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ホンダの2030年に向けた取り組みが語られた「Honda Meeting 2019」レポート【交通事故ゼロ社会編】

2020年の導入を目指して高速道路でのハンズオフ機能を確立

交通事故ゼロ社会の実現に向けて

 本田技研工業の将来の技術開発について発表する「Honda Meeting 2019」が、埼玉県和光市の本田技術研究所で開催された。

 同社は「すべての人に“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する」ことを2030年ビジョンとして掲げ、各領域で取り組みを行なっている。今回のHonda Meeting 2019では「カーボンフリー社会」「交通事故ゼロ社会」「Honda eMaaS」について、人々の生活の可能性が広がる社会について各分野からの解説が行なわれた。

 本稿では「交通事故ゼロ社会」について紹介する。

2020年に高速道路でのハンズオフ機能を投入予定

交通事故ゼロ社会の実現をリードする

 交通事故ゼロは必須の課題だが、移動の自由、好奇心を駆り立てるようなモビリティの実現を作り出すこともホンダの使命だ。

 力を入れているのは安全運転支援技術「Honda SENSING」の機能拡充である。この延長にある自動運転の研究で得られた技術を安全運転支援技術にフィードバックしていく。

 事故は夜間の歩行者や昼間の自転車の交通事故が多いが、このほかの事故形態も詳細に分析して事故ゼロを目指す。自動運転で開発した“ぶつからない技術”を活用するわけだ。

 ホンダは世界初の衝突軽減ブレーキ「CMBS」に始まり、Honda SENSINGにまとめ上げ機能を拡張してきた。Honda SENSINGを装備したホンダ車のほとんどが国が推奨するサポカーS ワイド、サポカーS ベーシック+に該当する。誤発進抑制機能を2013年の「フィット」に搭載し、後方誤発進抑制機能を2017年の「N-BOX」から標準装備しているが、踏み間違いによる事故を防ぐ予防安全機能は新型車などから順次標準装備していく。既販車の後付けキットも開発中で、近いうちに量販車から発売されることになるだろう。

交通事故ゼロ社会に向けた取り組み
自動運転/運転支援技術のロードマップ
安全運転支援技術のこれまでの取り組み

 Honda SENSINGの進化の方向では横断自転車、夜間の歩行者認識性能向上、右折時の対向車衝突防止機能も追加し、白線不明瞭な場合でも逸脱事故を防ぐ機能を追加で搭載する予定だ。事故の多い交差点事故などもセンサー検知の範囲を拡大して対処していくという。

 自動運転の分野では、高速道路でのレベル3を2020年の技術確立を目指して、車線維持、車間距離の技術を進めてハンズオフ機能を確立する。ハンズオフのまま目的地に向けて連続して車線変更を行なう機能、また渋滞時の低速自動運転機能もいち早く投入予定だ。これにより長距離ドライブの疲労軽減に劇的に貢献できる。早いタイミングで高速道路に限定したレベル3のホンダ車を見ることができそうだ。

 システム構成は、外界のセンシングとしてミリ波レーダーとLiDARで全周360度を検知可能として2重に備えている。前方には2系統のカメラに加えて高精度地図を活用する。ブレーキ、ハンドル、電源も含めて2重化され、ドライバーを認識するカメラも高精度モニターが装備される。

 渋滞時の自動運転について、レベル3ではクルマ側で自動運転の条件が満たされなくなったらドライバーに運転を任せなければならないが、その情況をドライバーに視覚表示、音警報で知らせ、さらにそれでも運転手が操作の意思を示さなかった場合はシートベルトの締め付けなどで段階的に警告する。それでも交代しないときはシステムが安全を確保しながら減速し、路肩に寄せて緊急停止を行なう機能も備わる。

 高速道路における自動運転の機能については安全性、信頼性が最も重要。ホンダでは開発プロセスデータの一元管理を行なっている。システム検証としては日本全国の高速道路を約100万km走行してさまざまなシナリオをスーパーコンピュータを用いて解析している。日本以外では中国、EU、北米でも実証実験を行なっており、自動運転に向けて進めている。

Honda SENSINGの進化
Honda SENSINGの適用状況
Honda SENSINGの最新の進化
安全運転支援のさらなる進化
高速道路における自動運転の提供価値・機能について
高速道路における自動運転車のシステム構成
渋滞時自動運転における安全な運転交代の考え方
高速道路における自動運転の開発プロセス
実証実験のグローバル展開

 AI技術を中心としてさらに進化する自動運転については、予知、予測を進化させて複雑な交通環境を安全、安心して走ることを目指す。ホンダでは危険に近づかないために、住宅地などで歩行者などの位置や方向だけでなく顔向きもAIで判断する独自技術を開発し、また飛び出しなどに備えた高度な判断をAIで行なう。

 また他者、他車との協調行動もAIが解析して、スムーズな走行、または合流などの行動にベテランドライバーのような判断を行なうという。レベル3に向けて着々と準備が進められている。

自動運転技術のさらなる進化
危険に近づかない予知・予測技術
分かり合える協調行動
自動運転技術進化の取り組み方
まとめ
交通事故ゼロ社会の実現で「拡がる喜び」