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トヨタ、電動車普及に向け2030年末まで特許無償提供。寺師茂樹副社長「今こそ協調して取り組む時がきた」
「ホームプラネット」を目指して地球規模でCO2排出量を抑制
2019年4月3日 22:06
- 2019年4月3日 発表
トヨタ自動車は4月3日、同社の車両電動化技術に関して約2万3740件の特許実施権を2030年末まで無償提供すると発表。同日、同社 取締役 副社長 寺師茂樹氏が名古屋市内で記者会見してその狙いなどを話した。
今回、同社は2030年末までの期限付きで、モーター約2590件、PCU(パワー・コントロール・ユニット)約2020件、システム制御約7550件、エンジン・トランスアクスル約1320件、充電機器約2200件、燃料電池関連約8060件、計約2万3740件の車両電動化技術の特許実施権を無償提供することを発表した。
記者会見で寺師氏は、世界各国でCO2規制の強化、電動車を推進する動きが活発化している動向を示すとともに、トヨタでは2017年に「トヨタ環境チャレンジ2050」と電動車の普及に向けた2030年までの販売計画を公表し、2030年の電動車の販売目標をHV・PHVを450万台以上、EV・FCVを100万台とし、さらに2050年にはCO2排出ゼロを目指していることを紹介。
また、これまで同社がハイブリッド車に向けて開発してきた、モーター、バッテリー、PCUといった電動化技術については、FCV、EV、PHV、HVに展開できる電動化のコア技術であることを強調した。
寺師氏は「1997年のプリウス発売から、電動車に欠かせないモーター、バッテリー、PCUなど要素技術を20年以上磨き上げてきました。これら3つの部品技術は、HV、PHV、EV、FCVすべての電動車のコア技術であります。これらの技術を量産基盤として確立して、年間150万台を超える規模でグローバルで展開しています。この量産基盤技術はそのままEVやFCVといったほかの電動車両に活用可能です。これまで積み重ねてきた基盤こそがトヨタの強みであり、将来の電動車普及に貢献できるのではないかと考えています」と、トヨタの電動化技術は量産基盤技術となっていることが強みであるとコメント。
また、寺師氏は、販売総数における平均CO2排出量130gと定められた欧州のCO2規制対応について触れ、各自動車メーカーの2017年規制過達率においてトヨタは25%と業界トップであることを紹介。将来的に実施が見込まれる2025年規制レベルでは、販売車両全数の燃費を現行プリウスレベルに置き換えないと到達できないレベルにあることを示した。
寺師氏は「現行プリウスにおいては2025年規制レベルを下まわるものの、SUVなどの比較的重いクルマでは2025年規制レベルは厳しいものとなります。つまり、今後、PHVやEV、FCVの普及拡大が必要になってくるだろうと考えています。弊社はハイブリッドで培ってきた技術を、PHVやEV、FCV段階的に展開することで、今後厳しくなる規制に対応して、CO2排出量を一層低減していきたい」と、現在普及しているHVに加えて、PHV、EV、FCVを組み合わせて規制に対応していく考えを示した。
今回の特許無償提供を決断したことについては、最近、電動車の開発導入に取り組む多くの企業から同社の車両電動化システムについて問い合わせが増えているといい、寺師氏は「皆さまが電動車普及の必要性を感じておられる表れで、今こそ協調して取り組む時がきたと考えています。電動車は普及してこそ意味がある。特にこれからの10年での普及が加速することで一気に電動車が普通のクルマになっていくのではないかと思います」と述べた。
さらに、他メーカーが使いやすくするために特許に関する新しい取り組みとして、トヨタのパワートレーンシステムを活用する場合、技術サポートを実施することを明らかにして、寺師氏は「これまで培ってきた車両電動化技術は、他社のさまざまな電動車両に利用可能だと考えています。これまでの完成車の提供だけではなく、今後、トヨタは電動車両化技術のシステムサプライヤーとして、地球規模での電動車両の普及に貢献してまいりたいと思います」とコメントした。
会見の締めくくりに、寺師氏は「電動車の開発には多くの時間と費用が必要です。弊社の取り組みがきっかけとなって、各社の電動車開発が早まり、CO2排出量削減スピードが早まることを期待したい」とコメントした。