして2030年にハイブリッドカーとPHVを450万台以上、EVとFCVを100万台以上販売して電動車を550万台以上販売する目標を掲げているが、2018年実績でも普及ペースが大きく高まっており、目標を5年程度前倒しして2025年には電動車販売550万台以上を実現できるペースとなっており、これについて寺師副社長は「世界各地でCO2排出量削減に向け、電動車への期待がますます高まっている」と分析している。
EVの本格展開では2020年に中国で「C-HR」「IZOA」を発売し、2020年代前半にはグローバルで10車種以上のEVをラインアップ予定。日本市場については、EVは小型・近距離・法人利用などの面で新たなビジネスチャンスがあるとの考えを示し、2017年の東京モーターショーで公開した「Concept-愛i RIDE」をベースとした「2人乗り超小型EV」を2020年に発売する予定で開発を続けていると寺師副社長は紹介した。
市販予定となる超小型EVは、軽自動車よりも小さい2500×1300×1500mm(全長×全幅×全高)というボディで横並びの2名乗車を実現し、最高速60km/h、1充電走行距離約100kmとされている。また、この超小型EVをベースに、一定エリアを周回するような仕事での使われ方を想定して、1人乗りとする「ビジネス向けコンセプトモデル」も検討しているとのこと。
これに加え、“人が歩いて移動するエリア”を対象とした「歩行領域EV」のジャンルで、同じく2017年の東京モーターショーで公開した「Concept-愛i WALK」を進化させた「立ち乗りタイプ」の歩行領域EVを2020年に、シートを備える「座り乗りタイプ」と「車いす連結タイプ」を2021年にそれぞれ発売予定であることも明らかにされた。
これらの超小型EVや歩行領域EVについて、一緒にビジネスを進めていくパートナーがすでに決まっており、具体的な話が進んでいるという。
会場ではトヨタのEV普及に向けた取り組みをより詳しく理解してもらえるよう、開発中の「グローバル展開EV」のモックアップなどが展示された。一堂に並べられた右側4台が初公開のモックアップで、SUVやクロスオーバー、セダンなどを想定して「近い将来の『ハイランダー(クルーガー)』や『カムリ』をイメージしたもの」となっている。
一部のモデルはフロントマスクに「EV-e」のロゴがあり、これは電動車の進化について「ハイブリッドカーの『アダム』、そのあばら骨(コア技術)を使って新たに生み出されるもの」という意味合いで「イヴ」と読むとのこと。
超小型EVや歩行領域EVも車両展示されたが、2020年発売予定の2人乗り超小型EVについては製作が間に合わず、展示は見送られた。
全固体電池について「来年のオリンピックのタイミングには、何らかの形で皆さんに見ていただければ」と寺師副社長
後半に行なわれた質疑応答では、電動車の普及ペースを5年間前倒しにした中で、今後はEVの占める割合が高くなっていくのかといった質問について、寺師副社長は
「一番分かりやすいのは、昨年あたりから欧州で『2030年のCO2規制』といったものが明らかになりました。つい最近、日本でも同じように発表されたのですが、おそらく欧州での燃費規制が世界中に広がると考えています。ここが理解できないと難しいのですが、中国やアメリカなど世界中を見ると、『ゼロエミッションビークルを一定比率売りなさい』というZEV規制と、『企業ごとに燃費を何%よくしなさい』というCAFE規制で、自動車メーカーは両方に対応しなければなりません」。
「欧州に代表されるCO2や燃費規制は2030年に今のほぼ半分ぐらいにしなさいということで、この厳しさは『半分をEVに置き換えなさい』と言っているぐらい厳しい燃費目標。しかし、ZEVとかNEVでは、たぶん10%とか20%と、国や地域によって規制が決まってきますが。自動車メーカーがビジネスを続けていこうとすると、ZEVやNEVの規制よりCAFEの規制のほうがものすごくきつい。このCAFE規制を乗り越えるには、すべてをZEVやNEVのクルマにして乗り切ることはできない。となると、ガソリンエンジンが付いているクルマで目一杯頑張りたい。そこでハイブリッドカーでできる限り下げておいて、足りないところをPHVやEVでやる」。
「ただ、いつも言っているように、最終的に決めるのはお客さまであり、マーケットでありますので、EV、FCV、PHV、ハイブリッドと、とにかくすべての選択肢を品揃えして、お客さまがどのような購買傾向になろうとも、法規を満たすために一生懸命売らなければいけない。とくにガソリンエンジンが付いているハイブリッドカーを売らなければいけない。そうなると、ハイブリッドの台数が思った以上に伸びてきたことで、5年マイナスになるかなりの部分がハイブリッドではないかなと考えています」と回答した。
また、パナソニックと共同で研究開発している全固体電池について寺師副社長は、一緒に登壇している電池事業領域 領域長の海田啓司氏に向けて「私はもっと早く出せと彼に言っている」とコメント。
これを受けて海田氏は「(寺師副社長のコメントは)激励と取ったらいいかと思いますが、日々寺師の方から『早く出せ』と言われております。必死になって取り組んでいますが、基本的に電池というのは、当然ながら安全で信頼性があり、長持ちして性能がよく、価格が安く小さいというところを目指してやっております。現在の液系のリチウムイオン電池についても、弊社を含めてパナソニックさまや先ほどのスライドに出させていただいた各社で、いろいろな工夫をして性能向上に取り組んでいます。それをブレークスルーする1つの形として全固体電池にわれわれは着目していて、電圧を高くできるポテンシャルがあるとか、温度変化に強いだとかいった全固体電池の特性を追究しています」。
「かなりチャレンジングな開発だったのですが、いろいろとやっているうちに見つけて開眼できるところの泥臭いところも正直に言ってありまして、本当に一生懸命やっています。皆さんが期待されているような時間帯で、頑張って出せるよう努力したいと思っています」と回答。
この言葉に寺師副社長は「努力したいではダメで、しっかり出すということで。できれば来年のオリンピックのタイミングには、何らかの形で皆さんに見ていただければと考えていますので、頑張ってやりましょう」と、海田氏に再度激励の言葉を贈った。