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ホンダ、「二輪安全運転診断アプリ」体験会 Uberも導入した判定機能を実車で試してみた

2026年8月31日 実施
「二輪安全運転診断アプリ」体験会が開かれた

 世界では年間約119万人が交通事故で亡くなっていて、そのうち四輪車が約26万人、二輪車が約34万人を占める。

 本田技研工業は、2050年に向けて「環境」と「安全」に関した目標を掲げているが、安全面では2050年に全世界でホンダの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロ、2030年には半減を目指すと表明している。またこれは新車だけでなく、すでに市場で使われているホンダ車や相手車両、歩行者までを含めた高い目標値となっている。

グローバルでの交通事故の実態
ホンダが掲げている全体目標

 そこでホンダは、ADAS(先進運転支援システム)のような「モビリティの技術開発」はもちろんのこと、「人への啓発活動」や「道路環境を含む交通エコシステム」も非常に重要な領域として取り組みを進めている。

安全への取り組み領域

 当然、市場に現存する車両も対象とするため、新技術を搭載した車両を増やすだけでは目標には届かないし、地域によってモビリティの使い方や交通環境は大きく異なるため、交通事故の課題は世界一様ではなく、その地域で「なぜ事故が起きているのか?」を捉え、必要なアプローチを組み合わせていくことが重要になるという。

2030年に向けた「先進国の四輪車」と「新興国の二輪車」の重点取り組み施策

 ホンダの2030年交通事故死者半減に向けたシナリオは、「先進国の四輪車」と「新興国の二輪車」では重点取り組み施策が異なり、先進国の四輪車であれば「Honda SENSING」をはじめとした安全技術の進化と普及が大きな効果を発揮する。

 一方、タイをはじめ多くの新興国の二輪車の場合、運転マナーや交通安全意識の向上が未だに大きな課題となっているほか、環境整備など複数のアプローチが重要になってくる。具体的には、安全技術によって削減できる死者数は全体の4%と見込まれ、四輪車と比べてフルブレーキでの停止が難しい二輪車では、そもそも危険な状態に陥らないよう、ライダー自身が認知力や判断力を高めることが非常に重要。啓発活動は事故削減効果が大きく、全体の19%を削減できるほか、ヘルメットの着用や速度違反の取り締まり強化など政策支援でも11%の削減が見込めるという。

タイでの安全施策の効果予測

 またホンダは、50年以上にわたり安全運転普及活動を続けていて、現在では日本を含む43の国と地域で交通安全教育を展開。インストラクターの養成から個人・企業への安全教育まで幅広く実施していて、1年間で460万人に教育プログラムを提供している。

 安全教育の原点は、1960年代から続く白バイ隊員への訓練で、実際の交通環境を想定した実技訓練を通じ、安全運転に必要な知識や技術を追求し、白バイ隊員の殉職者ゼロにもつながっているという。また、1969年から始まった「全国白バイ安全運転競技大会」にも半世紀を超えて協力。実際の人の運転と向き合いながら、安全運転に関する知識を蓄積している。

ホンダの安全運転普及活動

 現在は、これまで培ってきた知見にデジタルツールや生成AIなどを組み合わせ、安全教育をさらに進化させていて、今後は人の意識や能力、経験、身体能力などに応じた、1人ひとりに合わせた安全教育への進化を目指すという。

 2025年2月には「FIA Road Safety Index」にて、高い安全目標を掲げながら実際の事故データに基づき安全施策を展開している点が高く評価され、自動車業界として初めて最高ランクとなる「3スター」を獲得。国際的にも評価を得ているほか、現在公表している対象は日本だが、2026年にはグローバルでの評価獲得を計画中としている。

ホンダの交通安全活動は、国際的にも高い評価を得ている

 続けて、2050年の交通事故死者ゼロに向けてのシナリオについて、本田技研工業 安全運転普及本部 事務局長 チーフエンジニアの小嶋幹人氏は、「ホンダ1社の取り組みだけでは安全をお届けできる人や地域に限界があります。そこで国際機関や他企業との連携強化の方針を定めました。自社単独の活動だけでなく、世界中の企業や国・自治体と連携しながら、より多くの人や地域へ安全をお届けし、社会の安全の総量を拡大していきたいと考えています」と説明。

本田技研工業株式会社 安全運転普及本部 事務局長 チーフエンジニア 小嶋幹人氏

 続けて「ホンダとUberは、グローバルにおける二輪車の交通安全事故削減に向けて、交通安全領域での連携を進めています。Uberは世界70か国以上でオンライン配車やデリバリー事業を展開し、世界中に多くのドライバーや配達パートナーとの接点を持っています。そこでホンダの持つ交通安全の知見・技術と、Uberの世界規模のネットワーク・プラットフォーム、双方の強みを掛け合わせることで、より多くのライダーへ安全をお届けしていきたいと連携をスタートしました」と両社の関係性を紹介した。

Uberと連携して二輪交通安全の拡大を図っている

Uberと進めている安全運転に関する取り組み連携

 ホンダとUberは、2025年から二輪車の交通事故低減に向けて、グローバルレベルで連携の開始。「安全啓発における連携」から始まり、「運転診断技術を活用した連携」とステップアップさせている。

安全啓発における連携

 第1ステップの「安全啓発における連携」では、ホンダが長年培ってきた安全教育ノウハウの知見を、Uberの安全啓発コンテンツに提供する形で連携。内容は大きく2つあり、1つはUberが開発したアプリにホンダの「KYT(危険予測トレーニング)」を啓発コンテンツとして適用させ、すでに世界21か国で50万人が体験しているコンテンツ。

画面にはリアルな映像が流れ、駐車車両や対向車、歩行者など、危険因子が多数出てくる

 アプリでは、一方的に「危険な場所はここだよ」と教える訳ではなく、実際に配達員にどこが危険なのかを探してもらうことで、より深く交通安全について考えてもらう内容となっている。実際に自分の指で動かして、広範囲(180度以上)を見わたせるようになっている。

クイズ形式で進められ、何度でも反復して学習できる

 もう1つは日本国内での活動になるが、ホンダの交通教育センターのインストラクターが講師となり、Uberの配達員向けにオンライン講習を実施し、安全運転のノウハウを提供するもの。配達員は日本全国にいるため実地訓練が難しい配達員に対しても、しっかりとした安全運転の考え方について提供できるコンテンツという。

ホンダとUberの安全運転に関する連携事例

運転診断技術を活用した連携

 第2ステップの「運転診断技術を活用した連携」では、まず2023年に四輪ドライバーの安全運転習得をサポートするアプリ「Honda Driver Coaching」を米国で先行リリース。これはホンダ車から得られたデータを使いつつ、先進安全運転支援システムのHonda SENSINGとも連携し、高度な診断を実現するという。

 アプリは初心者を対象に、ステアリング、ブレーキ、加速など、ドライバーの操作をリアルタイムで分析し、サポートが必要なときにドライバーにアドバイスするもので、トレーニング完了後は、計算された運転スコアにより、ユーザーは具体的な運転ヒントとともに、現在の運転スキルの状況を確認できる。また、もっと広い車種で体験したいといった声に応えるため、現在スマートフォン単体でも運転診断ができると機能の開発を進めているとのこと。

四輪版アプリの開発知見を二輪版に適用して開発している

 この四輪向け運転診断アプリの開発知見を二輪版に適用させる訳だが、二輪は四輪と違って運転するときに車体とライダーが一体となって姿勢が変わったり、ハンドル操作だけでなく傾けることで曲がる、車体が小さいため路面の振動が直接センサーに入ってきてしまうなど特有の難しさがあるという。

 この課題に対してホンダは、長年蓄積してきた四輪や二輪のセンサーデータを元に独自ロジックを構築し、二輪用運転診断アプリでは、スマホで取ったセンサーデータを実際に処理して、アクセルやブレーキ、コーナリング(車体の傾き)といった動作を判別でき、専用機器不要でスマホのみで二輪の運転行動を診断できるのが大きな特徴となる。

ホンダが開発した二輪用運転診断アプリの概要

 また、ホンダの交通教育センターで、安全運転を指導しているプロインストラクターの判断や、開発ライダーの自走行データの暗黙知をアルゴリズムを入れ込み、センサーから出てきた情報を大・小で判断する訳ではなく、実際に暗黙知を元に運転能力、安全運転とは何かをデジタル化しているという。

 さらに、リアルタイム音声フィードバック機能も備え、実際に運転中にフィードバック音声を聴きながら、どの運転がよかったのかわるかったのかをその場で判断できる。地図の走行データを見て、後から振り返りも可能となっている。

ホンダの二輪用運転診断アプリと、Uber専用の二輪用運転診断アプリの違い

 今回ホンダは、この二輪用運転診断アプリをベースに、Uber向けの専用アプリを開発。Uber用は配達員が業務に集中できるように、音声フィードバック機能や地点アドバイス機能は実装されず、純粋にバックグラウンドでスコアを測る機能だけとなっている。

 これはホンダの二輪運転診断技術を使い、配達業務中の運転行動を診断・可視化し、単に高いスコアを狙うのではなく、配達員の人が自分の運転のどこがよかったのか、どこを意識すればさらに安全になるのかという気づきを得てもらうのが大きな狙いとなっている。

本田技研工業株式会社 安全運転普及本部 事務局長 チーフエンジニア 小嶋幹人氏

 本田技研工業 安全運転普及本部 事務局長 チーフエンジニアの小嶋幹人氏は、「すでに両社では『安全について知る』から、『自らの運転に気づき行動する』というフェーズに移っています。連携は安全啓発コンテンツの内容拡充から始まっていますが、実際に運転診断アプリを使った行動に結びつく実証に移ります。この実証を通じて有効性や課題をしっかりと検証した上で、将来的にはさらにより多くの人や地域に安全を届け、Uberと一緒に社会の安全の総量を拡大できる活動につなげていきたい。デリバリーライダーの事故低減に向けて引き続き活動を続けていきたいと考えています」と説明を締めくくった。

ホンダとUberの今後の目標

ホンダの二輪用運転診断アプリを導入したUber

 Uberは2010年に米国サンフランシスコでサービスを開始。基本的にアプリ上で人と物の移動サービスを提供しているプラットフォームで、現在アプリを利用したモビリティ事業およびデリバリー事業を世界70か国以上、1万5000以上の都市で展開している。

 単なる移動手段や配達手段の提供だけでなく、Uberのテクノロジーとデータを最大限に活用し、各地域が抱える交通渋滞、環境問題といった社会課題の解決にも積極に取り組んでいる企業。

Uberのメイン事業

 デリバリー事業であるUber Eatsは、世界1万5000以上の都市で利用され、アプリは50言語以上に対応。月に1回以上稼働するアクティブなドライバー・配達パートナーの数は1000万人以上、日本国内では約12万人の配達パートナーがいる。

Uberの安全対策を紹介するUber Japan セーフティ部の尾竹森部長

 また、この巨大デリバリーネットワークを支えるにあたり、特に重要な役割を果たしているのが二輪車で、日本国内はもちろんのこと世界的に見ても機動力の高い二輪車を利用したデリバリーは急速に拡大。その重要性は日々高まっていて、日本でも配達パートナー12万人の半数は二輪車を利用しているという。

Uber Eatsの事業規模

 しかし、利用が拡大すればそれに比例して、安全確保というプラットフォームとしての責任もより一層重くなる。そこでUberは「すべての道路利用者の安全を最優先にする」「テクノロジーとデータによる安全の進化」「知るから行動が変わる安全対策」「ベストプラクティスの共有・強化」と、4つの安全に対する基本的な考え方を持っている。

Uberの交通安全についての4つの基本的な考え方

 このUberのグローバルでの包括的な交通安全の取り組みは、外部機関からも高く評価されていて、ホンダと同じく「FIA Road Safety Index」の最高評価である「3スター」を2025年2月に獲得している。

Uberの交通安全への取り組みに対する評価

 Uber Eatsでの安全対策は、「運転意識の向上」「疲労・認知低下の抑制」「プラットフォームの最適化」「車両・環境・安全保護具の着用促進」と4つのカテゴリーをベースに展開していて、配達パートナーの稼働データから事故原因やリスクを分析し、多角的な安全対策を迅速に展開しているという。

Uber Eatsの安全対策(概要)

 具体例としては、前出のUberの安全啓発コンテンツにホンダのKYTを適用させ、二輪の配達に特化したインタラクティブな危険予測トレーニングの提供。また、二輪車のスピードの出し過ぎは重大な事故につながる可能性があるため、稼働中のスマホのGPSやセンサーから取得した走行データを元に、スピードの出し過ぎを検知して忠告する機能を運用している。

Uber Eatsの安全対策(交通安全啓発の強化)

 2026年8月には、新たに「速度超過検知機能(速度超過を検知した際にアプリ上でタイムリーに警告を送る機能)」を全国で導入。もし速度超過が繰り返し検知された場合には、アプリへのアクセスを一時的に制限し、安全講習の受講を義務付けるなど、テクノロジーを活用した厳格な措置を講じているという。

Uber Eatsの安全対策(速度警告)

 そのほかにも、万が一の事故が発生した際の被害を最小限に抑えるため、稼働前のAIによる「ヘルメット着用確認機能」の導入、OGK KABUTOと連携した「自転車専用ヘルメット」の提供も行なっている。

 さらに、コミネ製の胸部プロテクターや、リフレクターを装備した配達パートナー専用ジャケットを製作し、特に配達回数の多い配達パートナーにプレゼントする企画も実施するなど、日々の配達における安全意識の向上と保護具の利用促進を図っているという。

Uber Eatsの安全対策(保護具の強化)

ホンダの二輪用運転診断アプリを体験してみた

 説明会の後には、ホンダの施設「交通教育センターレインボー埼玉」にて、インストラクターによる「二輪安全運転診断アプリ」デモンストレーション走行のほか、参加メディアの体験試乗と、四輪安全運転診断アプリの同乗体験が実施され、記者も実際に乗って体験してみた。

体験会では実際にUber Eatsのバッグも用意され、配達パートナーになりきって体験した

 二輪車のコースは、100mほど直進して左折、20mほど走ってまた左折と、長方形のようなレイアウト。診断はアクセル、ブレーキ、コーナリングの3つで、スマホ内のセンサーや位置情報からデータが拾われる仕組み。

 記者は「CB400SF」だったので、一般道で発進するのと同じようにスタートして、3速まで入れ、コーナリング手前でブレーキして2速に。また直線で3速まで入れてスタート地点で完全停止。時間の都合で1周しかできなかったので、あえて過激な運転を試すことはできなかったが、普通に走っていれば、そんなにわるい点数にはならないように感じた。

アクセル診断結果
ブレーキ診断結果
コーナリング診断結果
総合診断結果
地図データで走行軌跡や診断したポイントなども確認できる

 驚いたのは、加減速Gや傾きを判定しているので、スマホ本体はしっかりと固定できるホルダーに装着しなければ診断できないと思ったが、スマホ本体が動いてしまうバッグやポケットの中でも診断できるといい、それが長年ホンダが培ってきたノウハウでもあるそうだ。高評価が出れば当然うれしい気持ちになるので、常に安全運転して高得点を維持していたくなる気持ちも湧いてきた。また、自分の運転が可視化されるので、振り返りもでき、自分の運転の癖なども分かるのが、ちょっと楽しかった。

この日はドライブモードを後席で体験した

 開発中の四輪安全運転診断アプリも同乗で体験してみた。これはホンダ車の走行データや、事故やヒヤッとした場所の口コミ投稿の情報を元に、ドライバーにアナウンスを行なうもの。毎回同じ場所で同じことを発話する訳ではなく、その日の運転の仕方によって変わるし、危ない場所での注意喚起だけでなく、運転自体をほめてくれたり、ドライバーに考えさせるような内容もあり、運転が楽しくなるような仕組みが盛り込まれていた。

【ホンダ】開発中の四輪安全運転診断アプリ(18秒)