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メルセデス・ベンツ新型「CLA」技術説明会 バッテリEVと内燃機関に対応する新世代プラットフォーム「MMA」
2026年8月21日 06:00
- 2026年7月29日 開催
メルセデス・ベンツ日本が7月29日に発表した新型「CLA」は、同社にとって単なるニューモデルの導入以上の意味があるという新世代プラットフォーム「MMA(メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャ)」の初採用モデルであり、同社が「ソフトウェア定義車両(SDV)」と位置付けるデジタル変革の象徴としている。
新型CLAの発表とともに行なわれた技術解説ワークショップでは、車体・安全、パワートレーン、そしてソフトウェアの各分野のエキスパートが登壇し、コンセプトカー「ビジョンEQXX」から継承された最先端技術の詳細を説明した。
1万5000回のシミュレーションが導いた「安全のDNA」
車体構造と安全性能について解説を担当したセーフティ・シニアエンジニアのクリスティアン・グルーグラー氏は「安全がわれわれのDNAです」とし、そのDNAを具現化するため、新型CLAの開発プロセスではコンピューター上で約1万5000回ものシミュレーションループが繰り返された。グルーグラー氏は「これによって全体の構造を適正化した」と述べ、適切な素材を適切な場所に配置するインテリジェントな設計思想を強調した。
そのうえで、メルセデスのエンジニアが直面したのは、電気自動車(BEV)特有の重量増と高電圧バッテリの保護、そしてメルセデスらしい洗練されたデザインと安全性を実現すること。これに対し、グルーグラー氏らのチームは膨大なデジタルシミュレーションを駆使して挑んだ。
具体的には、衝突時の衝撃を吸収するフロント部分の「クランプルゾーン(変形ゾーン)」と、乗員を守るための「堅牢なキャビン(セル)」の切り分けを徹底したことで、今回、展示されたCLAの車体構造が分かるカットモデルの色分けされたところを示しながら、材料を適切な場所で使ってることがポイントと説明した。
特にキャビン部分には、紫色で示された「超高張力鋼板」が多用されている。衝突で変形を起こさせない場所に使い、乗員スペースを確保するという。一方で、フロントセクションにはエネルギーを吸収するための構造を配置し、「すべてのエネルギーを吸収し、正面衝突の場合に乗員の安全を守ることが目的」という役割を明確にした。
高電圧バッテリを死守するハニカム構造と統合ハウジング
BEVの「CLA with EQ Technology」で最も重要な安全課題の1つが、衝突時におけるバッテリの保護。新型CLAでは、バッテリを単なる搭載物としてではなく、車体構造の一部として統合するという手法をとっている。
グルーグラー氏は、床下の走行用バッテリの部分を示しながら「この部分が保護されていて、車全体の構造部に統合されている。バッテリの安全を考えることがとても重要だった」と語り、バッテリハウジングそのものが車体の剛性と安全に寄与する設計であることを強調した。
一方で側面からポールへ衝突するような局所的な衝撃に対しては、独自の工夫が施されている。車体側面の内側には、アルミ押し出し成形によるハニカム構造が配置されており、グルーグラー氏はシミュレーション画像を見せながら「ハニカムのような部分が変形し、まっすぐの力はすべての力をメインフロアに伝えて全体のエネルギーを吸収して、しかも変形は最小限にとどめる。これによりバッテリを安全に維持する」と、衝撃エネルギーをバッテリに直接伝えないでメインフロア全体へ分散させて逃がすメカニズムを解説した。
多くのセンサーと「セーフティ頭脳」による高度な乗員保護
物理的な構造だけでなく、電子制御による「アクティブ」および「パッシブ」の高度な融合も新型CLAの安全性を支えている。グルーグラー氏が「われわれのセーフティ頭脳」と呼ぶ「エアバッグコントロールシステム」は、車体のほぼ中央、最も安全な場所に配置されている。
このシステムには、車体各所に配置された多くのセンサーから膨大なデータがリアルタイムで送られてくる。これにはBピラーに配置された加速センサーや圧力センサーなども含まれる。グルーグラー氏はシステムの役割について「事故が発生した際、これらの情報がエアバッグコントロールシステムに流れ、どういった種類の事故かということを予測できる」という点を強調した。
新型CLAには合計11個のエアバッグが装備されており、このシステムの判断によって、事故の状況に合わせて必要なものだけが瞬時に展開される仕組みとなっている。
なかでも日本のコンパクトセグメントで初採用された「センターエアバッグ」は、側面衝突時に運転席と助手席の間で展開し、乗員同士が衝突して負傷することを防ぐもの。メルセデスの事故調査部門が長年蓄積してきた実事故データに基づいて導入された。
デジタル時代にあえて残したメカニカルへの信頼と、高電圧の遮断機能
新型CLAの技術解説の中ではドアハンドルの設計に関する説明がされた。新型CLAには空力性能を高めるためのフラッシュハンドル(格納式ドアハンドル)が採用されているが、ここにはデジタルや電子制御だけに頼らず、メカニカルな部分がある。
グルーグラー氏は「重大な事故が発生して、すべてがシャットダウンした場合、それでもドアを開くことができ、外側からも内側からも開けられる」と、開発時のこだわりを紹介。利便性やデザインのために安全性を一切妥協しない姿勢を強調した。
また、BEVモデルにおいては、事故後の二次災害を防ぐための「電気的安全」も極めて重要となる。メルセデスには8つの電気安全性に関する哲学があり、新型CLAにもそれが適用されている。
その1つが「遮断機能」で、グルーグラー氏は「事故が発生すると、私たちは、高電圧システムから電力が出ないように、ケーブルも含めてすべて遮断する。そうすることで乗員の安全を守る。また、救助隊員の安全を守らなければなりません」と述べ、衝突を検知した瞬間に、すべての高電圧回路を物理的に切り離すシステムについて説明した。これにより、救助隊員が車体に触れたり、救出活動を行なったりする際の感電リスクが排除される。
さらに、充電口のフラップ内側には「レスキューカード」のQRコードが貼られており、スマートフォンでスキャンすることで、救助隊員はさまざまな言語でその車の構造やバッテリの正確な位置、切断すべき場所などの情報を即座に入手できる。「救助隊員が迅速に必要な情報を入手することが重要」とし、事故発生から救出までをトータルで設計していることを示した。
800Vアーキテクチャと独自の「2速トランスミッション」がもたらす革新
続いて登壇したドライブトレーン開発担当のアレクサンダー・アスパッハー氏は、新型CLAのパワートレーンについて「2022年にビジョンEQXXを発表し、できる限り効率を高めることを狙っていたが、効率だけでは日々の使い勝手はよくない。そこで、ユーザーのために効率と同時に動力性能と充電性能が優れたものとして新しいCLAを導入した」と効率と実用性の高次元での融合がテーマであったことを明かした。
新型CLAの電動ドライブシステムにおける最大の特徴は、コンパクトセグメントにおいて800Vアーキテクチャの採用と、リアアクスルに搭載された「2速トランスミッション」の組み合わせ。
アスパッハー氏は、このシステムが単なる数値上のスペックではなく、実走行における圧倒的な効率に寄与することを強調した。通常、EVは変速なしということが多いが、新型CLAは永久磁石同期モーターに独自の2速ギヤを組み合わせた。1速は発進時の力強い加速と、最大4.8tにもおよぶ牽引能力を支えるための設定となっており、300Nmを超える最大トルクを強大な力を地面に伝える。
そして、高速巡航時の効率を最大化する2速がある。アスパッハー氏は、各ギヤにおける速度との役割や効率のグラフを示したうえで「長距離走行に関しては高速、それから中速、低速を組み合わせた。電動モーターでは高効率、超高効率のところがあるので、高速道路を走っているときも効率を担保できる」と述べ、モーターが最も得意とする超高効率領域を高速走行時でも使い続けられるメリットを説いた。
このギヤチェンジは110km/hが1速の上限となるが「ギヤシフトは、自然に行なわれるのでドライバーが気にする必要はない」。この2速システムにより、新型CLAはバッテリからホイールまでのエネルギー伝達効率において「長距離走行時にはバッテリからホイールまでの効率93%を実現する」という。
加えて、システム電圧を800Vへと高めたことで、高出力な急速充電を可能にするとともに、配線の径を細くすることで車両の軽量化にも寄与。バッテリセルは194個搭載され、グレードにより2種類の電池容量が用意される。上位モデルの「CLA 250+」では85.5kWhの容量を確保し、WLTCモードで771kmという長大な航続距離を実現した。
「マルチソースヒートポンプ」による熱管理
効率の追求は、駆動時のみならず減速時や熱管理の分野にもおよんでいる。新型CLAは、ブレーキ操作と回生ブレーキを高度に統合した「ワンボックスブレーキングシステム」を採用している。アスパッハー氏は、このシステムによって 「99%回生エネルギーを活用できる」とし、運動エネルギーを無駄にせずバッテリへ戻す技術の完成度に自信を見せた。
また、この回生ブレーキについても、通常の走行に適した「D」、強力な回生によるワンペダル走行が可能な「D-」、回生を行なわないコースティング用の「D+」、そして周囲の状況に合わせて自動で回生量を調節するインテリジェントな「D Auto」の4つが用意され、最適なエネルギー回収が行なわれるよう設計されている。
EVの弱点とされる冬場の電費悪化に対しても「ビジョンEQXX」譲りの解決策が導入された。それが「マルチソースヒートポンプ」。これは、電動ドライブユニットやバッテリから発生する熱に加え、外気という3つの熱源を並列で利用する空気対空気方式のシステムとなる。
アスパッハー氏によれば、このシステムは「空気対空気の方式により、無償の熱エネルギーを非常に効率的に利用できる。そして、同等の能力の従来の電気ヒーターと比較して、消費電力は3分の1」と省電力化を強調した。熱マネジメントと、CD値0.21という空力性能が組み合わされることで、高速走行時の電力消費が大幅に抑えられているという。
100%メルセデスで開発したエンジンでも「メルセデス史上最高効率」の追求
新型CLAが採用するMMAプラットフォームは、EVとしての性能を極限まで高める一方で、高効率な内燃機関(ICE)モデルにも対応する設計となっている。アスパッハー氏は、ICEモデルについても「1.5リットルで100%、メルセデス・ベンツ内で開発されたエンジン。メルセデス・ベンツが作ったなかでも、最も効率のよい内燃機関」と紹介した。
この新型エンジン「M252」は、ミラーサイクル燃焼方式やナノスライドテクノロジーを採用したアルミニウム製のクランクケースなど、最新の技術が投入され、さらにエンジンのサイズが従来より小さく、コンパクトなデザインを実現している点だ。
このエンジンに組み合わされるのが、電気モーターとインバーターを統合した新開発の8速デュアルクラッチトランスミッション「8F-eDCT」。このトランスミッションは「トリプルクラッチ」構造を採用しており、アスパッハー氏は「3つ目が、完全にエンジンを切り離すことができるクラッチ。エンジンを切り離すと100%モーターで動く」と、その仕組みを解説した。
トランスミッション内に統合された電気モーターは最大22kWの出力を発生し、「22kWを超えなければ、電気だけでずっと走り続けられる」と説明し、市街地走行などではエンジンを停止したまま電気のみで走行することも可能となっている。
メルセデス・ベンツが譲らない「安全性と基準」
アスパッハー氏は技術解説の締めくくりとして、回生ブレーキと物理的なメカニカルブレーキの関係についても言及した。
同氏は、「メカニカルブレーキが、すべての規制を満たすものでなければいけない。それ以上にメルセデスのスタンダードは、より厳しいスタンダードがある。それがメカニカルブレーキとその回生の組み合わせで、初めてメルセデス・ベンツの高い規制や基準を超えることができる」と語り、電気的な回生ブレーキがどれほど進化しても、物理的な制動能力において独自の基準を一切妥協しないという、姿勢を示した。





























